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すぎ丸は何故運賃100円なのか?
TAKA 2005年 1月29日
今日は初めて“すぎ丸”を利用して私が感じた疑問について書きたいと思います。
☆初めて“すぎ丸”を利用して
偶々午前中阿佐ヶ谷近くで打ち合わせがあり、午後から豪徳寺の現場での打ち合わせに移動する為、時間調整方々阿佐ヶ谷−(すぎ丸)→浜田山−(すぎ丸)→下高井戸−(東急世田谷線)→山下と利用しました。すぎ丸自体は、ルートの五日市街道〜甲州街道間(鎌倉街道)が私の抜け道ルートなので、狭い道を走る姿に「邪魔だな」と思いつつ、バス停で待っている乗客や立ち客がありながら走っている姿から、その存在は知っていました。
今まで城西地域の南北交通は不便で、「特に中央線以南はバス交通が不便だ」というイメージが強く、鉄道で移動+短区間のバスor自動車利用がメインでした。偶々今回は車が車検で、時間に暇があったという理由で、すぎ丸乗り継ぎというようなビジネスユースでは普通使わない利用法で使いましたが、百聞は一見にしかずで、利用客もあり、交通不便地域を上手くカバーしている等中々便利で存在意義があり、「存在意義のある交通機関だな」とは感じました。
【すぎ丸の概要】 『南北バス「すぎ丸」』(杉並区HP)
☆其処で疑問“何故運賃は 100円なのか?”
そこで実をいうと今回初めて一般的にイメージされる“コミュニティバス”を利用したのですが、知識として走っていましたが運賃が 100円であることに改めて驚きました。私の場合いつもバスを利用する時にはバスカードを利用しますが(すぎ丸は使えなかったが)「23区のバスは200円or210円である」という先入観念があり、知識として知っていたとはいえ100円の運賃には改めて驚かされました。
一利用者としては「運賃が安いことは良いことだ」と思います。京王バスが運賃を 200円にした時には私も正直大歓迎しましたし利用頻度も増えました。しかし周辺のバス路線が 200円or 210円なのに、なぜすぎ丸だけ運賃が 100円なのでしょうか? コミュニティバスだから、自治体が運営委託しているバスだから、という理由では納得できません。
ちなみに杉並区内の他の中央線〜井の頭線間を結ぶバスの荻窪〜高井戸間や高円寺〜永福町間等も関東バス・京王バスなので当然運賃は 200円or 210円です。
「運賃が安いことは良いこと」ですし、規制緩和の時代ですから「運賃が多様であることも良いこと」です。公共性の側面から公営交通が最低限の独立採算が確保できる範囲内で民間より安く運賃を設定することは常識の範囲内であれば否定できる物ではありません。健全な中での競争は歓迎すべきですが、同じ区内のバスで距離等も変わらないのに運賃が倍以上違うのは常識の範囲を逸脱し、健全な競争を通り越し、何か不平等な感じです。
それこそ採算性と他地域との平等性を軽視し「官が主体となって行った事業だから運賃を安く設定した」と思われても反論できない納得の行かないことであると感じます(但しすぎ丸は 3年目から黒字に転換したことで 100円でも運営費はカバーできることを証明したので、“採算性を無視してまで運賃を下げた”とまでは強く言えませんが……。でも平等性の問題は残ります)。
納得できないだけでは仕方ないので、取り合えず調べてみましたが、何故“運賃が 100円なのか?”という理由は残念ながら私には分からずじまいでした。色々な所を調べましたが、フォーラムに参加されているとも様・かまにし様のHPを下記に挙げます。
『交通とまちづくりのレシピ集 「コミュニティバス」』
(とも様)
『蒲田コミュニティバス研究所』
(かまにし様)
その他にも調べたのですが、「何故すぎ丸は 100円なのか?」という明確な答えは見つかりませんでした。強いて言えば とも様の上記HP の中で『ムーバスを自治体負担なしでやった場合、運賃が150円などになったとすればせっかく減った自転車が増加したり、高齢者の外出率が下がるおそれがあります』という文がありましたが、趣旨は良く分かるのですが、これだと、既存バス路線の沿線住民が自転車に逸走して放置自転車が増えている現象を如何するのか?、既存バス路線沿線では無料パスを持たない高齢者はバス路線を利用し辛くなり高齢者の外出率が下がっても良いのか?というような運賃と平等性の関係に関する疑問が出てくることとなり、私の疑問の回答は上手く見つけられませんでした。
☆特定路線だけが 100円であることは不平等ではないのか?
