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−首都高の「対距離制」新料金体系の提示について考える−
T A K A 2005年11月08日
皆様今晩はTAKAです。エルアルコン様の「
阪神高速の「対距離料金制」導入案への批判
」の記事拝読致しました。私は阪神高速を利用した事なく、主に首都高と東京近郊の高速しか利用しないので、二番煎じになりますが同時期に首都高速道路㈱から提案された「首都高速道路における対距離料金制のイメージ(
本文
)(
参考資料
)」に絞り、自分の利用例を踏まえ「対距離料金制」について考えを述べたいと思います。
●基本的な考え方
私は「対距離料金制」導入に関して正しいと思うし理解は出来ますが、「長距離の大幅値上げ」に関して承服できないと言えます。
今の均一料金制は「現行状況の中でのベターな料金体系」だと思います。しかし良く利用する中央高速国立府中〜首都高永福間で存在する「永福→国立府中は特定区間300円+中央道600円=900円」「国立府中→永福は首都高均一料金700円+中央道600円=1,300円」と言う様に「同じ区間でも料金が違う」「距離が短いのに料金が高い」等の矛盾有るのも事実で、「対距離制料金」はこれらの矛盾を解消できるよりベターな制度で有ると言えます。
その点から考えればETC普及による多種料金設定可能化による「対距離制」移行は総論で賛成ですし、その為の首都高ETC専用化も(私は未だETC未装着)「時代の流れなのかな?」と感じています。
但し「値下げだけする事は出来ない」「対距離制で有る以上均一料金+αの区間が出るのは必然」と言う事は理解しつつ、現在首都高速提示の「対距離料金制」の各論に関しては「問題有り」と感じています。
●何が一番問題か?
では何が問題なのか?やはり此れはエルアルコン様等も御指摘の「遠距離区間の値上げ」に有ると言えます。
基本的には上記「イメージ」内の基本設計にも示されていますが「安くなる客と高くなる客を半々にする」と言う考え方が根本に有る事が原因になっていると言えます。具体的には基本設計では平均利用距離を18kmと設定し、そこに平均料金770円を設定しています。此処に問題が有るといえます。
その問題とは「平均料金が均一料金間をまたぐ事を前提にした770円に設定」している点と「18kmと言う平均距離では完全に通過交通に不利になる」と言う点が問題です。どちらも「増減ゼロになるように設定」した中で均一料金制を対距離制に変更すると言う考えが根本に有るからだと言えます。
今の首都高の交通は「周辺⇔都心」「高速道路⇔都心」「高速道路⇔高速道路」と言う3つの流れを担っていると言えます。この中で「対距離料金体系」は都心を貫く通過需要(現行均一料金700円で行けるが、通行距離18kmは大体上回る)は、環状高速道路が未発達な東京ではトラック需要を中心に無視できない量が存在しています。 首都高提示の「対距離料金」では「均一料金より高い平均料金」「平均距離より長い通過距離」と言う2点で都心通過需要を狙い撃ちする料金制度です。此処に最大の問題が有ります。
●「対距離料金制」が導入されたらどの様な行動パターンを取るだろうか?
では利用客は首都高速提示の通りの「対距離料金制」を導入したらどのような行動を取るでしょうか?私は二つの「提案料金体制に従わない利用者の行動パターン」発生すると想定できます。
(1)意外に「短距離利用客」が増えない?
「対距離料金制」導入のメリットとして首都高は「均一制で損な短距離の利用客が増える」と言っていますが、私は意外に「その効果に?」であると思っています。
料金が安くなるのですから利用客が増える区間も有るでしょう。しかしそこに単純には行かない盲点が有ると考えます。なぜなら「首都高の渋滞」が短距離客移行へのネックになると考えます。特に1号線・3号線・4号線・7号線に関しては直下or並行に高規格で比較的流れる幹線道路(第1京浜・国道246号線・国道20号線・京葉道路)が有ります。これらの道路の場合「渋滞道路」ですが「上も下も混んでいる」状態で「下が比較的立体交差が整備されている」等の状況の為、平行一般道路の方が早い場合が多く有ります。この様な区間では幾ら料金を下げても移行は進まず「短距離利用客増」は「絵に描いた餅」になる可能性が有ります。
同時に京葉口→錦糸町・永福→中央道等の区間で採用されている「特定料金」が今でも有るため、「対距離料金体系」で利用が進むと言われる末端区間短距離利用のハードルは、すでに特定料金で低くなっています。その様な区間(意外に需要が多い)では対距離料金体系を導入しても交通量は檄的には増えないと考えます。
この様な状況から考えると、対距離料金体系を導入しても短距離利用客は大幅には増加しないと考えます。
(2)長距離客は逸走していく?
