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JR東日本の「駅ナカビジネス」を見る
〜ステーションルネッサンスは駅をどのように変えたか?〜
TAKA 2005年06月29日
近年駅構内(いわゆる「駅ナカ」「駅ソト」)を巡る鉄道会社のビジネスが特に積極化しています。東京圏で一番積極的なのはJR東日本で2001年〜2005年の
中期経営計画「ニューフロンティア21」において「ステーションルネッサンス」
を掲げ2002年の上野駅を始めとして、特に首都圏の駅で駅ナカの開発を積極的に進めてきました。
先日ふらっと
散歩で新京成線方面に乗りに行った時
に、乗換で降りた西船橋駅でJR東日本の駅ナカショップDila西船橋を見る機会があり、正直言って「ビックリ」しました。駅自体はもう30年近く経つ薄汚れた橋上駅舎でしたが、Dila西船橋が新しく出来た一角(総武快速線線路の上位)だけ、パッと明るくハイセンスの店が入っていて「千葉離れした店舗」が入っていました。
いつも品川(主に本屋を利用)・大崎(スープストックTokyoがお気に入り)等のJR東日本の駅ナカ店舗を使っているときには、そんなに「驚く」程の物を感じませんでしたが、西船橋を利用した時には「今までとは明らかに違う店舗選択のセンス」を感じ非常に驚きました
その様な経験があり、今回西船橋だけでなく大宮にも非常にハイセンスな駅ナカ店舗が出来たと聞き、交通論とはちょっと外れますが、ちょっと駅ナカ店舗散策をしながら「JR東日本のステーションルネッサンスの成果」を見学しJR東日本の駅ナカビジネスについて考えてみる事にしました。
「1」元々駅は鉄道業副業のキーポイントの一つだった
先ずは「駅ナカビジネス」について考える前論ですが、元々鉄道業の副業にとっては「駅」と言うインフラは副業を行う場所として、極めて重要な場所でした。
鉄道業の副業と言うと「不動産開発・観光・流通」と言う業態が浮かびますが、その内「流通」に関しては、駅が重要な役割を果たしています。一番最初に駅に鉄道機能以外の流通としての拠点性を見出したのは阪急の小林一三氏による梅田駅への「
阪急直営マーケット(後の阪急百貨店)の開業
」です。
元々「駅で物を売る」と言う事自体は明治5年の鉄道開通時から存在していました。(
明治5年には駅構内で新聞の立ち売りが開始されている
)しかし「駅の集客力」自体を商売のネタにして店を誘致したり自営して「流通業」を行うという発想・実践は阪急の小林一三氏が始めたものです。
阪急梅田での成功後、百貨店を自営する及び誘致するという形態で民鉄各社は駅での流通業に進出していきます。戦前では阪急梅田の他に南海難波(高島屋がテナント)・東武浅草(松屋がテナント)・東横渋谷(東横百貨店自営)等が有名です。又戦後は阪急・東急以外にも民鉄各社が百貨店直営に乗り出し、大手民鉄の大部分が自社経営のターミナル百貨店を子会社として持つまでなっています。(今や民鉄系百貨店は百貨店業界の大きな位置を占めている)
その後百貨店だけでなく、「流通系貸しビル」がターミナル駅等に出来、同じように「スーパー」等も郊外駅を中心に造られるようになり、鉄道企業の重要な副業として(流通業に場所を賃貸する貸しビル業も合わせて)大きなウエイトを占める様になりました。
旧国鉄も副業への制限が有った為に、駅ビルへの出資と言う形で駅でのビジネスに参入はしていましたが、JRになった後は各社共に積極的になりJR東海の
名古屋セントラルタワーズ
(
JR東海高島屋
)やJR西日本の
京都駅ビル
(
JR京都伊勢丹
)等のターミナル駅の大型商業施設と合弁の百貨店経営に乗り出しています。
中でもJR東日本の
ルミネ
は関東のJR主要駅にテナントビル型式のショッピングセンターとして10店舗を展開しており、新宿の「
ルミネtheよしもと
」の様な注目を浴びる劇場を経営したりして、顧客主体の経営を行い
経済雑誌に注目される存在
までに成功・成長しています。
この様に日本の鉄道業では「ビジネスにおける駅の占めるポジション」はかなり重いものであり、駅を機軸とした流通業を中心とした鉄道の副業ビジネスは昔から行われてきました。
「2」しかし駅ナカには店舗が無かった・・・
