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戦後間もない頃から、北九州工業地帯で半世紀以上に渡り、

西鉄バスの、そして西日本一円のバス事業者のボディを作り続けてきた西日本車体工業株式会社。

斬新なデザインのボディ、今では当たり前となった広い乗降口を持った路線バス。日本最初の夜行バス専用車の開発や、1mm単位で床を低くした低床バス・・。

日本最大のバス事業者、西日本鉄道のグループ会社であり、最良のパートナーとして、枚挙してはきりがないほどの、

画期的な車輌を作り続けてきたバスボディ専業メーカーでした。

 

しかし近年はバスメーカーにも不況の波が到来し、ボディ専業メーカーのバス事業からの撤退や、バスメーカー間の統合やアライアンスが進んでいました。

その中でも、日本一円に納入範囲を広げるなど快進撃を続けていた「西工ボディ」。

 

しかし2010年1月、地元紙の1面に掲載された同社の廃業のニュース。

これまで培われてきた技術や、斬新なアイディアをカタチする発想力。これらが全て無くなってしまうことはとても残念でなりません。

 

・・そんな事を思うバスファンのハートに目を向けてくれたのか(?)

西鉄旅行により、西日本車体工業の工場見学ツアーが8月8日出発限定で開催されました。

 

当日は日本中から約180名の同好主が集結。

夏晴れの青空の下、バスが作られてきたラインを辿ったり、最終製造の1台をカメラに収めたり・・。

そんな貴重な1日の様子をお送りします。

 

 朝 博多駅集合 → (福岡都市高速・九州自動車道・北九州都市高速) → 西日本車体工業

発表された西工見学ツアーの行程は、大きく2通り。

博多駅発着(前泊コースも有)と、北九州発着。

それぞれ見学地が異なるというサプライズも!!

 

博多駅発コースで申し込んでみました。

 

朝8:45分、博多駅筑紫口集合。

観光バスの出発で大変な混雑となる中、西鉄観光のバス3台が次々に入線します 。

 

(左)バスファン150名が集結した筑紫口。

(右)左側の2台が、それぞれ1号車と3号車。

改札を済ませ、パンフレットや昼食・バスグッツ購入の引換証・工場の入場許可証を兼ねた西鉄旅行のバッチをもらうと、バスに乗車。

申込順でバスが割り振られたようで、1号車でした。

 

(左)次々に乗車中。

(右)1号車の運転席。三菱のスーパーハイデッカーです。

 

駅東ランプより都市高速に入り、福岡IC経由で九州自動車道へ。

逆方向(下り)はお盆渋滞でのノロノロ運転でした。

直方パーキングエリアでトイレ休憩。

みなさんトイレよりも写真撮影に夢中!

 

(上)左より、1号車:西鉄観光旧塗装ルーセントカラーでは稀少なスーパーハイデッカー、西工SD型02MC。

ルーセントカラーのSDは、かつて「いかつい」旧マスクの最高峰グレード『スーパーロイヤル』が10数台在籍した以外には、このタイプが2台のみ!

元は北九州西鉄観光の車でしたが、西鉄観光に統合された際に福岡へ移籍してきました。

2号車:元九州観光カラーのロイヤルハイデッカー。3号車:西鉄観光新塗装のロイヤルハイデッカー。

(左)絶好の写真日和でした。

個人の好みですが、数ある西鉄の観光バスの中で一番格好良いと思える車に当たり、既にもう満足(笑)

 

気品に溢れるルーセントカラーが、さらに引き立つスーパーハイデッカー。しかも西工の一番新しいマスクはJ−BUSにも負けない格好良さ!(あくまで私見です)

 

(右)八幡ICより北九州都市高速へ。黒崎インターを過ぎると、車窓に黒崎・八幡の街並みが広がります。

この景色はバスでないと味わえません!

(車高の低い乗用車では、ガードレール等に阻まれて見えません)

  午前〜昼さがり 西日本車体工業 工場見学

都市高速を日明ランプでおりた直ぐ。

西鉄バスが朝夕のみ運行される「西工前」バス停が見えると、そこが工場。

バスの入場の際だけ門が開き、すぐに閉門。

 

(左)埋立地の工場地帯の中にある西工。

(右)奥の建物の中にはスマートループが数台、西鉄ロゴが入れられる前の状態で完成を待っていました。

ここでまた驚きのサプライズ。

バスに乗ったまま、工場の艤装ラインを回るとのこと。

慎重に、歩くような速度でラインに乗るSD。

 

工場の責任者の方が乗り込み、解説を受けながら、

つい先日までは完成途上のバスがズラリとベルトコンベアに乗せられ、外装・内装の取付をされていたトコロだそうです。

 

(左)ハンドルらしきものがドンと置いてありました。

(右)台の上に方向幕が!!・・と思いきや、蛍光灯でした。もはやある種の病気かも知れません(笑)

 一度奥まで行き着くと、ターンテーブルで方向転換。

 

(左)奥にはこちらに向かってくる2号車。

(右)車体の下にはピットが掘られています。大型車は赤のラインに両端を合わせて移動させるとのこと。

車内は時々起こる歓声以外は真剣そのもの。

ココは窓ガラスを取り付けるところ・・、ココは車内装備品を取り付けるところ・・。

カメラを片手に、解説にみな聞き入ります。

 

