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− 新千歳空港アクセスを見学して −

〜 鉄道と高速バスの競争の現状 〜



TAKA  2005年 10月 26日



 9月の23日〜25日の連休を使い、遅い夏休み方々4泊5日で北海道旅行に行ってきました。
 私自身北海道訪問は初めてで、何処が見所だか分からなかったのですが、色々な人の話を伺いながら「北海道の観光&交通事情見学」を兼ねて休養旅行に出かけてきました。
 幾つかには分けていますが、今回の旅行で見た事・感じた事をレポートしたいと思いますので御笑覧下さい。

 「今回の訪問行程」

 23日 11:22大宮→はやて11号→14:04八戸14:15→白鳥11号→17:31函館着
    市電で函館駅→湯の川(食事)→十字街と試乗→函館山登山→二十間坂周辺を散策

 24日 朝市見学→7:20函館→スーパー北斗1号→10:35札幌→ホテルにチェックイン後駅前のセンチュリーロイヤルホテルの展望レストランで食事
    13時頃の快速エアポート→新千歳空港(見学)→高速バスで福住バスターミナル→羊ヶ丘展望台見学→札幌ドーム見学
    (東豊線)→豊水すすきの→タクシー→サッポロビール園でジンギスカン食事→タクシー→大通公園でテレビ塔・時計台見学

 25日 札幌駅→すすきの(市電乗換)→電車事業所前→西四丁目(徒歩)→赤レンガ庁舎見学・雪印パーラー→札幌駅
    札幌駅→(札沼線)→新琴似→麻生→(地下鉄南北線)→北24条(バス結節見学)→大通→西四丁目(市電)→ロープウエイ入口
    ロープウエイもいわ山登山→ロープウエイ入口(市電)→中央図書館前→石山通(じょうてつバス)→真駒内(地下鉄・バス結節見学)
    真駒内→(南北線)→すすきの→ラーメンツアー(ラーメン横丁・五丈原・欅の3件)に出撃

 26日 札幌→(エアポート快速)→新札幌(JR・地下鉄・バス結節見学)→(東西線)→宮の沢(地下鉄・バス結節見学)
    徒歩→JR発寒→手稲→(エアポート快速)→小樽→(市内観光)→小樽→(エアポート快速)→札幌19:27→北斗星4号で帰京


 津軽海峡で本州と隔てられている北海道への主要アクセス手段はいわずと知れた航空であり、その為北海道の表玄関は 年間1800万人が利用 する新千歳空港になっています。新千歳空港は道外から来る人が多く通る重要ポイントで180万都市札幌の表玄関でも有り、新千歳空港の役割は北海道・札幌にとって非常に大きな物があります。
 しかし今回の旅行では「往復鉄道利用」と言う変則的なアクセス手段を取った為、札幌市の表玄関である札幌駅に直接乗り入れる事となり、隣接の南千歳を通過する事はした物の新千歳空港には寄る事が有りませんでした。
 その為今回は札幌到着後、北海道の表玄関の新千歳空港と北海道の中心都市札幌の間の動脈である「 新千歳空港アクセス 」をメインの鉄道とサブルートの高速バスの両方を使い見学してみる事にしました。

 (1)メインルートの鉄道アクセスの状況は?