この様に駅自体は鉄道業副業のキーポイントとして流通業を中心に色々な事業が行われてきました。しかしこれらの「駅ビジネス」は基本的に「改札口の外」いわゆる「駅ソト」で行われてきました。その為駅ナカに有る店舗と言うと考えてみると「キヨスク・立ち食いそば・小さな本屋」が主流であり、此の頃ではドトール等の喫茶店やQBハウス等のすぐ散髪出来る床屋も登場してきましたが、全般的には駅ソトの店舗に比べると洗練されていない「ダサい店舗」で時間をかけずに買い物が出来る店舗が主流となっていました。
此れは何故か?と考えれば理由は説明できます。一つは「駅の構内に造るより外に面して造れば地域の利用客も確保できる」と言う需要確保の側面と、もう一つは「駅構内は鉄道運営の施設が主体で店舗なんか作るスペースは無い」と言う鉄道事業者としての事情があり、駅ナカの店舗は主流とならなかったといえます。
又鉄道事業者としての先入観念で「切符を買って駅に入れば利用客は目的地に急ぐから、長くとどまって買い物はしない」と言う考えが主流として有り、その為に「簡単に買い物が出来るキヨスク」や「すぐ食事が出来る立ち食い蕎麦屋」や「電車の中で読む本を売る小さな本屋」が駅ナカ店舗の主流となっていたと言うことが出来ます。
「3」その考えを変えたのが「ステーションルネッサンス」
その様な考えを根本的に変えたのが、JR東日本の「ステーションルネッサンス」です。「
ステーションルネッサンス構想
」は端的言えば駅の役割をもっと高度化させ、今までは駅ソトで提供してきた総合的なサービスを駅の改札口の中でも提供しようとする考え方です。
元々駅に展開している鉄道会社の副業は「鉄道会社の雇用対策」が大きな位置を占めていて、キヨスク・立ち食い蕎麦屋等の商売も「武家の商法」で運営されてきて、駅の中と言う閉鎖された環境であるからこそ成立した商売であり、駅ソトに対して競争力の有る商売ではありませんでした。それを改善して「外のテナントを呼び込み」「外に負けない洗練されたショッピングゾーン」を作るというのがステーションルネッサンスの根本的考えで有ると言えます。
JR東日本のステーションルネッサンスは2002年の上野駅ショッピングゾーンの改修から始まり、上野駅の時にもかなり話題を呼びましたが、その第二段が今春出来た「(ほぼ)完全駅ナカショッピングゾーン」である、Dila西船橋とecute大宮であると言えます。
その中でもecute大宮は駅ナカビジネスとして成功を収めている状況です。(「MRI TODAY
駅ナカ誕生の意味
」参照)Dila西船橋はJRがテナントに定期借地で場所を貸す「借地業」ですが、ecute大宮はJR東日本が新たに「
JR東日本ステーションリテイリング
」と言う新会社を作り、駅空間をトータルプロディュースし「駅構内開発小売業」と言う新しい業態で、「パルコ」や「109」の様なテナントビジネスに近い事業形態で運営をしています。
この様にJR東日本が始めた「ステーションルネッサンス」が当初の「場所貸しだがセンスのいい店を呼んで来る」と言う第1段階から、「テナントビジネス」として店舗の選定や運営形態等で新たな形態である「駅構内開発小売業」を作り出し、新たな第二段階には入ったということが出来ます。
ですから同じ「ステーションルネッサンス」に基づいた駅ナカビジネスでもDila西船橋は「センスのいい場所貸し業」と言う第1段階の完成形と言うことになりますし、ecute大宮は其処から進んだ「駅構内開発小売業」と言う第二段階の初めての形が出て来たという事になります。
そのJR東日本「ステーションルネッサンス」の2つの形Dila西船橋とecute大宮を実際に見て見て、JR東日本駅ナカビジネスの現状を見てみたいと思います。
「4」Dila西船橋とecute大宮を実際に見て
その様な訳で、実際にDila西船橋とecute大宮を散策方々見に行く事にしました。実際は仕事が終わってからの散策になり、しかも大宮と西船橋は自分の家からも比較的遠い地域なので、見に行く時間が夕方のラッシュ時〜夜と言う時間帯になり、昼間の状況は見ることが出来ませんでした。
けれども夕方〜夜と言う時間に訪れた事が、JR東日本の「駅ナカビジネス」の「駅ナカで有るがゆえの需要の狙い所」と「何故JR東日本の駅ナカビジネスが此れだけ成功したか?」が見えてきたような気がします。
☆Dila西船橋とecute大宮の概要
