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ハードとソフト〜異常時対応への良否

 

Tom  2004年10月31日

 

 

 新潟県中越地震への代替交通についてはいろいろな所で議論されていますが、気が付いた点を記させていただきます。今回の交通系の被害が近年の地震被害の中では阪神大震災に次ぐレベルの被害を受けており、経験の少なさなどの面から対応に若干の遅れが生じたことはまあ許容範囲と思います。

 対応が早かったのは航空会社で、震災翌日にはJAL/ANAが各1往復、その後は大体両社共4往復前後の臨時便を飛ばしており、機材繰りなど難しい面もあると思いますが出来うる限りの対応をしたと思います。

 その航空会社についても、最初の2日位はサイトを見ても臨時便がどうなっているのか良くわからない状況でしたが、これも阪神大震災以来のことと考えればまあ仕方のないことかと考えます。これを機に震災発生時の対応マニュアルを見直し、臨時便・臨時路線の告知を速やかに自社サイトなどに行えるようにすれば良いと思います。

 問題が散見されたのはバスと鉄道です。

 

 まずバスですが、震災2日後にようやく磐越道経由での高速バス運行が決まりましたが、なぜ翌日の磐越道開通と同時に走らせることができなかったのか? バスの場合、インフラは道路とバスがあれば動かせるはずのものであり、どこか道路がつながっていれば走らせることが出来るものです。

 もちろん、震災直後は道路の安全が確認されねばなりませんし、まさか長距離バスに小型のものを使うわけらも行かないでしょうからどんな道路でもいいというわけには行きませんが、磐越道という対面交通区間はあるにせよそれなりのインフラがあったわけです。

 特に新潟は日本海側の一大中心地であることを考えれば何らかの移動手段を速やかに提供せねばならない所。であるならば、本来の新潟〜池袋便乗務の人間・バスを磐越道経由に速やかに貼り付けて輸送再開すべきところであったと考えます。

 また、バス会社はJRや航空会社に比べて中小規模の会社である為やむを得ない所はありますが、西武バスでさえ運休や迂回運行について最新情報の自社サイトへの掲示が遅かったことは否めません。

 今回の経験を生かし、地震だけではなく風水害時を含めた被災時への対応(迂回運行の速やかな実施・自社サイトへの情報のアップ)を行って頂きたい。これは今回の当事者たる会社だけではなく、その他のバス会社についても迂回運行の可能性など常に検討しておいてほしいものです。

 但し、福島県のバス会社福島交通が早い段階で郡山〜新潟線の増便に踏み切ったのは評価できると思います。

 

   次に鉄道ですが、これは先にエル・アルコンさんが書かれていることと被りますが、特にソフト面で気になる点が多すぎます。ハード面、特に磐越西線・米坂線経由での迂回列車運転に関しては、バスと異なり列車はすべての車両がどこでも走れるものではない以上、必ずしも満足のいくものではなくてもやむを得ないと考えます。

 いつ起こるかわからない地震・風水害の為にこれらの線区に常に余分にディーゼルカーを配置するわけにはゆかず、また、ディーゼルと電車では免許が異なることから運転士の問題も発生します。実際には当該区での予備車を増結して走らせる程度の対応しか出来ないということは理解できます。

 但し、JR東日本の場合はまだ非電化線区も多く、また電化幹線系に何か問題が生じた場合非電化線区を使った迂回運転の必要が生じる可能性もあるだけに、本社にて共通予備車を持つなどの対応があっても良いように思います。

 ディーゼル車で共通予備車を持っておけば、交直流電化区間でも運用が可能ですし、電化区間で電気設備の復旧が遅れた場合でも使えます。繁忙期には臨時列車に使うようにすればあながち無駄にもなりますまい。JR東日本だけの所有とするのではなく、各社で保有し有事の応援用としてもいいかもしれません。

 関東地区などほぼ電化している区間での気動車免許保有運転士の確保の問題などもありますが、運転士にもいろいろな経験を積ませるべく一部の人には複数の免許を持たせることで対応は可能かと思われます。JR東日本の場合はソフト面の中でも旅客への案内、運賃及び臨時列車の運行ダイヤにやや難ありと考えます。

 旅客への案内については別項でエル・アルコン様が触れている通りですが、自社のみでの迂回措置が不十分であった段階でも磐越線・米坂線まわりの鉄道線しか案内しなかったこと。実際には磐越西線経由より一番速い高速バス・郡山〜新潟線に触れておくべきだったのではないか。

 ライバルの利用を促すものという思惑も働いたのかもしれませんが、平常時とは違う対応が求められる局面としてはあまりにお粗末。磐越西線で臨時特急がバンバン走っているのならばともかく、臨時列車も出ていない状況ではひどすぎます。

 ちなみに、11/3時点でJR新潟支社のサイトにようやく他社情報(新潟〜郡山高速バス)……とはいってもリンクだけですが、掲示されました。バス会社も臨時ダイヤである為、直接案内するよりは新潟交通へのリンクとした方が親切ではありますが、もう少し高速バスのリンクの貼り方はわかりやすいようにした方が良いと思います。磐越西線にはわずかしか臨時列車も設定されていないのが現状ですし、しかも遅いわけですから。

 

 運賃・料金面について、まず迂回乗車区間について上越線経由の乗車券・特急券以下にすべきということについては全くエル・アルコン様と同意見です。

 これはJR東日本のサイトをみた瞬間に何故?と思ってしまいました。輸送約款の定め以前に、JR東日本は完全民間企業なのですから、CS(顧客満足度)という視点をもっと持つべきでしょう。より不便な経路、それも自社線に誘導するのに、より高い運賃・料金の負担を求めるという意識自体、CSの観点がないと言わざるを得ません。

 但し、上越新幹線の高崎〜越後湯沢についての特急料金の収受、改善は要するが、やむを得ない面もあると考えます。自動車の場合、緊急車両の指定がなされているものに対し公安委員会の証明書で確認し減免という措置が取れます。これらの中に不要不急の者が紛れ込む余地はありません。

 一方で、新幹線の特急料金を一律免除にすると、不要不急の者までも紛れ込む公算が高いです。むしろ、対象者を緊急対応に携わる者、ボランティア、及びこの区間の定期券を持っている者に限定し、それらの者だけ減免するというのが正道かと思います。

 緊急対応者については公的証明書、及び復旧に携わる企業の発行する証明書などでの確認、ボランティアについては現地到着確認時点で払い戻し、在来線定期券保有者については事故発生時点以前に購入した者とすれば不要不急者はほぼ排除できるかと思います。対象を絞り減免する仕組みを考えるべきかと思います。

 ボランティアといえば、会社再建途上の東日本フェリーがボランティアや被災者対象に運賃の減額を行っていますが、JR東日本もその程度のことはやっても株主は怒りますまい。むしろ当然の社会貢献という評価を得られるものと思います。

 エル・アルコン様の主張については分からないではないですが、それでも高崎〜湯沢間の代替利用について一律無料ということについては疑問を感じます。理由のひとつはエル・アルコン様が述べられている通りいわゆる「ヲタ」の跳梁跋扈ですが、もうひとつは本来この区間で新幹線を利用する顧客について料金を収受しないことに合理性があるのか、ということです。

 周知の通り、上越国境を在来線で越える流動はほとんどないのが実態です。であるならば、災害対応などで緊急対応が必要な客について、また数は少ないかもしれませんが定期券などで定常的に利用している旅客についてのみ特急料金を免除し、それ以外の旅客については料金を収受することの方が合理性があると思います。

 迂回ルートの輸送力増強について、特に信越ルートについてはエル・アルコン様のおっしゃる通りでしょう。磐越西線などについては前述したとおり、非常時対応での気動車を配備し、その分の経費・資産については税金の免除等を考えるべきと思います。

 

 臨時列車のダイヤについて、これは長野〜新潟間運転の快速列車についてですが、運転時間の面でもう少し何とかならないものかと。

 臨時列車で思い出すのは有珠山噴火の際のJR北海道の特急の山線迂回ですが、あの時は一部定期列車を運休・バス代行にしてまで特急のダイヤを確保したものです。勿論、函館本線山線の沿線とでは人口密度も違い、運休までするといろいろと混乱を来たす公算が高いですが、多少の定期列車の時刻変更位は対応できないものか?

 あのダイヤはただ、信越線の定期普通列車のスジを延ばしただけで、あれではただ列車が直通で新潟までいっている、という以上の意味はありません。単線区間がほとんどという事情はあるにせよ、定期列車の時刻をいじってでも、多少は快速らしい快速として走らせてほしいものです。

 JR東日本の震災へのソフト面での対応については、大都市圏での営業面での積極性と比べるとまだまだと感じざるを得ない現状と思います。

 

 

 

 

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