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中国鉄道高速化の現状と北京上海間高速鉄道を含む中国鉄道の将来
TAKA 2004年 8月19日
1.直近の状況
状況の変化を踏まえて、今の中国の鉄道高速化の現状とトランスラピットも関係ある「北京・上海間高速鉄道」についてコメントしたいと思います。トランスラピットはそれこそ高速化への“飛び道具”ですが、今や中国では在来線の高速化も着々と進んでいます。
中国:来年4月から主要都市の鉄道ダイヤ高速化
中国:来年の鉄道計画、幹線ほぼ全面的に高速化
中国高速鉄道の各種車輛諸元(実用・大量配備されている上記とは異なる)
中国国鉄で97年〜04年の間に5回の“大提速(白紙ダイヤ改正)”が実施され、04年の“第5次大提速”では SS9型EL・DF11型DL・ 25T型客車と言った高速車両が導入され、北京〜広州・上海ハルピン間で高速化が行われ、北京〜上海間は昔の14時間近くから12時間を切る時間で結ばれるようになり、又東三省と北京を結ぶ秦皇島〜瀋陽間高速新線(200km運転)も供用開始され所要時間が短縮されています。
現在秦皇島〜瀋陽間高速新線や広深鉄道等の電化 200km/h運転の路線や、京九線・京広線・京滬線等の北京〜主要都市を結ぶ路線は非電化ながら 160km/h運転の路線等が有り、電化・高速化の水準は一定限までは進んでいるのが現実です。少なくとも京滬線は正しく“東海道新幹線登場直前の東海道本線”的な輸送状況です。この先は新線建設しか打開策は無い状況です(新線が出来ても京滬線は山西省の石炭等の西部地域のエネルギー資源等を兆候出る他地域に運ぶ等の貨物輸送がメインで十分機能する)。
又京滬線は中国輸送の大動脈であり、中国で80年代初頭にGE製の電気式DLを輸送力増強用に導入した時には、京滬線の中間主要機関区の徐州機関区に集中配備されていますし、中国国鉄の最新型DLは大概最初に京滬線に投入される。日本で言えば東海道本線に近い位置付けの正しく“大動脈”として扱われています。
中国:石炭の鉄道運搬拡大も事態改善見込めず(石炭輸送が逼迫している証拠)
この様に進んだ高速化の中で、次は 200km/h電車運転と北京上海間高速鉄が並行的に企画されてます。
「北京ー上海」高速鉄道計画概要
在来線高速化と「北京〜上海」間同時着工も
中国:第6回ダイヤ高速化は 200km/h目標
中国、高速鉄道の時代に入る(北京週報)
又この様な状況の中で北京上海間高速鉄道にトランスラピットが無いというのは定説です。中国の意図する真の本命は「中華之星」と呼ばれる国産の高速列車でしょう。中国自体では国産指向が強いですし、「中華之星」は既に秦皇島〜瀋陽間高速新線で 321km/hの最高速度を出しています。技術的には北京〜上海間高速新線を最高速度 300km/hで運行することは不可能ではなくなっています。
国産技術が着々と蓄積されてくれば海外技術に拘るべき必然性が無くなります。元々中国共産党は「自力更正」の考えが内に秘めた伝統ですから、当然国産の技術で作る事ができるのであれば、中国は間違いなく国産技術を選ぶでしょう。
只高速車両製造に関して未だ中国は製造・技術に自信が持てない様で、近々に計画されている“第六次大提速”では、在来線 200km/h高速化用の高速電車 200編成に関しては、国内・国外メーカー提携の上での入札が先月行われています。(日本連合・アルストム・ボンバルディアが中国メーカーと組んで応札)。日本連合は「はやて」ベースの新型車両を提案したみたいです。
2.高速鉄道に選ばれるのはなにか?
この様に中国国鉄では電化・非電化を問わずかなりの高レベルな高速新線の建設や運行が進んでいます。
又1月には南京市が北京〜上海間高速鉄道の一部分に当たる南京〜上海間に 350km/h運転可能な高速新線を建設する事を発表しています。只在来線高速化は進んでも、北京〜上海間新幹線の2008年北京オリンピックや2010年の上海万博までの完成は、今方式が決まらない以上難しい情勢になっています。
この様な情勢の中でやはり「トランスラピット」の採用は無いと言う見解は間違えていないでしょう。
又今の段階で仏のTGV・独のICE・日の新幹線の3システムが有力システムとして上げられています。しかし未だどれが採用されるかは決定されていません。国産の「中華之星」が未だ信頼性が低く採用できないと言う事で有れば、今回の“第六次大提速”用車両と北京・上海間高速新線には上記の3システムのどれかが採用される事になると思います。果たしてどれが採用されるのでしょうか? 私はTGVではないかと思います。
何故TGVなのか考えてみましょう。各々のメリット・デメリットは下記の通りです。
TGV:○「技術移転に積極的」「中国で馴染みのある機関車方式」「在来線に乗入可能な柔軟なシステム」
×「秦瀋旅客専用線で仏製信号システムに問題が有った」「KTXの評判もイマイチである」
ICE:○「中国で馴染みのある機関車方式」「在来線に乗入可能な柔軟なシステム」
×「トランスラピットで技術的トラブルがあり信用度が落ちた」「海外輸出の実績が無い」
新幹線:○「今まで無事故の実績」「大量輸送機関・高採算性の実績」
×「日本製である(国内反日感情が有る)」「台湾が採用している」
「基本的にクローズドシステムで在来線に乗入ができない」「中国の経験の少ない電車方式である」
この比較を見る限り、新幹線はまず難しいと言う事が明らかです。特に「反日感情への配慮」「台湾が採用」と言う点は大きいと思います。中国共産党は「国内の不満をナショナリズムで紛らわす」傾向が強いですし、「反日感情」を「国民不満の捌け口」にしている事も有ります。又「台湾が採用している物を二番煎じで採用」と言うのは、「台湾陳政権の独立傾向阻止」の為に軍事演習で圧力を掛けるほど、台湾民進党独立派政権を認められない中国共産党としては、容認できないものの筈です。
多分北京・上海間高速新線のシステムは、今回の“第六次大提速”用 200km/h運転用車両について、何処の車両を採用するかで実質的に決まると思います。在来線の高速化用の車両と互換性の無いシステムを採用するとは思えません。
此処でアルストム・シーメンス・日本連合の何処が勝つかで先は読めてくると感じます。多分中国は此処で技術移転を受けて、その技術力で「中華之星」の完成度を高め、最終的には国産を採用すると言う道筋を描いていると思います。その第一歩がTGV採用になる可能性は高いと考えます。
3.中国の鉄道はどうなるか?