店舗名 店舗面積 店舗数 営業時間 売上目標 運営主体 乗降客数 Dila西船橋 2,130㎡ 21 7:00〜23:00(コアタイム) 年間38億円 東京圏駅ビル開発 451,173人/日 ecute大宮 2,300㎡ 68 9:30〜22:00(コアタイム) 年間55億円 JR東日本ステーションリテイルング 455,671人/日
※乗降客数・通過人員以外の資料は「交通新聞社 JRガゼット6月号」より引用しています。
※乗降客数・に関しては「
関東交通広告協議会レポート
」より引用してます。
(西船橋はJR東日本・東京メトロ合計 大宮はJR東日本のみ)
☆ Dila西船橋
ショップリスト
ecute大宮
ショップリスト
(1)Dila西船橋を訪ねて
早速現地訪問の第1弾として6月20日にDila西船橋を訪ねました。Dila西船橋は前回5月12日に偶々通りがかり、それこそ「腰を抜かさんばかり」に驚いてJR東日本の「駅ナカビジネス」に注目するようになったきっかけを与えてくれた店舗です。その時には先入観念・事前知識両方ともゼロの状況で見ましたが、昭和40年代に作られた橋上駅舎の中にいきなり東京のハイセンスな店が有るという感じの「木に竹を接いだ」と言うイメージを持ちました。今回は「目的を持った見学」です。果たしてそのときのイメージが正しいのか?確認する意味を含めて訪問する事にしました。
6月20日は夕方荻窪に居た後の訪問でしたので、総武緩行線に揺られる事1時間近く移動する羽目になりました。それこそ「一寝入りする」距離です。荻窪を出たときには立ち客がボチボチの車内も寝て起きた市川辺りでは、帰りのラッシュ時に当たりかなりの混雑です。目的地の西船橋では「武蔵野線・東葉高速線」への乗換駅であり降車客が多いのと同時に、東西線からの乗換客が多く、客の出入りはかなり多い感じです。
西船橋への到着は丁度ラッシュ時の帰宅客でごった返す19:30頃になりました。早速目的地のDila西船橋を見るためにコンコースに上がります。コンコースに上がるとちょっと又ビックリです。1ヶ月前に来た時は駅ナカ店舗の所だけ綺麗でコンコースはくすんだ感じでしたが、この1ヶ月でコンコースの改修が進んだ様で、コンコース自体もサインが統一されたり化粧直しされており非常に綺麗になっています。今度は化粧直しされていないメトロ部分との格差が極めて目立つ感じになっていました。(改修工事は実施中のようだが・・・)
[写真1]西船橋駅コンコースとDila西船橋 [写真2]西船橋駅構内(自由通路)※手前がメトロで奥がJR
コンコースには乗降客・乗換客が入り混じりかなりの人出です。只私は荻窪で乗ってから何処でも下車せずに東京方面に戻る事になるのでキセルにならない様に、一度下車して再乗車する必要が有ったので早速改札を出て北口広場の方に降りてみます。
北口への通路にはDila西船橋の一部の菓子屋とパン屋が有り、北口には小型の食品スーパーが有ります。菓子屋さんからはシュークリームの良い匂いがします。家への帰り道でこの匂いを嗅がされたら購買意欲を掻き立てられるでしょう。東京の駅構内に結構有る「らぽっぽ(ポテトアップルパイ屋)」もこの「匂い作戦」で行列を作っています。私も西武池袋駅で月一回程度買っていきますが、この様な購買意欲を掻き立てる「店の配置」「店の演出」等は非常に重要です。Dila西船橋でも北口広場への通路と武蔵野線への乗換通路に面した所に菓子系の店があり、上手く店舗配置をしていると思います
[写真3]北口広場への自由通路 [写真4]駅構内のワッフル屋さん
駅ソト部分の店舗を見た後(シュークリームには気が引かれたが・・・流石に立ち食いや1時間以上掛けて持ち帰るのには躊躇われた)早速今回の本命の「駅ナカ」部分を見る事にします。Dila西船橋の駅ナカ部分は2階→飲食スペース・酒販店、3階→物販店・喫茶と言う感じの区分けになっています。2階・3階共に通路が広めで非常に明るい感じに作られています。
[写真5]「Dila西船橋」2階部分 [写真6]「Dila西船橋」3階部分
早速店舗内を覗いてみます。最初に3階を廻りましたが、3階は本屋・喫茶店・ドラッグストア・リラクゼーションの店が入っています。流石に男がリラクゼーションの店は気が引けたので、ドラッグストア・本屋を覗いてみます。これらの2店舗は街中・駅ソトでも別に珍しい店ではありません。「駅ナカ」と言う立地を考えるとそれなりに充実した品揃えで「必要十分」と言う感じです。