 スーパー北斗1号で札幌到着後、センチュリーロイヤルホテル展望レストランで札幌の町並みを高層階から一望したあと、13時頃に札幌駅に戻り新千歳空港への「快速エアポート」に乗車し新千歳空港へ向います。
 JR北海道の快速エアポートは新千歳空港で 年間約860万人 (年間空港利用客1800万人の4割5分強)の利用が有る千歳空港アクセスのメインルートとなっています。
 快速エアポートは721系による転換クロスの高レベルサービス及び毎時4本の高密度運転及び最高速度130km/hの高速運転が行われており、そのうち1本/時は旭川からスーパーホワイトアロー直通で2本/時は小樽から直通運転と言う広域ネットワークが組まれています。又編成に1両μシートと言う指定席が組み込まれており、人口180万人と言う都市規模で関西の新快速並みのサービス・頻度・速度と関東のグリーン車並の着席サービスと言う極めて高いレベルのサービスが提供されています。
 快速エアポートに乗る為に、次の列車到着の7〜8分前に札幌駅5番ホームに昇ります。未だ発車まで時間が有るにも関わらず既にホームには次の快速エアポートを待つ人が1ドア数名位居ます。ターミナル駅といえども毎時4本の運転頻度が有るのに待つ人が多いと言うのは、空港アクセス需要を中心とした快速エアポートの利用は多い事の証明となるでしょう。その中でも比較的大きい荷物を持つ人もかなり居たので、やはり空港利用客がかなり多いのでしょう。
 ホームの快速エアポート待ちの客が10名/ドア程度にまで膨らんできた頃、小樽から直通の千歳空港行き快速エアポートが入線してきます。既に6両編成で座席がサラリと埋まる利用率ですが、ターミナル駅の札幌で乗客がかなり入れ替わります。しかし降車より乗車が多い状況で、札幌発車時点ではデッキに(721系は3ドア転換クロスだが北国仕様でデッキが有る)立客がチラホラ居る状況です。連休中日の13時半と言う時間で空港利用客は多いとは思えませんが、此れだけの利用客が居ると朝夕の空港利用客が多い時間は一体どうなるのでしょうか?
 乗降が終わると暫くして発車です。小樽発の快速エアポートは札幌で大体4分ぐらい停車します。かなりの乗客が入れ替わる事を考えると此れ位の停車時間が丁度良い感じです。
 
  [1]札幌に入線する快速エアポート


 快速エアポートは札幌〜千歳空港間で新札幌・北広島・恵庭・千歳・南千歳と停車します。その為千歳線沿線の札幌近郊の中都市である北広島・恵庭・千歳まで利用する人も以外に多く、特に北広島では毎時3本緩急接続しているので、快速エアポートが千歳空港アクセスだけでなく都市間輸送・近郊輸送にも十二分に力を発揮しており、その分6両編成でもかなり混んでいる感じです。
 それでも多少空席が有る利用率で、新千歳空港への分岐駅になる南千歳に到着です。
 南千歳では釧路・函館方面からの特急列車からの接続を考慮して、上り下りとも反対側のホームに入ります。新千歳空港自体「小樽→約70分,旭川・帯広→約2時間」で鉄道でアクセスしており、道央全域と道南・道東の一部を空港利用圏としてカバーしています。その様な素晴しい鉄道による空港アクセスも、南千歳での函館・帯広⇔新千歳空港間の列車間対面接続のようなソフト面での「きめ細かい配慮」により一層引き立っていると言えます。事実午前中利用のスーパー北斗でも見た目20名位の人が南千歳で下車し、かなりの人が向かいのホームで並んだ状況を考えるとこの様な「ソフト面での配慮」は非常に大きい意味が有ると言えます。
 南千歳で苫小牧・函館・帯広方面からの利用客を受けて新千歳空港への単線分岐線に入り、地下に潜るとすぐに新千歳空港の直下に有る新千歳空港駅に到着です。座席がほぼ埋まる位の乗客が降車して競って階段を上って改札を出て行きます。
 新千歳空港駅自体は6両+αの有効長の1面2線ホームと言う最低限の設備ですが、エスカレーター等の設備も整っており デンマーク国鉄と提携して設計した駅 だけ有って「赤」をカラーリングに上手く使い非常に垢抜けたハイセンスのデザインの駅です。JR北海道も新千歳空港開業時の新線建設では、会社の事情から考えれば「限られた予算で作らざる得なかった」と言うのは施設を見れば明らかです。しかしその中で「北海道の玄関口」だと言う意気込みで駅を造ったと言うJR北海道の意気込みが十二分に感じられる駅で好感が持てます。只この素晴らしいデザインが崩れてしまうかも知れませんが、キヨスクだけでなく雰囲気のいい物販店&軽飲食店が有っていも良いかなと感じました。