(右)ラインを出ると、西工最終製造車輌のスマートループが展示中。

 (左)ラインを慎重に進む3号車。

生まれた時が、最初で最後のライン通過をなるはずだったのでしょうが、まさか再びこのコンベアーの上を通ることになるとはまさかの再開だったのでしょうか。

 

 

(右)北九州発の車も合流。これで合計4台の約180名の参加者。

車内には、幕販売でいつもお世話になる皆様の姿が(笑)

もうモノが作られることが無くなった工場。

でも整然と、ネジの1本まで整理整頓がなされていました。

 

(右)コンベアー沿いの、工程を示す看板。

ウン万台が、この上を通って、日本各地、また世界へ出荷されていったとのこと。

メーカー純正バスに乗ったときのあの違和感。

 

ここで作られるバスに育てられ、カッコイイと思い、いろんな場面で利用してきました。

それがもう作られることはないかと思うと、
いくら経済情勢の影響があるとはいえ、もしや経営戦略上の何かがあるのかもしれない工場とはいえ、
とても残念です。

(左)特別に、もう一回空車でレーンを走っていました。

 

(右)柔らかい光の中を、歩くようなスピードでソロリソロリと進むバス。

 

 

ターンテーブルで折り返して、撮影タイムとなりました。

  

 

西日本車体工業製造、最終車輌。

西日本鉄道路線バス(スマートループ)6265号車。壱岐営業所配属。

 

きっといつもと何一つ変わりない、確実で正確な作業を施されて世の中に出るバスのうちの1台にすぎないのでしょうけれども。
きっと最後の1台でなければ、こんなに注目を浴びることなく、普通に納車された、ほんの1台に過ぎないのでしょうけれども。
やっぱり特別。

 

 

その後、KBCのアナウンサーの方と製造部長の方のトークショー。
バス作りに掛けた半生に思わず聞き入ってしまいました。

 

最後は大きな拍手。
タオルで鼻と口を押さえながらステージを降りられた姿が印象的でした。

 

 

 

(左)お楽しみ販売会。

最初は魚市場のような賑わいでした(笑)

(右)オークションも楽しく開催。
詳細な説明もあり、汗を握るも笑いありのとても楽しいオークションでした。
自分はまだまだ修行と覚悟が足りませんでした!

 

 

貸切車を移動しての撮影会。

 

ルーセントカラーのスーパーハイデッカー。

少々古くさいカラーリングであることは否めませんが、

この重厚感と高級感には代えられません!

 

 

西鉄観光のロイヤルハイデッカー。

後部の一段高くなったサロンが特徴的です。

 

この部分に陣取り、座席を開店させてサロンにして、

そこで酒盛りをするのがとても好きです。

景色も良い上に、話も弾むで文句なし!

(今回はしていません)

 

 

工場に並んだ西工ボディ4種。

一斉にカメラが向けられます。

 

でも営業所で撮影するのとはワケが違います。

 

・・それにしても、1台1台違う車を用意していただいた辺り、マニア心についてよくご理解をして頂いているようです。

 

 

 

ルーセントカラー。

 

(左)北九州発は旧マスクのUD車。

二枚に分かれたスイング扉が特徴的な車です。

なお運転士の方は、以前さるバス好きが集うバスツアーでもお世話になった方でした。

 

(右)またこの車か!と呆れた溜息が聞こえてきそうですが・・(笑)

凛と佇むSD。ハイデッカー車よりも少し腰上に巻かれた幅広の金帯。朱色と濃い灰色の、少し高さのあるスマートなライン。ハイデッカー車と、地味にですが風格が異なる印象を抱かせられました。

(左)sに非鉄北九州観光時代は、ドア後、窓との間が「白」でしたが、西鉄観光へ移籍した後は、西鉄のルーセント車と同じく「黒」に塗り直されています。

こんな良い車に乗せて頂いて本当に感謝です!

 

(右)若干色の付いた側面窓。

スモークになると外の景色が見えぬくくなるので好きではないのですが、この程度の色つきガラスを採用することにより、逆に高級感を演出するのに成功しています(いる気がします 笑)

工場に入って直ぐの場所に止まっていたスマートループ。

西工、最後の子供達です。

  昼下がり・夕方  西工 → 福岡高速営業所  → 天神・博多駅

 

特製のお土産や、販売会で買った物をどっさり詰め込み、再び車内へ。

 

なお行きと帰りで、1号車と2号車が入れ替わります。

 

(右)見学者もいなくなり、がらんとした工場。

あれだけ製造中のボディで賑わったレーン。日本各地へ出荷されるバスが並んでいたベルトコンベアー。そして多くの見学者で賑わった、今日のツアー。

この建物の中であれほどの熱気が漂うことは、もう二度と無いのでしょうか。

 

 

 

 