そうこうしている間に20時を廻りお腹も空いて来たので、喫茶点はパスして2階の飲食スペースに降ります。2階の飲食店はP.style(パスタバール)・ベッカーズ(JR系のファーストフード)・ImperialTreasureExpress(カジュアルチャイニーズ シンガポール・香港で有名らしい?)・トーキョールー(カレーの専門店)の4件が入っています。ショップエリアに入ってビックリ、店がオープンキッチンになっています。トッピングの鳥を切る音やカレーの良い匂いが食欲を掻き立てます。
今や飲食店でオープンキッチンは珍しくなく、街中の店でも「銀だこ」や「ビアードパパ」の様に作る所を見せる事で購買意欲をそそると言うのは今や普通のスタイルですが、駅ナカの飲食店でこの様なスタイルを取るのは始めて見ました。けれども店の個性を出し購買意欲をそそるのに極めて効果的なスタイルです。
私も思いきり食欲を掻き立てられたので、ImperialTreasureExpress・トーキョールーの2件の店で食事をしてみました。どちらとも料理・店舗デザイン共に非常に洗練された感じであり、千円で十分食事が出来る単価ですが、立ち食い蕎麦屋などに比べると高めの価格帯でした。しかしその金額に十分見合う味・内容でした。
[写真7]ImperialTreasureExpress 店舗 [写真8]鶏煮込みそば(鶏に浸ける特性生姜ソースが美味しい)
[写真9]トーキョールー 店舗 [写真10]バターチキンカレー(ライスが五穀米)
駅ナカ店舗で珍しく美味しい食事をした後、2件梯子だったので流石にお腹が苦しくなり、タバコを一服がてら休憩に最後に残した3階の「西船珈琲研究所」に寄って見ます。私は珈琲は得意な方でないので味は良く分かりません。(胃が良くないので(大食漢なのに何を言うと言われそうですが・・・)珈琲は避けているので・・・)しかしちょっと奥まった所に有りますが、店の造りを見ると座り心地の良さそうなソファーが置いてあり、店の造りは駅ナカとは思えない落ち着いた雰囲気の喫茶店です。
私は色々有る珈琲の中からブレンド珈琲とワッフルを頼みタバコを吹かしながら一息つきました。店の中も落ち着いた内装で、OLか女子高生の賑やかな集団が居たのでイマイチ落ち着けないでしたが、今までの駅のドトールの様な落ち着けなくしかも貧相な喫茶店とは大違いです。良く仕事で新宿駅当たりで「駅ナカで待ち合わせして駅ナカ喫茶店で打ち合わせ」と言う事もしましたが、座れる所が無く「立ち席で立ちながら打ち合わせ」で落ち着いて話が出来ないというのが一般的でした。そういう点から見ると、この様な「駅ナカでちょっと落ち着ける喫茶店」は忙しいビジネスマンには非常に助かる物です。有る意味「Dila西船橋」で最高のヒットかも知れません。新宿・池袋当たりの駅にも「単独で良いのですぐに欲しい」と切実に感じました。
[写真11]西船珈琲研究所 店舗 [写真12]珈琲とワッフル
西船珈琲研究所で一服してお腹を落ち着けた後、21時も過ぎたので帰路に付く事にしました。その時間になると流石に飲食店は客が少なくなっていましたが、物販店特に菓子屋さんは未だ盛況な状況でした。
昼間を見ていないので何とも言えないですが、此れだけの客が集まる施設を駅ナカに作り出せたのは大きいといえます。ましてや東京の山手線の大駅でなく、千葉県内の乗換主体駅の西船橋でこの様な駅ナカビジネスが成立したという事が大きな意味を持つといえます。今回の「Dila西船橋」訪問で第1ステップであれ駅ナカビジネスのもたらす意味・存在を改めて認識させたれたと言えます。
(2)ecute大宮を訪ねて
6月20日にDila西船橋を訪問した後、此の頃開業したもう一つの駅ナカ店舗であるecute大宮を訪ねようと時間を探っていましたが、大宮方面に行く用事が無く中々訪ねる事が出来ずに居ましたが、6月25日の夕方に板橋で仕事の後フリーになったので、16時過ぎに車を駐車場の安い埼京線の北赤羽駅そばに置き(12時間で1000円打ち止め、しかも1時間100円)埼京線普通で大宮に向いました。
埼京線普通の車内は土曜日の夕方の普通で有ることもあり、座席の半分ぐらいが埋まる程度の乗車率でしたが、大宮の埼京線地下ホームは川越線列車を待つ人でそれなりに混んでいて、地上に出るまでの駅構内もかなりの人混みで、流石に埼玉の中心地だけあり人出は東京の中核駅に負けないぐらいでした。