 (2)新千歳空港ターミナルビルを見学して

 せっかく新千歳空港まで来たのでそのまま札幌に帰るのも勿体無いので空港とターミナルビルを見学する事にします。
  新千歳空港概要   新千歳空港ターミナルビル概要
 屋上の展望テラスで飛行機の離発着風景を見学した後、新千歳空港ターミナルビルの中を見学します。流石に北海道の玄関口で1800万人の利用客が有る空港だけありターミナルビルも立派で中に入っている店舗も多く、まさに「一つの街」と言う状況で羽田のビックバードの様に「ターミナルビルに遊びに行く」だけでも十分満足できる内容です。
 特に2階のお土産フロアは北海道旅行の玄関口と言う事もあり充実しており(でも空港でカニをお土産に買うのは如何かと思うが・・・。因みに私は函館朝市で買って宅急便で送った)、又2階の出発フロアの上が吹抜になっており、その吹抜を囲む3階のレストランフロア・4階のラウンジフロア内の施設の充実振りは素晴らしい物が有ります。
 
  [2]新千歳空港ターミナルビル             [3]新千歳空港ターミナルビル内部風景
    

  [4]新千歳空港ターミナルビル4階の「キッズルーム」
 

 しかし空港のターミナルビルを見ると、輸送機関に「お客様を迎える施設」としての充実振りには驚くばかりです。私自身空港と言うとそんなには利用していませんが、羽田にしても新千歳にしても素晴しい空港ビルですし、レストランやその他の客用施設が非常に充実しています。
 今駅でも「駅ナカビジネス」等の駅での物販・飲食施設拡充の動きが広がっています。しかし長距離利用の多い新幹線駅でも空港ほど充実しているでしょうか?とてもYesとは言えません。新千歳空港ビルには20件以上のレストランや「北海道ラーメン道場」と言う様なラーメンミュージアムやバイキングレストラン等の飲食施設が充実しています。同時に人を飽きさせない様に航空関連の模型等の展示もあり、又子供連れに対応出来る様に[6]のキッズルームのような施設も有ります。この様な施設が鉄道駅には有るでしょうか?少なくとも私は見た事が有りません。
 今鉄道駅が目指している方向性はこの様な「多様性の有る施設」と言う形でしょうが、実情は大駅より大空港の方がかなり進んでいると言えます。この点は鉄道も見習わなければなりません。

 (3)高速バスアクセスの状況は
 
 新千歳空港見学の後の新千歳空港から札幌への帰りのルートはJRの快速エアポートと並ぶ公共交通空港アクセスである高速バスを利用することにしました。新千歳空港から札幌方面への高速バスは 北海道中央交通北都交通 の二社が共同運行しています。
 新千歳空港のバスアクセスは、札幌中心街からのバスだけでなく市街地周辺部の地下鉄駅からも空港アクセスバスを走らせている点が特徴的です。札幌市街地行きは国道36号線を通り東豊線福住のバスターミナルを経由しますし、宮の沢・大谷地・真駒内等の郊外の地下鉄駅に併設しているバスターミナルから空港連絡バスが出ています( 空港連絡バス路線図 )。経由地を多様化することで札幌・新札幌(15分毎)と琴似・手稲(30分毎)の4駅しか札幌市内にアクセスポイントが無いJR北海道エアポート快速に対抗する意図が見えてきます。
 今回は観光で羊が丘展望台・札幌ドームを見て回る予定にしていたので、札幌行きに乗車し福住バスターミナルで降車するルートにしました。

   [5]新千歳空港ターミナルビルバス停に入線する札幌行き(北都交通便)
  
