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空港アクセスバスの競争力を推測してみる
赤い砂兎 2007年 4月10日
私は鳥取県出身で、高速バスではありませんが鳥取−米子間の都市間輸送は急行バスが国鉄を圧倒していた時代や、智頭急行開業前の鳥取−大阪間の特急バスの天下を経験していますので、都市間輸送におけるバスのメリットは把握しているつもりです。しかるに、現時点において羽田空港アクセスで速いバスが主流になれない理由や都市間輸送で鉄道を圧倒するバスが稀であることは私も不思議に思うところです。羽田アクセスについて原因を推測すると、
・現状における首都高速の渋滞(特に空港行きにおいて)
・高速バスの自動車に対する競争力の弱さ
・対都心と対羽田の需要の差
ではないかと思います。対自動車についてはいい加減データが古いのですが、第3回全国幹線旅客純流動調査における代表交通機関別生活圏間流動表から推測してみます。おおむね東京都心から100km程度の生活圏から羽田空港も属している東京23区への流動シェア(%)は以下の通りになります。
出発地\交通機関 | 鉄道 | バス | 自動車 |
水戸日立 | 40 | 9 | 50 |
鹿嶋 | 0 | 28 | 72 |
宇都宮 | 57 | 0 | 43 |
前橋高崎 | 54 | 1 | 45 |
山梨国中(中心都市甲府市) | 63 | 6 | 32 |
静岡東部(中心都市沼津市。富士市までを含む) | 56 | 2 | 42 |
山梨国中で鉄道のシェアが高いことは別途検討の余地がありますが、ここで注目したいのが、鉄道が機能していない鹿嶋では自動車のシェアが高いことです。これが250km圏の長野県飯田生活圏→東京23区ならば自動車のシェアは15%と小さくなります。この要因として、
・100km程度までは自動車の運転に対する忌避感が小さい
・バスの実質的な巡航速度が自動車に劣る
事が考えられます。在来線であっても線形が良好ならば巡航速度は自動車よりは高く出来、さらに首都高都心部の制限速度がそれほど高くないことも対都心での鉄道の競争力に寄与しているものと思います(水戸−羽田は中央環状、湾岸線経由)。加えて、羽田アクセスの場合には都心へ自動車で出掛ける場合の隘路の一つである駐車場も大きな問題になりません。羽田空港の駐車料金は高いと言われますが、水戸から2人で1泊利用ならば、高速道路料金やガソリン代を考慮しても、高速バスより安価になるケースが多くなります。もちろん多少高い程度ならば利便性重視で自動車利用になる人もあるでしょう。
最後の要素は、対東京都心交通は桁違いに需要が大きく、それを満たす余技で羽田アクセスにも対応出来ることだと思います。すなわち都心をハブとして太い需要2本を繋いで『出発地−都心−羽田』というパイプを形成していると言えます。一方、都心を通らない直接アクセスでは地方空港アクセスでご指摘されているように、利用者の絶対数が対都心より少ないことが便数を制限し、その結果としてバスの存在感を薄くしているのではないでしょうか。
まとめると、羽田アクセスにおいて速度で勝ってもバスが主流になれないのは、定時性が問題になる場合は鉄道利用に流れ、定時性に問題無い場合は自動車利用に流れる。さらに絶対的な需要差に起因する便数の点でも対抗が難しいという点にあるのではないでしょうか。
便数の例外が木更津−羽田空港のアクアライン経由便ですが、首都高の渋滞を避けるために羽田からモノレールないし京急で都心方面という需要があるのかもしれません。
羽田への高速バスによるアクセスはもっと考察を深めたいところです。とりわけ、中央環状線全通後は例えば新宿−羽田空港という太いパイプを形成しうる潜在能力があり、鉄道は安穏としていられないかもしれません。
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