埼京線地下ホームから橋上コンコースに出ると其処はecute大宮の入り口になっており、高崎線・東北線・京浜東北線への乗換通路がecuteの「アベニュー」と言う名前のメイン通路になっています。そのメイン通路には「ecute」の一部として片側には小型の店舗(リブロや駅弁屋等)が並んでおり、又その反対側はショッピングゾーンの入口として綺麗に化粧されています。それに通路に面している店も有り、「駅ナカの商店街」と言う感じです。
しかし「駅ナカ」が目的地とは言えども、一度大宮で下車しない限りは又北赤羽に戻り下車する事はできませんので、一度改札を出てルミネの入り口の有る自由通路を通りながら南口改札口から再度駅構内に入ります。自動改札の所には「ecute大宮に行かれるには入場券が必要です」との掲示がして有ります。駅の乗降客・乗換客だけでなくecute大宮で買い物をする為に駅に来る人も多い証とも言えます。西船橋の改札口にはその様な掲示は有りませんでしたので、その点はDila西船橋よりecute大宮の方が集客力が有るのかもしれません。(Dila西船橋は改札外にも店舗が有るので一概には言えませんが)
[写真13]ecute大宮 アベニュー(北側の通路) [写真14]ecute大宮こもれび広場(南口改札)
Dila西船橋とecute大宮の雰囲気を比べてみると、どちらも「最新の駅ナカ店舗」だけあり非常にセンスの良い店が揃っていますが、Dila西船橋は「駅のコンコースに店舗スペースを足した」と言う感じで、コンコースと一応線が引かれている駅ナカの店舗街と言う感じでしたが、ecute大宮は駅のバリアフリー化の為にエスカレーター・エレベーター設置のスペースを作る為の人工地盤上に駅ナカ店舗を作ったと言う事もあり、本当に「駅のナカに店舗が有る」と言う感じです。特に新設通路の「ウォーク」の一角は店舗の間にホームへのエスカレーター・エレベーターが有り通路には発車案内の電光掲示板が有り、本当の「駅ナカの店舗」と言う感じです。
[写真15]ecute大宮 ウォーク(南側に新設の通路) [写真16]ecute大宮フードシアター(FoodとSweetsのコーナー)
ecute大宮は大きく分けると「Food」「Sweets」「Cafe&Eat-in」「Goods&Servise」の4ブロックに分かれており、店舗配置のイメージ的には丁度南口改札前のこもれび広場に面している所が「Goods&Servise」のブースになっており、その隣が「Cafe&Eat-in」主体でその隣が「Food」コーナーで、一番西側(新幹線寄り)が「Sweets」のコーナーになっており、「Sweets」コーナーの一番奥にEat-inのたこ焼き屋とソフトクリームを売っている店(本業はお茶屋さん)が有り、西側が2階建てになっていて其処に喫茶店が有ります。
[写真17]ecute大宮 Goods&Serviseコーナー [写真18]ecute大宮 Cafe&Eat-inコーナー
[写真19]ecute大宮 Foodコーナー [写真20]ecute大宮 Sweetsコーナー
早速中を散策してみます。先ずはお楽しみの「食べ物店探索」です。Cafe&Eat-inコーナーは11軒ありますが、ecute大宮の方が比較的カフェ比率が高く、Dila西船橋が1軒に対してecute大宮は4軒有ります。しかし本格的な「落ち着ける喫茶店」は1軒だけで、しかも「女性に入りやすい店」と言う感じです。その為Dila西船橋では寄った喫茶店をパスして、「食事の店」に絞る事にしました。
食事の店は「うどん・おむすび・パスタ・たこ焼き・カレー・チャーハン・スープ」の7軒が入っています。その中で今までお気に入りの「スープストックTokyo」しかなかったのに新たなチェーンとして「シアトルから初上陸」と言う食べるスープ屋と、行列が出来ると聞いていた「かにチャーハンの店」で食事をして見ることにしました。
[写真21]Chowder's(スープ屋) [写真22]オニオンのスープ(リゾット入り)とサラダ
[写真23]かにチャーハンの店 [写真24]かにチャーハンとかに味噌汁