又長距離区間の料金が上がる場合、長距離客は逸走していく可能性が有ります。それはやはり混雑と関係する区間で「高速は渋滞する」が「一般道が比較的流れる」区間及び夜間のトラックの都心通過需要です。
首都高に関しては現在構造的な問題から「都心環状線を通らなければならないルート」が多すぎる為、都心環状線を通り「東京を通過する場合or東京の端に行く場合」はこの大渋滞を突破しなければなりません。その為一部の区間では「高速より一般道が恒常的にコストパフォーマンスが高い」状況が有ります。
具体的には今の均一料金700円でも「千鳥町〜北池袋」等の首都高速と一般道の時間差が1時間以上かかる部分に関しては、かなり首都高利用のコストパフォーマンスが高く、今でも一般道は殆ど使いません。この様な区間では多少の料金値上げでも受け入れるでしょう。
しかし「錦糸町〜北池袋・錦糸町〜新宿・木場〜北池袋・上野〜新宿」等の一般道(靖国通り・蔵前橋通り・昭和通り・永代通り等)が比較的空いている区間を走り、しかも高速出口と目的地が多少はなれている場合(高速出口と目的地が直近と言う例は意外に少ない)値上げしたら、余程急いでいない限り利用客が一般道に逸走する可能性も否定できません。
又「東名高速・中央高速〜池袋・目黒」等の直線距離より遠回りする区間の場合、都心環状線経由や首都高その物の利用を嫌い、只ですら混雑する環状道路(山手通り・環状7号線・8号線)に通過流動等が流れて行く可能性が有ります。
それに加えて都心を通過する「高速道路⇔高速道路」の通過需要のかなりの部分は、料金に対して非常に敏感なトラック需要です。ましてやトラックは一般道が空いている夜に多く走ります。この様な状況で「対距離制導入」で大幅な値上げが実施された場合、トラックは夜間で時間差が少ない一般道に逸走する事は確実で有ると言えます。
こうなると夜間の一般道にトラックが溢れる事になり、信号でGO&STOPが多い一般道なので高速道を走るより確実に環境への負荷は高まりますし、騒音等で一般道近接の住宅地等の環境も悪化します。(高速道より一般道の方が道路の環境対策は遅れている)特に(首都高を除く)環七以内都心部夜間大型トラック通行禁止の土曜日の夜は環七がトラック街道に変身してしまい、環七沿道地域は「騒音と排ガスの土曜日の夜」になってしまう可能性が有ります。
これらの区間・利用客では「対距離料金制」導入により首都高速から逸走していく可能性はかなり有ると言えます。
●では如何すれば良いか?
では一体如何すれば良いのでしょうか?
私は少なくとも首都高が提示している「対距離料金体系」導入は必要と考えます。その点で言えば「総論賛成」です。
確かに「千鳥町〜北池袋」が「高井戸〜永福」と同じ700円と言うのは明らかに可笑しい話ですが、都心をまたぐ区間等の遠距離料金が高すぎるのにも抵抗が有ります。
ですから「長距離利用に関しては逓減料金導入」「少なくともETCで合理化される分値下げを考慮した料金体系」と言う2点が「対距離料金体系」正式導入に対して最低限必要で有ると言えます。
具体的には最大でも現状+2割〜3割程度の値上がりで押えないと利用客(特に長距離客・トラック客)に抵抗されるでしょう。(最低料金は今の特定区間料金で良いと思います。イメージ的には普通車で短区間300円位・各高速接続点〜中央環状線450円程度・各高速接続点〜都心環状線600円程度・東京区間両端間900円位・東京〜神奈川両区間最遠区間1400円位なら値上区間でもグロスで我慢できるかなと思います。)此れぐらいで押えられる料金体系を考えるべきです。
その「実質的値下げ」の原資として、「値下げによる需要誘発効果」と「ETC化による合理化効果」を考慮すべきです。これらを考えれば今回提示の「対距離料金体系」より安くなり、上記指摘の(特に通過需要敬遠に起因する)問題も解消できるでしょう。
同時に対距離料金体系導入時にETC未導入車に対しては均一料金を残す場合(締め出すなら別だが)均一料金の値上をしても良いでしょう。又車両区分を今の2種類からもっと多くしても良いと思いますし割引を増やしたりマイレージを導入しても良いと思います。それらの「料金・サービスの多種類化」も同時に考慮すべきでしょう。
又上記の料金体系上の問題だけでなく今の首都高のインフラ面の最大の問題である、中央環状新宿線未完成の為西部地域で「都心環状線を経由しないと縦の移動が出来ない」故に必要以上に長距離を走らせる道路網で有ると言う問題が有る以上、それを解消する為に中央環状新宿線完成時まで、ネットワークが不十分な結果で不利になる対距離料金体系の導入は控えるべきでしょう。
逆に首都高ネットワークの曲りなりの完成を見る首都高中央環状新宿線完成時が、「大幅値下げをしない対距離料金体系(やはり長距離客への配慮は必要)」導入の機会で有ると言えます。今までであれば開通時に「均一料金値上げ」が当然の様に行われるでしょうが、建設に伴う償却費が増えるので、その時に大きな負担を伴わない「償却費によるプラスと合理化・需要増によるマイナスの相殺ゼロベース料率での対距離料金体系」導入が一番理想的ではないかと考えます。
その様な条件下であれば、私は「対距離料金体系」の導入は良いと思います。少なくとも「対距離料金体系」導入は総論として間違えて居ません。しかし今や値上げに対して極めて強い逆風が世の中に吹いている以上、今回の提案のような「安易なプラス・マイナスゼロ」の料金改定を提示すべきでは有りません。火に油を注ぐだけです。
実質的には「料金の平行移動や値上げ」内容の料金改定でもしっかりした理由・根拠が有れば世の中から指摘・非難を受けないのですから、タイミング・内容を十分考えて動くべきです。首都高速の場合は何かと目に付く民営化直後の今の時期ではなく、インフラが劇的に改善する「中央環状新宿線」導入時にあわせて「対距離料金体系」導入をする等の配慮をすべきです。そういう意味では今回の提案は悪くない提案を誤解させる好ましくない提案方法ではなかったのかと思うと同時に、今後のこの問題の議論の行く末に大きな危惧を抱きます
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