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−大手民鉄ローカル線の成長戦略と保有の価値は?−(京成千葉線・千原線)



TAKA  2005年12月07日



 


 
京成津田沼駅での京成3000系


 皆さん今晩はTAKAです。
 今回は関東鉄道めぐりの第3弾で京成千葉線・千原線を取り上げます。端的に言えば京成に取り千葉線は「只漫然と運行している飼い殺しのローカル線」であり、千原線は「高額を出して引き取ったがお荷物になっている問題路線」と言う事が出来ます。
 しかし捨てるに捨てられない路線であり、京成グループの鉄道事業が抱えている問題を象徴している路線です。この「進むに進めないが、引く事もできない」路線は今後どうなるか?これらを含めて考えたいと思います。

 ●京成千葉線の概要

 京成千葉線は京成津田沼〜千葉中央間12.9kmの路線で、元は京成本線津田沼〜成田間より先に開通したほどの歴史の有る路線です。
 「 京成千葉線概要 (wikipedia)」
 本来都市間輸送として機能すべきである東京〜千葉間の輸送では、京成千葉線の根元になる京成本線の線形の悪さ・ターミナルの悪さ・競争力の無さをモロに受けてしまい、昭和10年の総武線千葉電化・国電運転開始以来総武線の後塵に甘んじて細々とローカル輸送を行う状況がずっと続いています。
 又路線自体が総武線と京葉線に挟まれた狭い地域を走っている為、駅勢圏が非常に狭い状況で広域輸送を行う状況になく、地域住民の対東京輸送を担う事もできずローカル輸送に甘んじる事になり非常に苦しい状況です。
 輸送の流れとしては・千原線からの流入客(多くは千葉で降りる)・京成本線津田沼以遠と新京成線から幕張本郷と千葉へ向う客・千葉線内から千葉と京成本線に向かうローカル客に3分されます。
 「 関東広告協議会レポート (P13)」
 現在の輸送体系は津田沼口で本線直通と津田沼折り返しが20分毎で合計10分毎の運転で、千葉中央で20分毎の折り返しと千原線直通が20分毎と言う形態で運転されており、全部普通運転です。

 ●京成千原線の概要

 京成千原線は当初五井〜上総中野間を運転する小湊鉄道が千葉市街への延長用に海士有木〜京成千葉間に免許取得した路線が事の始まりです。その後京成と小湊の綱引きの末に小湊から千葉急行に「出資・免許譲渡」が行われ、千葉急行電鉄が第三セクター化されて千原線は市原ニュータウンの足と目的を変えて建設が行われています。
 「 小湊鉄道乗車記 (免許譲渡を書いてある) 「 京成千原線概要 (wikipedia)」
 最終的に路線は千葉急行電鉄の手で市原ニュータウンへのアクセス路線として千葉中央〜大森台間・大森台〜ちはら台間に分けて92年と95年に開業していますが、その後千葉急行電鉄の経営不振で精算処理される事になり、98年に京成へ譲渡され京成千原線として再出発しています。
 千原線は全線単線で(複線用地は確保されている)大森台・学園前で交換可能になっており、朝ラッシュ時以外は千葉線から直通が毎時3本運転されており、大森台で交換するダイヤが組まれています。
 利用者は肝心の市原ニュータウンの熟成が進んでいないのと、利用客が外房線鎌取へ逸走している事も有り低迷しており、各駅共京成各駅の中でもきわめて低いレベルの2,500〜3,500人/日程度の利用客しか居ません。(大神宮下・宗吾参道レベル)
 「 関東広告協議会乗降調査 (P13)」