今回訪問した2軒は東京では中々見かけない店です。Chowder'sは汐留・西新宿・丸の内には有る店舗との事ですが一般的では有りません。東京で「食べるスープの店」と言って知名度の有る「スープストックTokyo」に比べたら知名度はありません。しかし「スープにリゾット」と言う食べ方は今まで無い食べ方ですし、西洋お茶漬けみたいな物ですから受け入れられる余地は有るでしょう。又かにチャーハンの店はチャーハンの専門店ですが、ラーメン専門店は有れどもチャーハン専門店と言う物は私も見たことがありません。しかし簡単に食べれる軽食と考えれば、チャーハンが選択肢として十分考えられますし、「かにチャーハン」と言うのはちょっと高級な感じです。そういう点では珍しい店を集めたと言っても、十分「駅ナカフードの店」として成立すると言えるでしょう。
しかし残念だったのは、空調・換気や消防法の絡み等が有ったのかもしれませんが、オープンキッチンでなく、写真の通り店も硝子で仕切られている点です。硝子ですから中は見えますが、キッチンが硝子で仕切られ店自体も硝子で仕切られていると、香りして来ませんし音も聞こえません。Dila西船橋の現地訪問では「鶏を切る音」「カレーの匂い」等に食欲を刺激させられたと書きましたが、ecute大宮ではその様な仕切られた環境の為その様ないい刺激を感じる事が出来ませんでした。この点は「店舗の演出」と言う点で大きくマイナスだな?と感じました。
とりあえずお腹もいっぱいになり、Eatゾーンも一通り見て試食もしたので、その他のゾーンも見てみることにしました。特に興味を感じたのは面積的に大きな場所を占める「Food」「Sweets」のゾーンです。ecute大宮の場合Foodゾーンに私の知らない店でしたが「いかりスーパーマーケット」と言う店がが小型高級スーパーを出しており(売ってる店の品物を見ると成城石井のような感じ)、それ以外にもRF1・神戸コロッケ・PAOPAO等のデパ地下おなじみの店が並んでます。又「Sweet」コーナーもロイスダールやマキシム・ド・パリ等のデパートで見かける店がずらっと並んでます。
[写真25]Foodコーナーのいかりスーパーマーケット [写真26]FoodコーナーのRF1
此れを見るとJR東日本がecute大宮で作ろうとした物は明らかで有ると思います。つまりは「デパ地下を駅構内に作ろうとした」と言う事であると考えます。Dila西船橋とecute大宮では明らかにecute大宮の方が「考えの統一感」は貫かれている感じがします。それが「駅ナカビジネス第二段階」への進化の成果であり。駅構内開発小売業と言う新しいビジネスモデルなのでしょう。その成果が「駅ナカにデパ地下を作る」と言う事であれば、ecute大宮に対する評価は80点であると言う事が出来ます。
「デパ地下」自体が「高級なスーパー」として「ちょっと高くても良い物が欲しい」と言う客層に評価されお客様が来ています。ですから実際は「デパ地下」とデパート全体の相乗効果は以外に高くは無いと言えます。その様な事から考えると「ちょっと高くても良いものが有る」環境さえ作ってあげれば、別にデパ地下でなくてもお客様は来てくれると言うことが出来ます。ですからデパ地下以上に利便性の良い駅構内にデパ地下に近い店舗群を作ってあげればお客様は集まると言う考え方は基本的に正しいと言えます。
しかし駅ナカと言う立地は有る意味特別な立地で有ると言えます。今までの駅ナカで流行る商業形態は以外に「衝動買いを誘う店」です。その象徴が「らぽっぽ」「ビアードパパ」の様な「実演を売り」にする店であり、「お客様に魅力を訴えかける刺激の有る店」です。その刺激がオープンキッチンであり実演販売であり1000円程度で手軽に有る程度の量を買えるプライスゾーンです。帰りにサラリーマンが誘惑や刺激を受けて家へのお土産を気軽に衝動買いするような店が駅ナカで流行る店で有ると言えます。
その点から考えるとecute大宮の店のラインナップは特に「Sweets」において硬すぎて高級すぎる感じがしますし、刺激に乏しいです。女性には受けそうな店のラインアップとは言えますが、男性にはちょっと気が引ける店が並んでいると言えますし、男性がお惣菜を買って帰るとはちょっと想像しがたいです。それに大宮と言う駅を考えれば通勤客の多い駅ですしビジネス客が多い駅です。そう考えると男性の利用が無視できない数存在する駅であると考えられます。その様な駅の店揃えであれば、もう少し「駅ナカのデパ地下」的な店に拘らず、もう少しフランクな店ぞろえでも良かったのではないかと考えます。
「5」JR東日本の「駅ナカビジネス」は何故成功したのか?