色々調べていても理由が見つかりませんでしたが、同じ杉並区内に複数の運営形態の路線があり現実に不平等が存在する事例があることに気付きました。杉並区内の中央線〜井の頭線間には比較的大きな団地として東から、
(1) 松ノ木住宅
(2) 阿佐ヶ谷住宅
(3) 荻窪団地
があり、バスは、
(1) 高円寺〜永福町
(2) 阿佐ヶ谷〜浜田山
(3) 荻窪〜荻窪団地
の3路線がアクセスしています。(1)〜(3)の団地はどれも杉並区内にありアクセス道路も狭く高層住宅でもなく同じような古びた低層団地です。今や何処にも中央線からアクセスバス路線が出来ましたが、そのアクセスバス路線は下記のように差があります。
(1) 民営で運営補助が無いが既存の“松ノ木線”延長区間沿線道路整備に杉並区が補助 (運賃200円→京王の運賃に合せている)
この様に同じ区内の近接している同じような環境の住宅地のアクセス手段で上記のような差があります。確かにすぎ丸沿線には比較的公共施設が多い等の公共交通の必然性は高いと言えます。しかしそれも相対的なだけであり、それだけで (2)路線を杉並区が手厚く補助する必然性があるとは思えません。逆に南北駅接続交通には寄与しないからといえども (3)路線の運営に民間バス会社が払っている努力に公的な補助が無いのも不平等ではないでしょうか?
(1)〜(3)の住宅地で、 (2)の団地だけが区民税を多く払っているから、それで補助を前提にしているから、運賃が 100円という訳ではないでしょう。そうすると同じような地域で官が公共サービス改善に手を加えたことで逆に公共サービスに不平等が発生しているということになります。
実際的には、 (3)は昔から民間が自主的に運営していた路線だし、団地だけを目的にした路線だから普通に民間に任せる、 (2)は南北交通改善に杉並区が主体となった路線だから各種補助も行い運賃も 100円、 (1)は同じように杉並区が旗を振り南北交通改善につくった路線だが、途中(松ノ木住宅〜永福町)まで京王バスが走っていたから、道路改善だけに補助して運行補助は無く運賃も京王の既存路線に合せて 200円、という理由で上記の様な差が出たと考えますが、これは“公共サービスの公平性”の観点から好ましいことでしょうか?
☆すぎ丸自体を否定する訳ではないが
そのような不平等があるといっても、すぎ丸のコンセプトとそのスキーム自体を否定する訳ではありません。実際すぎ丸は運営委託時に「赤字の時には上限(2000万円)を定めて補助」「黒字は区と受託者で折半」(杉並区HP 「区長メッセージ02年3月1日」 より)という民間の活力の引き出しに配慮したスキームで運営されており、コンセプトが当たったこともあり「黒字達成」(杉並区HP 「区長メッセージ04年6月1日」 より)という素晴らしい状況です。
同時に南北バス交通を混雑し定時性に乏しい環八・環七のバス路線に頼っていたが不便だった地域のバス交通が改善されたのですから(この様な路線が無ければ、私の今日のような移動ルートを考えることもできなかったでしょう)、その公共へのメリットは大きく存在意義は十分ありそれこそ成功例であったと思います。
しかしそのコンセプトゆえに運賃面で新たな不平等が発生してしまったことが問題ではないかと思います。“基本は民に任せ、民が行うのには困難な所は官が民の力を活用して行う”という姿勢は極めて正しいと思います(官と民の役割分担の模範例とも言えるでしょう)。けれども“官が主体になったところだけ極端に運賃が安い”ということは、黒字になり実質的に税金が投入されていないと言えども公共サービスのレベルの差という視点から考えると問題があるのではないかと感じます。
そうはいっても、今更すぎ丸の運賃を 200円or 210円に値上げするのは好ましくないと考えます。又周りの民間バス路線の運賃を下げるのも民間バス業者の苦しさを考えると困難であると感じます。
このようなことが発生することから考えて、バス等の公共交通に関して民間・官の関与したコミュニティバス等を含めて総合的な運賃政策が必要であると思います。
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