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鉄道はもっと巧く対応できたはず



TAKA  2007年10月 6日





 時間があればF1日本GPの輸送状況見に行きたかったのですが、残念ながら見学には行くことが出来ませんでした。ですから私も「新聞記事+α」のことしか知りませんが、ちょっとコメント致します。



・小田急線は利用されたのか?

 実をいうと今回のF1輸送で「小田急が何時臨時列車を運転するのか?」と興味を持ちながら見ていました。結局のところF1観客輸送のメインルートの小田急では、新松田駅での駅員増員等の多客対策は行われたものの、輸送力増強の臨時列車運転はロマンスカー・急行両方とも行われませんでした。

 それは「元からそれなりの輸送力がある」という側面もあり、駅混雑に対応する「駅員増強」だけで対応可能と判断したことがあるのでしょう。とも様の記事にあるように、急行列車はそれなりに利用されたようですが、驚いたことにロマンスカーはさほど利用されなかったようです。

 小田急のロマンスカーは、朝の「はこね1号・3号」は新松田に停車しますが、この2本の特急は私が小田急電鉄のHPで2〜3日前に確認した段階でも満席になっていませんでした。満席になっていたのは御殿場線直通でアクセス駅の駿河小山・御殿場に停車するあさぎり1号だけでした(参考: 小田急ロマンスカー土休日時刻表 )。確かに観光には早い時間帯のロマンスカーですが、これだけのイベントで新松田利用指定のチケットを1万枚も売っていて、御殿場線直通が満席なのに本線のロマンスカーに空席ありというのは疑問です。

 F1の観客は(3日間通し券ですが)自由席でも1万円以上するチケットを買って行く人達ですから、高額であってもロマンスカーから満席になっていくかと思いましたが、実際は必ずしもそうではなかったようです。では新松田駅に利用駅を指定された「1万人の利用客」は、果たして皆急行を利用したのでしょうか? この人達がどのように新松田まで来たのか? 小田急を利用しなかったのか? 私にとっては疑問です。この事の解析が、富士スピードウェイの最大のアクセスルートとして指定された小田急線の来年のF1輸送への対策として必要なのかもしれません。



・もっと観客を上手く輸送できなかったのか?

 今回のF1輸送ではチケット販売の段階で小田急線・大雄山線・御殿場線・富士急行線・新幹線の各駅に利用者を計画的に割り振っていましたが、始めの段階からもう少し上手く鉄道会社と提携して輸送できなかったのか?という疑問は感じました。富士急行・JR御殿場線に関しては臨時列車運転・一般車両増結等が行われていましたが、富士スピードウェイ自体が「東京から遠い富士の裾野の御殿場」という立地だったのですから、「鉄道会社とのタイアップの上での指定臨時列車運転」を行って、「チケット+臨時列車列車指定席」というものを売り出すなどして、東京からのアクセスを考慮しても良かったのではないか?とは感じました。

 線路容量や各種の調整は別にして車両的にだけ見れば、小田急は「はこね1号」の運用をRSEから他の車両に替えれば、あさぎり1号の他にもう1本「新宿〜御殿場直通特急」を運転する事は可能でしたし、JR東海は 臨時特急「日本GPごてんば号」 の車両を使えば東京〜御殿場の特急を運転できたと思います。土曜日にはJR東日本〜富士急行間で臨時の「 ホリデー快速河口湖91号 」が運転されていましたが、富士急行線内での調整を上手くすればこのようなアクセス用の指定列車を増発できたと思います(車両面から見ただけなので実現できるかは、一概に言えないが……)。

 チケット+指定席で販売すれば臨時列車を運転しても需要は確定していて、鉄道会社的にも「車両運用を変更したり波動用車両を集めてきても十分ペイする」ことになり、全体の利用客から見れば「焼け石に水」のレベルですが、アクセス手段の改善に寄与したということが出来るのではないでしょうか? かような今年は行われなかったアクセス輸送体制についても、手法として「このような考え方もある」ことを、今後の課題として運営者・鉄道会社間で考えても良いのではないでしょうか?



・私の感じた雑感

 実際問題富士スピードウェイは非常に不便な場所にあります。この近くに私の母方の親戚の実家があるため何回か行ったことがありますし、この近くのゴルフ場に行ったこともありますが、電車でも車でも東京から行くのに「一苦労」という場所です。来年またF1日本GPが開かれるにしても、富士スピードウェイの不便な立地は解消できる訳ではありません。また周辺の鉄道・道路環境も1年間で大幅に改善することは不可能でしょうから、実際のアクセスの主力は「今年使った近隣駅からのバス輸送」ということになるでしょう。

 「10万人以上の人達が集まるイベント」の輸送は非常に難しいものであるといえます。この3日間のために「御殿場線や富士急行線の輸送力増強を図る」ということも、時間的にも困難であるといえますし、費用面に関しても「損を覚悟でトヨタが金を出す」ということがなければ、非常の困難であるといえます。このようなことが来年のF1開催までの対策として現実的でないことは、残念ながら明らかであるといえます。その現実の中で如何にしてイベント対応の輸送体制を組むべきか? 今後とも富士スピードウェイでF1を行うのであるならば、考えなければならない避けては通れない問題といえます。それは今年の混乱が図らずも明らかにしてしまったといえます。

 イベント会場への輸送力という点では、やはり今まで伊勢鉄道が頑張って輸送力を増強して来た鈴鹿サーキットの方が優れているといえます。富士スピードウェイ(トヨタ)は「これだけ膨大な観客を上手く運べない」という点から富士スピードウェイでのF1を返上して、F1日本GPはホンダグループの鈴鹿サーキットで行うことも考えなければならないのかもしれません。

 観客(多くは車に対して特別の感情を抱く人達)から『「トヨタファンの特別待遇」とともに、観客からのトヨタへの恨み節とも言えるような批判』というようなことが出てくるのでは、トヨタグループの企業イメージ的にも好ましいものではありません。トヨタはF1に巨額の資金を投じても成績が残せず、自分の系列のサーキットでF1を開いたら、輸送で混乱してしかも自社のファンにも悪い感情を抱かれたとなったら、企業的にはF1は損失の方が多くなります。

 観客輸送だけでなく色々な側面で、今回の富士スピードウェイでのF1開催は「失敗」だったのかもしれません。今回の失敗を富士スピードウェイ・トヨタを含めて、関係者全体で考えて可能な限りの対策を練るべきなのかもしれません。





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