今回偶々JR東日本のDila西船橋に注目する機会が有り其処から色々調べましたが、何故JR東日本のステーションルネッサンスの様な考え方の駅ナカビジネスは成功したのでしょうか?
前にも言ったように駅ナカビジネス自体は売店等が主体となり昔から行われてきた物ですし、駅ナカにコンビニを造る等の駅ナカビジネスはJR東日本が始めた物では有りません。何処が最初に始めたか?と言うのは大きな問題ではありませんが、実際は何処からとも無く各民鉄・JRが駅ナカに有るスペースの有効利用により始めた物です。
そのビジネスに「大きく飛躍を加えた」のが、JR東日本のステーションルネッサンスに起因する駅ナカビジネスなのです。では何が飛躍をもたらしたのか?と言うことでが、その要因は「(1)駅ナカに纏まった店舗の場所を確保した(2)統一的なコンセプトの店舗構成を実施した(3)乗降人員以外に乗換人員の多い場所で大規模な駅ナカ店舗を作った」と言う3点が他民鉄等と比べると大きな差であったと思います。
他の大手民鉄の場合「とりあえず開いている所に店舗を造る」と言う形態で始めた場合が多く、同時に多数の乗降客・ラッチ外乗換客・ラッチ内乗換客が有る主要駅では既に鉄道敷地内の改札の外(駅ソト)に駅ビル等の大型施設を作っており、JRの様に大規模かつ統一的に駅の改札の中に店を作るスペースが無かったという要因があり、JRの様な駅ナカビジネスは展開しずかったので、散発的な物になってしまった要因は有ります。
逆に言えばJR東日本は、元々乗降客・乗換客が多い駅が多いというポテンシャルが有る中で、ステーションビジネスの開拓が遅れており開発余地が多く残っていた所に、上手くセンスの良い大型の駅ナカ商業施設を作りヒットさせたと言うのがJR東日本の駅ナカビジネス成功の要因であると言えます。
実際にDila西船橋でもecute大宮でもこの成功の3条件に当てはまっていた事は間違いありません。どちらもそれなりの乗降客が居る中で3路線以上の乗換路線が有り乗降客・ラッチ無い乗降客が非常に多く、線路上の未開発の空間に人工地盤を作り2000㎡クラスの中型店舗の器を作り出し、統一的なコンセプトでセンスの良い店を出店させてビジネスを成功させています。
又ecute大宮の場合、
3月5日〜26日の間で入場券発行が2.5倍・乗降客が4%増加
等の副次的効果も合わせて発生しています。けれども本来駅ナカでなく駅ソトに店舗を造れば、大宮の様な副次的収入は無くなる物のその分ハードルも無くなり、沿線の住民需要や車での来客需要を取り込むことが出来て本来は一番良いはずです。本来駅自体の集客力を増すのであれば、鉄道敷地内の駅ソトに店を造る方が好ましいと言えます。
実際に此れから駅改良を行う民鉄の駅でも店舗部分を拡幅する例(
小田急線新百合ヶ丘駅橋上駅舎改良工事 店舗面積291㎡→1,189㎡
)は有りますが、必ずしも「駅ナカで店舗」と言うより「より多くのお客様に利用いただける駅」と言うラッチ外の駅店舗増強が主流になっています。
大手民鉄が駅ソトを重視するのは、やはり乗降客数の差以上に乗換客数の差とも言えます。前述の例の新百合ヶ丘でも小田急線の主要駅でありながら乗降客数は10万人程度であり多摩線の乗換客も多くは有りません。此れだけ駅ナカの利用客に差が有るとやはり乗降客・乗換客だけを相手に1000〜2000㎡クラスの中型店舗を造ると言う事にリスクはあります。そういう事もあり大手民鉄は駅周辺住民需要を吸収する事もできる駅ソト店舗に力を入れてると言えます。
その様な点から考えると、JR東日本の駅ナカビジネスは「駅での商売全体を示すステーションビジネス全体」だけでなく「ラッチ内での本当の鉄道利用客を相手にした駅構内物販業」であると考えるのならば、JR東日本はその持っている場所等の資産ストックと鉄道利用客絶対量の多さと言う優れて恵まれたインフラを武器にして駅構内でのビジネスを成功させたと言えます。 「スペース」「利用客」はと言う要素は駅ビジネス成功に必要な要素です。JR東日本の駅ナカビジネスの場合、他民鉄より恵まれた必要要素を最大限に生かし、「スペース」「利用客」の2点で駅ソトより成功が難しい駅ナカでも店舗ビジネスを成功させたと言えます。