こう考えると「中国が描く将来の鉄道システム」は下記のようになるのではないかと私は考えます。
1)当座は在来線の 200km/h高速化を海外技術導入で進める。同時に緊急性の高い輸送隘路に関しては別線並行
の高速新線を作り、高速化と貨物輸送の効率化を図る(北京〜天津・北京〜瀋陽・上海〜南京等)。
2)2010年代前半をめどに京滬線平行の北京・上海間高速新線を完成させると同時に、京広線平行線の京九線の
の電化等で、南北間輸送の効率向上・輸送力向上を図る。又その他在来線の電化も進める。
3)2010年代後半にはそれでも輸送力が逼迫する「香港〜広州・上海〜南京・北京〜天津・大連〜ハルピン」等
等の区間で、都市間旅客輸送を移転させる為の超高速輸送機関「トランスラピット」を導入する。
(1)は一部外国技術の導入と国産技術の融合で、2)3)は1)で育成された技術を昇華させた国産技術で行われる
可能性が高いと考えます。只状況によっては外国技術も採用する可能性もある)
少なくとも今の中国の経済発展を考えると、短期的レベルでは躓きが有るとは想像されますが、長期的にはある程度は順調に経済成長が進み、東部・中部・東北地域では少なくとも90年代前半のNIES諸国レベルには2020年位までには発展すると考えられます。そうなると特に南北輸送・東北地域では大量貨物輸送の主力は大量貨物輸送の主力は今と変わらず鉄道輸送で輸送量が飛躍的に増えると状況になる可能性は高いです。
特に南北輸送は今の複線の京滬線・京広線・京九線では確実に不足します。そうなると旅客輸送を他に転移させ、貨物輸送に特化させなければ膨大な滞貨を発生させ経済発展に対するインフラの不足として経済発展のブレーキとなりかねません。
これらの状況を改善させるために、今後とも中国は積極的に鉄道技術に開発投資を行うと同時に、鉄道インフラ整備を積極的に進めると考えられます。そうなると将来的には中国は「海外から鉄道技術を吸収」すると同時に「自国で積極的に技術開発を進める世界の鉄道先進国」になる可能性は非常に高いと考えられます。
少なくとも今有るような鉄道高速化計画を行っていれば、アメリカのように「鉄道は貨物に特化」「旅客はマイカーもしくは飛行機で輸送」と言う様に完全な色分けは出来ないと考えます。鉄道が貨物輸送の主役として君臨すると同時に中距離大量高速輸送システムとして活躍すると言う状況になると推察されます。なんせアメリカに比べ中国は特に東部・中部地域で人口集積が今後とも高いと予想されますので、その人口の輸送で鉄道を上手く利用出来なければ、輸送インフラ(特に高速道)が破綻する可能性も十分有ります。
そういう状況から考えれば今後とも中国は鉄道建設・技術開発・高速化に力を入れていく事は十二分に推察されますし、そうならなければならないと言えます。もしかしたらあと20年もしたら中国が世界の鉄道技術を牽引する技術大国になっている可能性も有ります(只の技術コピー大国に成り下がっている可能性も有りますが)。
只今までの色々な引用の記事を見る限り、少なくとも中国は現在では鉄道への投資に積極的なことは明らかですし、いまだに中国の交通インフラの根幹です(収益も上がっていますし)。
正しく今の中国鉄道は日本の昭和30年代半ば〜昭和40年代初頭位の“黄金時代”と同じ状況です。少なくとも輸送力は不足している・積極的に輸送力増強の投資を行っていると言う状況にあり、それが正しく進んでいます。
その中で以下に今後中国の鉄道が変化していくか? 非常に注目すべき事柄であると考えます。
鉄道の改善は中国経済インフラ整備の重要点である事から当然注目されるべきでしょうし、世界の鉄道の潮流の中でも、膨大な需要と強大になりつつある経済力を背景に鉄道を積極的に改善できる背景を持ち、急速に高速化を進めていて新技術も積極的に導入している中国が世界の鉄道の発展の先頭集団に入ってくる可能性は否定できません。今後とも積極的に中国の鉄道事情を見ていく必要が今後重要になってくると考えます。
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