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議論のレビュー



和寒  2005年11月19日





 ここでの議論は Web世界での議論の典型、という意味において良い面がよく出ていると同時に、科学的(あるいは数学的・統計的)手法にはなかなか踏みこめないと感じます。議論の流れに棹さすつもりは毛頭ないのですが、このフォーラムも発足してから一年以上が経ち、年の瀬も迫ってきたので、ちょっとした総括を兼ねてレビューしてみたいと思います。

 まず、エル・アルコン様にしてもTAKA様にしても、高速道の相当なヘビーユーザーです。利用頻度が高いということは、その利用感覚は一般性・普遍性を持っている可能性が高い。つまり、高頻度で利用されているユーザーとしての研ぎ澄まされた感覚は、幅広く支持を受ける可能性が高いわけです。実際のところ、エル・アルコン様とTAKA様の書かれる記事のアクセス数はフォーラム上位を占めている。

 そして、利用者としての実感に裏打ちされた記事の提供こそが、当フォーラムのような Webサイトの醍醐味そのものではないか、と思えます。

 その一方、このたび呈示された料金制度の移行について、議論の基礎となる部分、即ち料金制度移行に伴い利用者がどのように動くかという点に、一抹以上の危うさが伴います。というのは、エル・アルコン様もTAKA様も御自身の感覚を基に予測・分析されているからです(※)。勿論、ヘビーユーザーとしての感覚ゆえ、この予測・分析が平均的利用者像の実態に即する可能性は高いのですが、全利用者の価値基準は相当な幅を持っているはずなので、その点を踏まえる必要があると感じます。
  ※主観のみで記事をおこすと、某鉄道趣味誌の大凋落のような弊害も生じかねない。まったく余談だが。

 一般論として、対距離制の導入は近距離値下げ・遠距離値上げになるわけで、近距離の利用者が増え、長距離の利用者が減ることは確実です。そのなかで、高速料金値上げ及び一般道の渋滞悪化が利用者にどのように比較考量されるのか。現状以上の出費を惜しんで渋滞に耐える利用者も必ず出てくるでしょう。その一方、高速料金値上げを時間短縮効果見合いの範囲内と受容する利用者も出てくるはずです。特に長距離トラックの場合、全体の高速料金に埋没する範囲におさまる可能性も高い。

 このような予測・分析を行うためには、正確なデータを基礎とした、科学的(あるいは数学的・統計的)手法によらなければならない、と考えます。首都高では高松−新宿間の開業という劇的な変化が起こる以上、なおのことです。勿論、科学的手法といえども万能ではなく、利用者の実感の方がむしろ正しかったりする場合もありますが、予測・分析が的中するかどうかは事後の評価に委ね、姿勢としては常に科学的であるべき、というのが私の考えです。

 このような議論を行う際、以前はまったく噛み合わなかったものですが、それは以上のように依って立つ土台が異なることに由来していたと考えます。当フォーラムは事実上の会員制サイトであり、投稿者の依って立つところが相互に認識されておりますから、それぞれの議論の良さもまた認識されていると考えます。その意味において、TAKA様の第二稿は実に良いですね。ユーザーとしての実感がよく出ています。

 そして、その良さだけで鎧うことのできない内容については、本稿の如き指摘があってもよいのかなと考えてます。それが議論の奥行きと多様性を担保するものであってほしい、とも考えるのですが、自惚れにすぎるでしょうか。少なくとも、編集子を含む特定投稿者の価値基準で議論の方向性をコントロールすることは、先にも記したとおり「相当な幅を持っているはずの価値基準」を網羅できないおそれがあるはずです。敢えて数学的な表現をすれば、「自由度が低い」ということです。豊かさの本質は多様性、という定義もあるそうですから、複数の価値基準が共存できるような環境構築が必要です。当フォーラムがその環境を提供できるプラットフォームであれば良い、と考えます。ともあれ、良い議論になっていることをありがたく感じた次第です。





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