 ●千葉線を利用して見て

 早速千葉線を訪問してみました。因みに千葉線&千原線が京成唯一の未乗路線だったので先入観念が無くどんな路線かは楽しみにして乗車する事にしました。
 26日3時過ぎ日本橋から快速で京成津田沼に到着しました。快速は8両編成でサラリと座席が埋まる位で少々物足りない乗車率です。
 京成津田沼で写真を取りながら待っていると3000系6両の普通列車が到着します。上野からの直通列車で、津田沼での乗降・接続特急からの乗換等も有りましたが、只時間も有るのでしょうが座席の半分程度が埋まる乗車率で津田沼を出発します。
 一つ目の幕張本郷でかなりの降車と少々の乗車があり座席が3分の1弱程度が埋まる位に減ってしまいます。幕張本郷は幕張新都心への玄関駅でJRと肩を並べている接続駅ですが、此処で乗客が動くと言う事は千葉線はローカル輸送がメインと言う事の証と言えます。

 (左側)京成千葉線車内(幕張本郷〜京成幕張)  (右側)京成幕張駅
   
 千葉線は新設駅の幕張本郷以外は殆ど手が入っていません。幕張等もそうですが未だに構内踏切が公然と残っている感じであり、隣を走る総武緩行・快速線に比べたらインフラの状況は数段劣る状況です。
 只スピード的には総武線には劣る物の、まあまあの速度(京成本線並み)で運転されており、線形の良い津田沼〜幕張間等では100km/hに迫る速度で運転されておりそれは驚きです。
 
 (左側)京成千葉駅構内             (右側)千葉中央駅構内
    

 駅間の間隔が短くなってくると千葉市街に入ってきた証で、まもなく千葉です。昔は「国鉄千葉駅前」と言う駅名で有名になった駅ですが、そごうとJRに挟まれた狭い所に有る駅です。モノレールと直結の改札口も出来て、JR千葉駅まで行かないものの千原線開業に伴いJRとの乗換客も増えかなり賑やかな駅になっています。
 しかし京成の千葉のターミナルは京成千葉ではなく隣の千葉中央で、隣の千葉中央には京成の駅ビルとホテル(ミラマーレ)も出来て千葉で運行されている京成系のバスターミナルもあり、一応のターミナルが形成されています。
 しかし今の千葉駅・千葉中央駅は戦災復興事業でJR線の移設とワンセットになった駅移設で、千葉市街の1等地から今のJRの裏地へ追いやられています。(千葉中央の駅ビルはそのときの交換条件)千葉市の京成への極めて冷たい仕打ちに違和感を感じると同時に、「今でも都心に駅があればどうなっていただろう?」とは感じます。

 ●京成千原線に乗車して

 京成千原線は千葉線と一体で運行されているので、試乗は千葉線から継続で試乗しました。乗った列車がちはら台行だったのでそのまま乗車していると、千葉中央より京成千葉でかなり乗車がありました。
 確かに接続駅の千葉中央は千葉市街地に近い所も有りますが、JRとの乗換やショッピング等は千葉駅の方が便利なので、京成千葉からの乗車多かったのでしょう。しかし千原線は千葉中央で料金計算区分が切れているので、再度初乗料金は取られない物の料率が異なっています。運賃料率が異なると言うのが千原線の今までの経緯を示していますが、(ちはら台から千葉中央まで350円・千葉までは410円で60円違う)60円の料金差でも利便性が重要と言うのが利用者の考えなのでしょう。
 大体座席が3分の1程度埋まる位で千葉中央を発車します。千葉線と変わらない乗車率ですが本数が半分しかないので、単純に考えれば千葉線の乗客の半分しか居ない事になります。休日の16時頃の下り列車だから普通の乗車率が有るとは推察できますが、それでこの乗客数ではチョットさびしいです。
 
 (左側)京成千原線車内(おゆみ野〜ちはら台)
 
 乗客は千葉中央からちはら台へ向けて暫減して行く形態で、ほんの少しの乗車は有るものの、殆ど降車が主流でどんどん減って行くだけの利用状況です。
 只利用客が伸びない事もたたって、最低限の施設しかない状況での営業なので、全線単線で千葉寺・おゆみ野は相対式ホームな物の片側は躯体しかなく駅名表がぽつんと立っているだけ非常に侘しい状況です。又千葉寺は市街地・おゆみ野は市原ニュータウンの中ですがそれ以外は未だ開発途上なので、駅の周りもさびしい状況です。
 