西工出発。

休日であるにもかかわらず、大勢の西鉄旅行の方や西工の方がお見送りに駆けつけてくれました。

(中)門のところで帽子を取って深々とお辞儀をして頂いている工場の方々。こちらこそ感謝の気持ちで一杯です。

(右)もう二度と来ることのない、西工。本当に晴れて良かったです。

 

 

・・この後、

北九州発着便の皆様は、西工で北九州地区の西鉄バスの幕販売。

昨年秋から続く、西鉄バスの幕販売ですが、北九州地区の幕が売り出されたのは今回が初めて!(例外的に北九州高速幕が1本出たことがありましたが)

ところが、「持ちきれないほど幕がある!」「幕がまだまだ余って居るんだけど、もう財布がカラ」なんて、うらやましすぎる話が、次々に福岡に戻るバス車内に飛び込んできました。

実は、福岡発と北九州発で幕販売の内容が異なると聞いて、どちらのコースにするか迷っていたのですが「残り少ない福岡幕に賭けてみる」という判断をしたのでした。

 

心配していた九州自動車道下り線の渋滞も解消しており、スイスイ進む。

古賀サービスエリアでトイレ休憩。

あまりの暑さに、撮影もほとんどせずに車内に引き返しました。

 

このあと福岡インターより福岡都市高速を経由、築港ランプで高速を降り、福岡高速営業所へ。

 

 

 

このあと、まさかの方向幕販売&グッツ販売の充実ぶりにカメラを取り出すのもすっかり忘れ、営業所の中をウロウロしていました!

 

・・別の機会に撮影した参考画像です。

 

 

天神から北へ車で10分。那の津埠頭にある福岡高速営業所。西鉄の昼行高速バスが一堂に休むこの営業所の奥に特設コーナーが設けられ、販売と展示が行われました。

(一部路線以外、夜行高速については博多営業所が担当しています)

 

火の鳥カラーにムーンライトカラー、白夜行。西鉄のフラッグシップが一同に集まる充実した撮影会でした。

 

 

ここで1時間ほどの時間を過ごし、空も赤くなり始めた天神・博多駅へ無事に到着しました。

お互い近くの方同士、声をかけあい解散。

・・こういう同好主の集まるツアーで楽しみなのが、こうした仲間作り。同じ趣味の方を探すのに、特に直接お会いしてお話しする機会がなかなかないだけに、こうしたコミュニティの場を作っていただけるのも、とても有り難いです。

 

(左)西工で買った物。後の「コンテナ」。バスグッツの整理に役立てています(笑)

(右)コレクション用の方向幕がまた増殖。置き場所を増設しました。倒れてこないようにするのが一工夫です。

  お ま け : 各地で活躍する西工車

 

 

日本各地で活躍する西工ボディのごく一部です。

 

 

(左)くしろバス(北海道釧路市)。

駅前でカメラを構えていたら、何か西工のようなバスが近づいてくるなと思い、まさかと思って撮影していました。

(撮影後しばらくは日野純正のブルーリボンを見間違えたのかと思っていました)

元大阪市営の中古車、58MCです。

 

(右)JRバス関東

東京駅から各地へ伸びるJRの高速バスネットワーク。短距離〜中距離路線用のC型ハイデッカーです。

さわやかなブルーとツバメが格好良いです。

 

 

(左)東京空港交通

羽田・成田の、日本の空の玄関口を守るエアポートリムジンバス。

結構な台数が在籍し、空港と首都圏とを飛び回っています。

首都高速を快走する西工ボディに乗って、レインボーブリッジや皇居、日本橋を眺める景色もなかなかのもの(笑)

 

(右)京浜急行バス

三菱純正の高速バスが多数在籍する京急リムジン。

その中に少数ながら西工のエアポートリムジンが在籍します。

羽田〜大船・藤沢線は道路環境の悪さから標準床の限定運用。最近、E型標準床の新車が入りました。

 

 

(左)JR九州バス

西鉄とはライバル関係にある同社。

しかし九州内長距離路線は、西工SD型スーパーハイデッカーが多数在籍します。

博多営業所でのSDの勢揃いは、とても壮観です。

 

(右)大阪空港交通

大阪伊丹空港を中心に近畿一円に路線を持つ大阪空港交通。

バスコレクション8弾でも模型化されたタイプです。

 

夜のターミナルを回送中。

 

 

 

バス王国九州は西工ボディの宝庫!

 

(左)宮崎交通

延岡〜福岡で長らく活躍していた、SDの旧ボディ。

限界まで寸法をとった大柄でスクエアなボディ。乗り心地はなかなかのものです。

ブルーのラインがさわやかな車です。

 

(右)九州産業交通

純正ボディに混じり、西工ボディのネオロイヤルも採用されています。

日野独特のシフトチェンジ音が特徴的なこのタイプ。

主にひのくに号にて活躍しています。

 

もうすぐ無くなる工場に行くのは、少しだけためらいも合ったのですが、

最後に目に焼き付けておいてよかったと思えました。

 

ツアーを企画された西鉄旅行の方々、西日本車体工業の方々、当日楽しくお話しさせていただいた方々、

ありがとうございました。

 

 

 

西工はなくなりますが、

西工スピリッツの結晶であるバスや、西工バスファンの気持ちはきっと残り続けます。

 

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