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重い罪と重すぎる罰
和寒 2005年11月12日
本件は一見ほほえましい話題になるようにも思われますが、極めて重大な問題が秘められています。
■論点1:実はかなり重い罪
私が以前、始発駅で出発を待つある特急の運転室直後の席に座った際、乗務員室扉の施錠がされておらず、扉がぶらぶらと遊んでいたことがあります。車内は閑散としてましたし、そのままでも実害はない状況でしたが、通りあわせた車掌はしっかり施錠してからその場を離れました。たとえ実害はなくとも、不安全と想定されることはしない、というのは鉄道現場での鉄則といえます。
本件に関して極めて重大な問題と指摘できるのは、幼児が乗務員室内に入りこんだままの「不安全な」状態のままで列車を出発させてしまった点につきます。これはまさに「重大な規則違反」と指摘せざるをえないところです。3歳の幼児が実際になにをしうるか、という点では確かに疑問をはさむ余地はありますが、しかし川間停車時点で「添乗を認められていない者が乗務員室内にいた」という「不安全な」状態で敢えて列車を出発させたことは極めて深刻な大問題です。
結果がたまたま事故につながっていないだけで、この運転士の発想の次元は、ダイヤを守ろうとするあまり赤信号現示のままなのに敢えて列車を出発させた、という信楽事故と共通する危うさを指摘できます。
また、乗務員室扉を叩いた幼児に血縁関係がなかった場合、この運転士はどう行動したか、という点を考慮する必要があります。おそらく、川間停車時点で幼児を乗務員室から出してから、「安全な」状態を確保してから発車させたはずです。自分の子だから甘く対応したことは明白であり、現場にダブルスタンダードを持ちこんだという点においても大問題です。
■論点2:罪に対して重すぎる罰
以上に記したとおり、本件の罪の重さには相当なものがあります。停職+運転士勤務から外すくらいの措置は最低限必要です。しかしながら、極めて問題が多い不適切な行動をとったとはいえ、実害があったわけではなし、いきなり懲戒解雇というのは確かに措置が重すぎる観は伴います。
この運転士にはよほど日頃から問題行為が多かったか、規則違反の重大性をよほど重視したか、あるいは安全確保における現場での裁量横行に対する警告措置としてなのか。前者ならばわかりますが、中者であればかなり過剰な対応、後者であれば会社としてすべきことはほかにあると批判の対象となるところです。さて、真相はどうなのでしょうか。
■論点3:一億総検非違使時代に行きながら
以前
こんな記事
を書いた身としては、まさに「密告社会」そのもの状況だなと、息苦しさを覚えます。
その一方で、福知山線事故以降、鉄道利用者は安全に関して敏感どころか鋭敏になっている可能性を指摘できます。本件の運転士と幼児が親子関係にあるかどうかなど、乗り合わせた利用者にとっては知る由もないですし、「自分の乗る列車で安全が冒された」という感情を持たれてもしかたないところです。
息苦しい状況であることは確かですが、そういう時代に生きていかなければならないのが現代日本人の宿命であるともいえます。私自身は、いつ誰に足をすくわれるかわからない、という意識を持ちながら身を処すことが必要になりつつあると感じていますが、如何なものでしょうか。
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