このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





また行き詰まった東日本フェリー



Tom  2008年 9月 6日





 東日本フェリーが燃料油大幅値上がりの影響と高速船2隻導入による赤字の為、函館−青森、函館−大間、室蘭−青森の三航路のフェリー運航事業から十一月末までに撤退する方針を固めたそうです。

    北海道新聞記事

 青函航路自体は道南自動車フェリーと貨物主体の青函フェリーが残りますし、現東日本フェリーの青函航路の内在来船2隻は道南自動車フェリーに移管する為在来フェリーには大きな影響はないのですが、それでも高速フェリーに加え大間−函館や青森−室蘭は代替運航業者のメドが立っておらず、地域に影響を与えそうです。

 東日本フェリーと言えば、以前存在した同名の会社が一度倒産し、リベラグループによって再建を進めていたはずです。それがなぜ、実質上の再破綻に等しい航路整理を招いたのか。

 この会社の最大の問題は経営とマーケティングだと思います。そもそも、青森−函館という東北地方と北海道地方の端にある、地方の中でも中心都市といえない所の相互間で、多少お金を払っても早く移動したいという需要が大型高速船2隻分もあるのか、きちんと分析出来ていなかったということが問題です。

 原油高騰については、1バレル140ドルという水準にまで到達することは誰も予想していなかったので割引くとしても、新興国の需要急伸で100ドル前後まで行くことは見えていたのだから、当然そのレベル迄原油が上がっても十分利益が出る水準の旅客確保が出来ることが前提であるべきです。

 もうひとつは運賃設定の問題。高速船の運賃について、東日本フェリーの運賃は以下のように設定されています。

   エグゼクティブ 10,000 円(但し9/1から 13,000円)
   ビジネス     6,000 円(但し9/1から 7,800円)
   エコノミー    5,000 円(但し9/1から 6,500円)
   小型車(6m未満) 20,000 円(但し9/1から 26,000円) ※これ以下の料金設定がない

   ※在来船は特等4,930円 一等4,010円 二等寝台2,950円 二等2,150円 車両4-5m:19,810円 5-6m:25,810円
   ※JRは白鳥にこの区間だけ乗った場合、5,340円

 要するに高いんですね。これが高速船エコノミーで、在来船二等2,150円に特急料金1,000円程度乗る位ならば十分競争力はあったでしょう。勿論、JRを意識していたからこそ、当初はJRより安く設定したのかもしれませんが、特等より僅かながら高かったというのは解せません。時間は半分でも、エコノミーはただのいす席、特等船室はペット、バスルーム付きのビジネスホテルツインルーム並みの設備です。

 ちなみに、如何に東日本フェリーの設定が高いかは、他社と比較するとわかります。やはり九月から値上げせざるを得なかった、新日本海フェリーの新潟−小樽or苫小牧東の場合。

   2等   6,200円  2等寝台 7,700円  S寝台  9,800円
   一等   12,300円  特等   18,400円  特等A  20,200円 スイート 35,000円
   車両4-5m:20,300円  5-6m:24,300円

 太平洋フェリーの苫小牧−仙台の場合。

   2等   8,000円  B寝台 10,000円   A寝台  11,500円 S寝台13,000円
   一等   16,500円  特等20,500円
   車両4-5m:25,500円

 特に車両航送料金の高さが目につくと思います。以前からこの会社の青函航路は高かったのですが、現在では在来船ですら4-5mを除き新日本海と逆転しています(高速船では天下の太平洋フェリーとも逆転)。おまけに新日本海や太平洋フェリーは設備が充実しているわけで、これでは本州南部から来る客を取り込むのは、函館へピンポイントで観光する客以外は難しいでしょう。

 一般客及び車両同乗者については、新日本海/太平洋の場合は長距離なので、学生以外は寝台以上を使うでしょうから多少は費用が余分にかかりますが、それでも「青森・函館を目的地としている人以外は」青森までの交通手段の費用を天秤にかければ青函航路の方が割高です。

 また、青森・函館をクルマなしで観光する客にとっては、今度は埠頭の位置が悪いです。函館に至っては七重浜です。いくらJRがトンネルが多く眺望の面では勝負できるといっても、運賃高く、アクセス含めれば時間がかかる、では総合的に勝負になりません。

 JRの場合は青森/函館までJRで来た旅客にとっては運賃に遠距離低減が効く為、実質支払額は5,340円を下回るわけですから、なおさらです。

 東日本フェリーもシャトルバス運行など手は尽くしていると思いますが、不利な要素がこれだけあるわけです。どのようにして集客できると考えていたのか、会社の企画・マーケティング担当にぜひ聞いてみたい位です。

 一度は潰れた旧東日本フェリーを吸収し再建しようとしたリベラグループの理想は買いますが、実現力があまりにも乏しかったのは残念です。東日本フェリー・青函航路の在来船の運航を引き継ぐ道南自動車フェリーについては、せめて運航の質の維持を望みたいと思います。





※ブラウザの「戻る」ボタンでお戻りください





このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください