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試すことに価値あり〜〜長野発0:00臨時終電



和寒  2005年 9月21日





 地方私鉄は利用者数の長期低落傾向が続いており、どの社も概ね最盛期の3分の2程度か、あるいはそれ以下の水準まで落ちこんでいる。当然ながら、経営環境は極めて厳しいものがある。

 そのなかで、長野電鉄は先駆的な試みを行ってきた、数少ない“元気な”会社である。特急電車2000系、初代OSカー、長野−善光寺下間の地下連続立体交差化(ただしこれは長野市の意向も大きい)、東急5000系大量移籍による車種統一などなど、枚挙に暇がない。その長野電鉄が、新たな挑戦を試みた。

長電長野駅長野電鉄長野駅入口及び臨時終電の看板

 大都市圏では当然のサービスかもしれないが、長野0:00発(須坂着0:24)の臨時終電を試験運行するというのである。ターゲットとなる利用者はあさま 533号(長野着 23:48)からの乗り換え、長野市内での深夜退勤者、及び宴席・会合などの帰り客というところか。それまでの終電が長野 23:25発であったから、一挙に35分も繰り下げたことになる。

臨時終電案内臨時終電案内

 たまたま信州に行く機会があったので、臨時終電の様子を実見してみた。三連休中日の土曜だったので、条件が恵まれているとはいえないが、それでも50名弱の乗車があった。見る限り新幹線からの乗り継ぎ客はなく、ほぼ全数が呑み会・宴席・夜遊び帰りと見受けられた。充当されているのは2000系3連であったから、少々うらさびしい状況ではあったことは否めない。

 仮に利用者の全数が定期外で、平均 200円の支払いとすると、“水揚げ”は約10,000円。臨時終電設定による追加的支出がどの程度あるかは不明だが、割が良いとは考えにくい。あとは平日の状況がどうであるか、おおいに気になるところである。

 参考までに筆者の信州在勤時代の経験を記すと、あさま 5号あたりから長野電鉄に乗り継ぐ利用者はごく少数しかなく、そもそも平日23時台の列車はガラガラに空いていた記憶しかない。大都市圏では遅い列車になればなるほど混む傾向がある一方、長野の夜は早いという印象があった。それゆえ、さらに遅い臨時終電の試験運行に踏み切ったという点に、驚きを禁じえないというのが率直な感想である。

臨時終電長野駅で出発を待つ臨時終電

 それでも、絶対数が少ないとはいえ、より遅い終電のニーズがあることは確かである。筆者の投宿先最上階には1:00まで営業しているレストランがあり、日付が変わっても客の動きはまだあった。六本木や歌舞伎町のようにはいかないとしても、長野は地方における都会であり、夜を徹する人の動きは決して少なくない。

 だから、サービスを提供しない理由を百万言費やすより先に、まずは臨時終電を出してみた長野電鉄の積極性を、高く評価したい。たとえ「利用者が少なく定期運行は困難」という結論に至ったとしても、試験運行の実績がある以上、説得力がまるで違ってくる点が重要なのである。

 表題の「試すことに価値あり」とは、以上の意味を籠めている。交通における合意形成の手本ともなりうる事例といえよう。さらに願わくば、この試みが成功してほしいものだ。

臨時終電長野駅を出発する臨時終電





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