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小説風「モバイルSuicaと新幹線」
Tom 2008年 3月30日
東日本地区ではJR東日本が派手にCMを行っているように、ついに 3月15日から新幹線で「モバイルスイカ特急券」が使えるようになりました。先日、仕事で高崎へ往復した際にモバイルスイカを使ってみましたので、使用した感想について小説風に述べてみたいと思います。(復路は普通の特急券でしたが実際のトラブルも少々)
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3月26日夕刻、千葉県で仕事をしていた私Tomは、お客様との交渉を終え代理店の営業マンと共に本八幡駅へ向かっていた。そこへ一本の電話が。
「もしもし、Tomさん? ケンケンですけど明日朝高崎に一緒に行ってもらえませんか。R社さんが今月はどうしても明朝しか時間がとれないと言うんですよ」
Tom「良いですよ。で待ち合わせは何時に?」
ケ「 9時に高崎駅ということで。」
一瞬 9時かよ、とも思ったが、ケンケンも忙しいことは重々承知している。私は「わかりました。じゃ、現地待合せにしましょう」と電話を切った。
9時高崎か……。朝方だから出張サラリーマンも多いな。東京駅からだけど、さっさと並ばないといけないな。待てよ、そういえば「モバイルスイカ」というのがあったな。今月頭にJRからのメールでアプリをバージョンアップしてあったっけ……。
おもむろに携帯電話を取り出して操作をする。なにやら最初に注意事項がずらっと出てくるが、さくっと流し読みして確認ボタンを押す。すると購入メニューが現れるが、ここは時刻並びに乗車駅、降車駅を指定し、座席指定の有無を指定してやると次は列車選択へ。あさまは混むし、あまりギリギリでは何だからとMAXとき 307号を指定する。
次に普通車かグリーン車の指定だが、しがない課長の身では会社はグリーン料金など出してくれるわけがないし、迷わず普通車を選択する。次は座席指定だ。MAXだけに一階席/二階席を指定できるが、久々の上越新幹線だし窓側にしてみようかと窓側を押す。すると……E席は満席。まあそうだろうと次はA席を指定。なんだA席も満席かよ、じゃあ三人掛通路側だ……これも満席?
私は悪い予感がした、もしかしたら三人掛真ん中のBしか空いていないのか? 祈る気持ちでD席を試してみると、購入内容確認の画面が。MAXとき 307号(二階席) 7号車25番Dと確認できた。そこで購入ボタンを押し購入完了とする。
買えてしまえば簡単なものだが、A/C/E席については満席なら初めから選択できないようにすれば余計な手間がかからぬものを、とふと思った。だが、時間がある時ならばシートマップをみながら指定ができるようだから時間がある時はそうすれば良いかと、妙に納得をしたのであった。
ここでふと思い出したのだが、この特急券はこのままではすぐに使えないのである。モバイルスイカは、特急券情報は一枚分しか保管できず、また一枚だけ買ったか複数枚買ったのかを問わず、「受取」という操作をしなければいけないのだ。受取の操作を面倒だと思いつつも、以前同じように携帯電話でも乗れる指定制の乗物のことを思い出していた。
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指定席にチケットレスで乗れる乗り物としては航空業界が一足先に導入している。私のよく利用しているANAは昨年末から「skip」と称してEdy ANAカードか携帯電話、もしくはEチケットでの搭乗が可能になっている。これはこれで、JRとは違い携帯電話以外のICカードでも使えるというスグレものだ。また、ひとつの予約として乗継便まで予約すると、ひとつの携帯電話をかざすだけで通れてしまうのだ。何も知らなければ、おそらく、なぜJRはANAのように同時に複数のモバイルスイカ特急券を落とせないのかと思ったことだろう。
実はANAの場合、離島便などであり得る「A→B→A→C」という利用にはICカードや携帯電話では対応できないのだ。普通、そんな異常な使い方はしないと思いがちだが、例えば東京から出張した後、那覇で宿泊した翌日宮古か石垣往復後、そのまま東京へ帰るという利用法には対応できず、この場合はEチケットという紙を発行してもらい、そこに印字されている二次元バーコードで通過しなくてはならない(東京から宮古・石垣へ往復那覇乗継日帰りという出張もあり得る)。それを知らずにケータイで通ろうとして通れず、搭乗口で「さらしあげ」を食らった経験を思い出したのであった。
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JRはチケットレスで先行したANA等の事例を研究した上で今回のようなシステムにしたのであろう。新幹線の場合、飛行機以上に同一ターミナルから複数回の乗車ということはあり得るからだ。