「6」「駅ナカビジネス」はJR東日本に新たな局面をもたらす。
この様にJR東日本の「駅ナカビジネス」は成功を収め第二段階に進んでいます。駅ナカビジネスの第二段階に関しても
ecuteの出店構想
が
立川
・
品川
で決まっており、より大規模に店舗展開が進む事になっています。その様にJR東日本の「ステーションルネッサンス」は順調に進み、「ステーションルネッサンス」を進化させた新しいステーションビジネスの水平展開が順調に進んでいます。
しかしJR東日本の駅を中心としたビジネスは「駅ナカ店舗」だけに留まりません。駅は当然鉄道を運ぶ事で金を稼ぎ、ステーションビルに関しては「
ルミネ
」がショッピングセンタービジネスを展開し、ホテルに関してはホテルメッツを中心とした「
JR東日本ホテルチェーン
」がホテルビジネスを展開しています。
此処までは規模の差があれども他大手民鉄と同じビジネスモデルです。それだけでは有る意味特筆すべき物では有りません。しかし今やJR東日本にはSuicaが有ります。そのSuicaがステーションルネッサンスと共に大手民鉄には出来ない新しい鉄道業のビジネスモデルを作り出し始めていると言えます。
今や
大手民鉄もSuica導入へなびく状況
になり、それだけSuicaはインパクトの大きい物である事を証明していますが、Suicaは鉄道利用のICカードと言う機能だけでなく、今や電子マネーとしての機能も果たしており
発行枚数は既に1255万枚を越していて、その内電子マネー機能を持った物が745万枚
に達しています。此れは同じ電子マネーEdyの
電子マネー機能カード1000万枚
に比べて、基礎的な発行枚数(電子マネー機能の無い物)で見れば互角の展開です。しかし使用できる店舗は
Suicaが使える店舗約1000件・1日総利用件数10万件(月平均300万件)
に対して
Edyが使える店舗約20000件・月利用件数930万件
で、Suicaはショッピング機能では出遅れており、鉄道で使えるカードと言う大きなメリットが有るからこそカード発行枚数でそれなりのシェアを押さえる事が出来ています。
この様に電子マネー機能ではEdyに出遅れているSuicaですが、Suicaへの電子マネー機能付加に際して大きな役割を果たしたのはキヨスクを中心とする駅ナカ店舗での電子マネー採用です。此れが今度は逆になり、JRの利用客はSuicaで電車に乗り、同じSuicaで改札を出る前に駅ナカ店舗で買い物が出来るようになり、駅ソトのルミネでもSuicaで洋服等を買うことが出来る用になります。今度は「駅ナカ店舗がSuicaマネー導入に寄与した」逆の「Suicaの電子マネーが簡単に使えるJR東日本の店舗の利用を促進させる」と言う相乗効果が発揮される様になります。
此れは大手民鉄のビジネスモデルに無い新しいビジネスモデルになります。鉄道事業を軸にしてSuicaの電子マネーが接着媒体になり駅ナカ・駅ソトの店舗流通事業やホテル・観光事業が強く結びついて発展していくと言う新しいビジネスモデルは、「優れたインフラ資産」と「媒体としてのSuica」と言う2点の存在で今までの鉄道会社のビジネスモデルに無い物であり非常に革新的なものです。
ですから「優れた資産を生かした駅ナカビジネス」と「金銭的決済機能のSuica」の2つの存在が、JR東日本だけでなく民鉄企業のビジネスモデルに新しい局面をもたらす事は間違いないと言えます。今進んでいる物は「ステーションルネッサンス」と言う物だけでなくもっと大きな「鉄道ビジネスルネッサンス」と言っても過言ではありません。この
JR東日本のビジネスモデルが新しい境地を作り出す可能性
も否定できません。その点からも今後ともJR東日本のビジネスに注目していかなければならないと言えます。
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