(左側)千葉寺駅                (右側)学園前駅
    

 終点のちはら台で下車しました。駅の周りには都市公団の事務所と極真空手の練習場と住宅とマンションが数等有るだけで店の類は殆ど有りません。駅前広場にはタクシーが止まっていますが乗車客は殆ど居らず、バスも鎌取行きが毎時2〜4本と一日数本の帝京平成大学・茂原行が有るだけです。

 (左側)ちはら台駅               (右側)ちはら台駅前からおゆみ野方面を望む
   

 この様な閑散とした状況では千原線の利用客が少ないのも当然です。今の時勢では残念ながら千原線沿線地域の人口が急に増える事も想定し辛いです。果たして千原線の今後どうなるのかな?と暗い気持ちになり、次の折り返しの列車で千葉まで戻る事にしました。(上り列車の利用客も似たような状況でした)

 ●千葉線は発展できるのか?

 さてこの様に「閉塞感」が漂う京成千葉線ですが、果たして今後発展していくの方策は有るのでしょうか?
 今まで京成千葉線は1958年の千葉市街地路線移設・1992年の千葉急行電鉄(現在の千原線)乗り入れ、幾つかの駅開設等以外は開業以来大きな変化が有りません。その中でも良い方向への最大の変化だった千葉急行乗り入れ時にも、結局京成千葉線には乗客増等の期待したほどの変化は訪れませんでした。
 しかし今回京成千葉線活性化に一つの手が打たれます。新京成線〜京成千葉線直通運転です。「 直通運転の記事
 
 (左側)京成津田沼駅の京成〜新京成接続予定地点 (右側)直通運転に使用予定の新京成N800系
   

 実際津田沼口の利用客の大部分は新京成線〜千葉線乗換or本線成田方面〜千葉線乗換の客が占めています。特に本線八千代・勝田台・ユーカリが丘等から県都千葉市へは京成津田沼乗換が一番便利ですし、新京成線沿線の習志野・鎌ヶ谷・松戸等から県都千葉へも京成津田沼乗換が有力な選択肢になります。
 この中で新津田沼〜津田沼乗換が有る新京成〜千葉線ルートの囲い込みには、上の写真で明らかのように簡単に直通できる(現実的には今でも困難無く出来る)京成〜新京成直通運転は有力な選択肢になります。
 新京成N800系は京成3000系と兄弟車で、6両編成で登場と言う事からも直通運転の有力車両であり、すでに各種協議を含めて準備は着々と進んでいると言えます。(基本協定締結済み)
 この直通運転が京成千葉線に取りどれだけプラスになるかは今の段階では未知数ですが、少なくとも今有る手段・考えられる手段で一番「発展に寄与する方策」であると言えます。(何処かの妄想の「優等を走らせろ」より有効であると言える)又同時に千葉県内の交通の充実にも寄与する良策で有ると言えます。
 後は今実施の京成津田沼駅でのエレベーター設置工事に加えてエスカレーター等の設置で乗換の利便性を上げる等の方策で千葉線〜本線間の乗換抵抗の削減等の地道な改良策しかないでしょう。「 京成17年度鉄道事業計画
 千原線と言う培養新線が出来ても培養線の利用客自体が少ないうえに、接続する本線の競争力が弱く乗客を引き寄せる事が出来ないという悲劇が京成千葉線の現状です。
 しかし対東京輸送ではどう足掻いても活路を見出せない事は歴史が示すとおりです。その中で如何にして活路を見出すか?これは千葉県内の形成ネットワークを活用しつつ、千葉県内(特に西部)〜県都千葉・幕張新都心への輸送に特化して行く事しか活路は見出せないのではないでしょうか?(その視点から考えれば京成〜新京成直通運転は正しい)
 でもそれで十分でしょう。縮小均衡でなければ現状維持(もしくは少々の発展)で均衡が取れれば、今の千葉線の状況から見て十分です。大きな投資をしても見合う活性化は難しいしょうし、NT新線のような赤字垂れ流しより、良い状況で有ると思います。

 ●千原線と言う「不良資産」は一体どうなるのか?