 
 新千歳空港から札幌行きは15分間隔で出発しています。運行頻度は快速エアポートと変わりません。と言う事は1本当たりの輸送力は列車とバスでは比べ物になりませんので、バスの利用客は鉄道利用客よりかなり少ない位の量しか無いと言えます。
 私も早速乗車の為に切符を買ってバス停に並びます。バスの運賃は1,000円で鉄道の1,040円と殆ど変わりません。 本年4月の運賃改正から820円から1,000円に値上げ されました。本数は同等で所要時間と定時性は鉄道有利と言う状況で、運賃差が40円しかなくなるとバスの優位は発着ポイントの多様性位しかなくなります。果たして今後はどうなるのでしょうか?
 確かにバス停にバスを待つ人は殆ど無く、発車時間直前になってバスが入ってきても増えません。最終的にバス発車時には10名強の利用客でバスは出発していきました。15時ちょっと前と言う中途半端な時間でしたが10名強では採算は取れません。値上げ前の状況を知らないので比較して言えませんが、苦しい状況で有る事は明らかです。
 バスは新千歳空港を出た後、一般道で道央自動車道千歳ICを目指します。千歳ICまで約10分(距離にして3km位)ですが高速のICが空港に直結していないのは高速バスにとって大きなハンデです。しかしバスは道央自動車道に入ると快調に走ります。それでも最高速度120km/hで走る快速エアポートに対しては最高速度が100km/hに制限されている高速バスは所要時間で敵う筈が有りません。
 高速バスは手前の北広島ICで道央自動車道を降り国道36号線を走ります。国道36号線は渋滞までは行かないものの交通量が多く順調な走行とはいえません。国道を走る事を生かしてこまめにバス停が設定はして有りますが、新千歳空港〜福住BT間で降車客は有りません。国道36号線沿線〜福住BTが目的地ならいざ知らず札幌市街地が目的地で有る以上、札幌市街まで高速道を使ったほうが競争的には有利な気がします。ここら辺の真意は分かりませんが・・・。只福住BTでは私を含め3〜4名降車客が有り約3分の1の客が降りてしまいます。その現状から考えると今のルートでいいのかもしれません。
 この様な現状が示す様に、少なくとも高速バスが極めて劣勢な状況に置かれている事は間違いありません。その為に採算性改善を目指して運賃値上げを図ったと推察できます。しかしそれでも「採算性が取れるのか?」と考えると疑問です。12名乗車として12名*@1,000円では12,000円の収入にしかなりません。高速料金だけで1,800円掛かりそれに燃料費・車両の償却費・人件費が掛かる事を考えると、高速バス運営の採算性に関しては極めて厳しいことが分かります。中央バスと北都交通はどの様にしてこの苦境を脱出するつもりなのでしょうか?


 今回此処では新千歳空港アクセスについて取り上げましたが、新千歳空港自体は他の空港と比べて札幌の市街地から約40km離れており決して近くは有りません。しかしアクセスが充実しているので距離に比して遠いというイメージは有りません。
 事実新千歳空港は札幌からのアクセスで見れば距離に比して所要時間は短いです。(参考資料; わが国の空港アクセスの現状と課題 P28)新千歳アクセスは距離がほぼ同じの(新)広島空港よりかも20分程度短く、又新千歳より距離が近い関空より所要時間が短く運輸政策審議会の目標時間(約40分)以下になっています。
 この様な利便性の高いアクセスが構築されているのは、JR北海道の快速エアポートの威力が大きいと言えます。その事は鉄道(モノレール)アクセスが2ルート有る羽田や関空・都心から地下鉄が直結している福岡と並んで新千歳空港アクセスの鉄道分担率が40%(路線バスは約10%)を越えている事から明らかです。(上記 参考資料 P35)
 又JR北海道にとって見れば快速エアポートは「年間860万人の客が長距離乗ってくれるドル箱路線」であり、「その高速性で千歳線沿線に開発を広げた功労者」です。単純に考えて千歳空港アクセスはJR北海道に「860万人*1040円=89億4400万円」の収入をもたらしています(実際はもう少し少ないだろうが)。此れはJR北海道の 鉄道事業年間収益836億円 の1割以上に相当し、波及効果としての千歳線沿線からの利用客増( 5年間で約5%増 )を含めて考えれば、JR北海道にとって都市間輸送・札幌圏輸送と並ぶドル箱であり非常に大きい物であると言えます。
 この様なJR北海道快速エアポートの快調と高速バスの不振を含めた千歳空港アクセスの状況は非常に興味深いと言えます。空港アクセスに関しては成功・苦戦を含めて色々な例が有りますが、新千歳に関して言えば「鉄道アクセス」に関して「成功例」と言う事が出来ます。特にこの成功例については「速度」「頻度」「サービス」の3拍子揃ったと言う事が大きいと言えます。この新千歳空港鉄道アクセスの成功例は他の空港アクセスに関しても極めて重要な事ではないでしょうか?





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