時間順という処理方法もあるだろうが、JRのシステムは列車を指定しなくても良いため、例えば仙台から盛岡と東京の列車未指定の特急券が2枚ダウンロードされていたら、機械はどちらの特急券で乗車か迷うだろう。一利用者としては、2枚ある場合は降車駅で判断するようなロジックが組めないのかと勝手に思うが、システム的に難しいのかもしれない。
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翌日、私は東京駅へ向かうため最寄りのJR駅へ向かった。定期もモバイルスイカだし、いつものように携帯電話を改札にタッチしてホームへ。そこで私は一瞬、列車の座席番号を忘れていることに気がついた。スイカアプリを操作し、確認する。が、受取特急券を見ただけでは座席がわからない。
一瞬どこを見ればわかるのかと焦るが、モバイル特急券番号がリンクを貼ってあるような形になっているのに気づく。クリックしてみたら、案の定座席番号など特急券情報が表示できた。この辺はもっとわかりやすくしないと、年寄りにはわかりにくかろうと、ふと思うのであった。
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東京に着き新幹線ホームに向かうが、乗換改札脇のみどりの窓口は長蛇の列。これを見て、私はどこでも買えるモバイルスイカ特急券の利便性に改めて感謝した。ホームには目指すMAXとき 307号が入線しており、掃除終了後乗車。この時間の東京駅は上りの「通勤新幹線」が多数到着しており、この列車も例外ではなく「MAXたにがわ 400号」の折り返しだ。
清掃中、他のホームを見ると満員の通勤客を乗せた新幹線・あさま 500号が到着する。感心している間もなく、ドアが開き乗車。車掌のアナウンスによると、「本日の指定席は全て事前発売済み」とのこと。発車間際になっても空席が目立つのになぜ、と思ったが、この後大宮で満席となり事情を理解した。春休み中でもあり、行楽客も多いのであろう。12両のMAXときでこの乗りがいつも続くようならば上越新幹線も利益がガンガンあがるだろうに。
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さて、所用を終え、今度は別の客へ急遽向かうことになったため高崎駅へ。ケンケンも一緒であり、もともとケンケンがスケジュールを考えていたため事前に列車を予約する時間もなくそのまま高崎駅へ向かった。指定席券売機で自由席特急券を購入、乗車券はスイカがあるからいいと購入せず。
問題はその直後に起こった。
ケンケンは先に改札を通過、私は当たり前の如く特急券を通し、携帯電話をタッチする。しかし、改札は開かず赤ランプが点灯する。もう一度別の改札機にトライ、結果は同じ。そこへ係員が飛んでくる。
「お客さん、スイカは定期券か、新幹線区間指定の定期券ですか?」
私「定期ではないが、ここは首都圏スイカエリアだから使えるんだよね、新宿まで行きたいんだけど」
JR係員「申し訳ありませんが、スイカはモバイルスイカ特急券か新幹線定期等でしか使えないんです」
何てこった……。JRは「モバイルスイカで新・幹・線」と大々的に宣伝しているからてっきり使えると思うじゃないか。しかし、乗るべき新幹線は迫っている。
JR係員「とりあえず有人改札を通って、乗車券は降車駅で購入して下さい」
私は指示に従い有人改札を走りぬけ、たにかわ号が入線してきたホームに駆け上がったのだった。
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私のモバイルスイカ特急券初利用はこんな感じでした。モバイルスイカ自体の購入は慣れればさほど難しくはないのですが、ITにうとい人にとっては階層がどうなっているか、イマイチぴんと来ない部分があると思います。また、座席指定で列を選べるというのはいいのですが、既に売り切れになっている列は表示しないようにするなど、もうひと工夫が必要でしょう。
もうひとつ、スイカは一般乗車券としては新幹線では使えないのですが、これだけ「スイカで新幹線」と宣伝するならば、せめて紙媒体では「モバイルスイカ特急券及び新幹線定期券以外のスイカでは一部を除き新幹線の乗車は出来ません」位の表示はしてほしいと思います。また、できれば首都圏エリア内での新幹線乗車の場合はスイカを乗車券として使えるようにしてほしい。
まだ現行フェリカチップの制約があるのでしょうが、フェリカがバージョンアップと、もう少し多様な処理ができるようになれば是非対応検討をお願いしたいところです。
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