 訪問記の様に利用客も少なく極めて厳しい状況である京成千原線ですが、京成は千葉急行電鉄の経営不振に伴う精算処理において、京成は極めて厳しい負担を強いられています。
 「 千葉急行の事業譲渡について (佐藤信之氏RJ平成10年11月号)」「 千葉急行電鉄「京成千原線」で再出発
 この破たん処理で京成は出資金13億1900万円・長期貸付金120億9700万円・保証債務6億8800万円の合計141億400万円を処理した上で、千葉急行の資産を450億円で購入しています。この処理での京成の支出額は591億400万円と言う極めて巨額の金額になります。
 それでいて京成千原線は少なくとも収益を生み出せる状況には有りません。それは見てきた状況から明らかです。実際上記引用HPのによれば、96年度の1日当たり乗降人数9800人年間鉄道収入7億円との事ですから、今の1日当たり乗降人数約15800人から推察すれば、年間鉄道収入は14.5億円程度と推察されます。年間鉄道収入の40年分以上の処理金額を京成は注ぎ込んだ事になります。
 完全な推測ですが、千葉急行の97年度の営業費用は19億5800万円でそのうち減価償却費は4億5000万円となると償却費を除いた営業費用が15億800万円になり推察の鉄道収入14億5000万円から比べれば、固定資産償却等を考えなくても残念ながら未だ赤字になります。(数字は上記2つのHPから引用)  千葉急行電鉄の場合歴史的経緯から(小湊と京成の関係・この路線免許に関する動き等)京成+千葉県・千葉市・市原市の第三セクターと言う形態で作られました。しかしこの路線の狙いの「小湊との接続」「市原ニュータウンのアクセス」は共に挫折状況に有ります。特に市原ニュータウンアクセスは東京直通の強力な競争相手外房線鎌取がメインになっていて、千原線はそんなに機能していません。今更小湊鉄道海士有木へ延伸することも不可能でしょうし、もし延伸しても小湊とは動力・期間が違うので直通も出来ず、小湊への活性化も沿線の開発も期待できません。

(左側)ちはら台駅から延伸予定方面を見る(何時延伸できるのか・・・)
 

 この様に極めて中途半端な状況で千原線は141億円余りの損金をかぶった上、450億円の資産を抱え運営されています。この様に「京成最大級の不良資産」は未だに苦しい状況に置かれています。
 先ずは「償却前の状況で利益を出す」と言う所ですが、それですらもっとニュータウンが発展しないと難しいでしょう。その上民間企業ですから450億の投資を償却できて、しかも利益が出せる状況にならなければなりません。しかしその道は極めて厳しい茨の道で有ると言えます。
 京成千原線は京成の千葉の歴史の中での大きな負の遺産の一つです。(もう一つは北総鉄道)しかし将来性が無いという意味では北総鉄道以上の負の遺産です。(北総には成田新高速と言う隠し玉が有るが、千原線は海士有木延伸も逆効果になりかねない)
 京成は千葉県の鉄道・バス等の公共交通の大きな部分を占める中核企業であるにも関わらず、千葉県との関係もイマイチ上手く行っていないと推察されます。普通の鉄道会社の場合不動産資産にバブルの後遺症の負の遺産を抱えていますが、京成の場合鉄道事業に極めて大きな負の遺産を抱えています。
 この負の遺産を如何にかしなければならない物の、千葉急行の場合万全の解決の方策が無いままに、歴史的経緯等が有ったと推察されますが、京成グループが負債を抱え込む状況で処理されています。しかし今後は過去の経緯は置いておくにしても、何とかしてこの負の遺産を収益を生み出す資産にしなければなりません。そのために歩まなければならない京成千原線の道は遠く険しいと言えます。
 これが京成千葉線・京成千原線を合わせての最大の課題で有ると言えます。



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