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−大都会の「盲腸線」と「お荷物線」− (西武豊島線・西武有楽町線)



TAKA  2005年12月18日




 


 
「西武線練馬駅風景(左は豊島線折り返しの4両編成・真中は池袋線から直通の豊島園行・右は西武有楽町線からの直通)」




 皆さん今晩はTAKAです。今日は関東鉄道めぐりの第4弾として西武豊島線・西武有楽町線を取り上げます。この路線は私の家の近くにあり「豊島線=豊島園遊園地に遊びに行く」と言うイメージが強く、「西武有楽町線=何か有るだけの路線」と言う何か存在感の無いイメージが有ります。
 今回は私の身近な路線を取り上げます。敢て取材に行かなくても時々利用している路線なので、有る程度実情は分かっているのですが写真が一枚も有りません。そういう訳で取材を11日の日曜日に池袋まで出る用事のついでの行き帰りに写真を取ってきました。
 (そういう訳で近い路線なのでついでの取材になり、西武有楽町線は昼間(16:00頃)だけですが、豊島線は昼間(16:00頃)と夜(18:00頃)の写真が有ります。)


 ●西武豊島線ショートトリップ

西武鉄道 豊島線 概要  (wikipedia)」 「 利用客数  (平成13年度関東広告協議会レポートP28)」

 早速西武豊島線と西武有楽町線に写真を取りに行きます。取りあえず自宅の最寄り駅に行くと豊島園行きが滑り込んできます。自宅の最寄り駅は普通しか止まらない駅ですが、普通の半分近くは豊島園行・豊島園発の列車です。豊島園線と言う一路線だけであるとなかなか縁のない路線でも、直通列車の恩恵と言う意味では非常に縁の有る路線です。この直通列車のおかげで、朝でも特定の列車の特定の場所を選ぶと座って通勤できます。個人的にはその点から「豊島線様々」です。
 乗ると数分で分岐駅の練馬駅に着きます。豊島線への直通列車は原則練馬で西武有楽町線→池袋線の直通列車に接続します。個人的には練馬以遠に行く時に練馬で一回多く乗り換えなければならない分不便(練馬で接続の列車は途中止まりだったり優等に抜かれたりして、埼玉県まで行くのにもう一度乗り換えることが多い)ですが、朝座れる分とブラスマイナスゼロと言う感じです。

 練馬駅から豊島園方面を望む(左から下り急行線・下り緩行線・豊島線・上り緩行線・上り急行線)
 
 

 練馬駅は大江戸線との乗換駅で有ると共に、池袋線・西武有楽町線・豊島線の接続駅であると同時に池袋線複々線の始まる駅であり、池袋線は此処で急行線も待避も可能で運転上の重要駅になっています。又高架下には店舗も整備され、北口に駅前広場も整備され、地上時代とは全然違っています。昔を知る私にしてみると隔絶の感じがします。
 豊島線は此処から単線になります。単線に入るとすぐ33‰の下り勾配で地上に降り、右に曲がり上り線の下をくぐり北に方向を向けるともうすぐ豊島園の駅です。練馬〜豊島園間僅かに1km・1分と言う距離で、あっと言う間に過ぎてしまう正しく長短距離路線です。
 豊島園駅は棒線でなく1面2線になっていて、到着するとすぐに上りが発車して行く場合も有ります。改札口が最前部に有るために下りは殆どの乗客が最前部に乗ります。基本的には池袋行き普通(昼間は毎時4本)がメインで土日夕方〜夜と平日夜間に練馬〜豊島園間の区間運転が入ります。
 只利用客数は多くなく、11,216人/日の利用客数しか有りません。そこに15分間隔で8両編成が入ってくるので豊島線内は特に昼間〜夜は平日・土日に関わらず殆どの時期でガラガラの状況です。

 豊島園駅構内(夜18:00頃)          豊島園行き車内(16:00頃・最前部)

   

 豊島園駅前は広場になっていてすぐ先には豊島園の入口が有ります。豊島園駅周辺には「豊島園(遊園地)」「ユナイデットシネマ豊島園(シネコン)」「庭の湯(温泉施設)」と言う集客施設が有りますが、庭の湯とシネコンはそれなりに盛況みたいですが遊園地は賑わっておらず総合的集客力が落ちています。その影響が豊島線の利用に響いているのかも知れません。

 豊島園駅(後ろの建物がシネコン)      豊島園駅前広場(正面が豊島園入口・正面右奥に庭の湯が有る)

   

 豊島園「庭の湯」

 

 時間も無かった上に取りあえず「勝手知ったる街」なので、(この前の週も地元の忘年会が庭の湯で有った)廻りの写真を取ったら、折り返しの列車で池袋に用事を済ます為に戻る事にします。(後で構内の写真が無いことに気付き帰りに寄る事になる)上りの列車は下りの列車以上に空いています。多少家族連れが乗っていますが、日曜日夕方の行楽地を出る列車とは思えない利用状況です。


 ●西武有楽町線を通過して

  「 西武有楽町線 概要  (wikipedia)」 「 利用客数  (平成13年度関東広告協議会レポートP28)」

 豊島線で練馬まで戻ってきたので、取りあえず向かいに入ってきたメトロ有楽町線直通の西武有楽町線新木場行き列車に乗り込みます。豊島線の列車は原則有楽町線直通と接続するのでホーム対面で乗換が出来ます。しかし乗換は圧倒的に有楽町線直通→池袋線の方が多く直通列車は練馬で結構車内が空いてしまいます。

 練馬駅での乗換状況(18:30頃、豊島園発普通と新木場行直通普通の連絡、豊島園発は準急に抜かれるので準急を待っている)

 

 西武有楽町線は練馬から強引に33‰の勾配を下り桜台駅の下をとおり、環七の下に有る新桜台駅に着きます。この区間が構造物が池袋線高架躯体と同一構造物になっているので、西武線高架と同時施工しか出来ずその上小竹地域でメトロ有楽町線との同時施工を求められた為、西武有楽町線は83年〜94年の11年間小竹向原〜新桜台間で盲腸線運行を余儀なくされました。(西武線直通はその後の97年)
 もし最初の完成から直通運転まで14年もの年月が掛からず、80年代末〜90年代前半の利用客が増加している時代に複々線&有楽町線乗り入れが完成していたら、もっと上手く乗客が有楽町線直通に転移していたかも知れません。直通が開始された97年には大江戸線練馬〜新宿間が開通し、池袋線練馬〜池袋間の混雑が緩和された年です。この混雑緩和で池袋まで行く苦痛が減ってしまった事が転移を促進しなかった可能性が有ります。この前に直通運転が完成していたら、流れが変わっていたかもしれません。

 西武有楽町線新桜台駅            西武有楽町線小竹向原駅(右が西武からの直通・左は和光市発新線池袋行)

   

 それでも幾ら直通客が少ないと言えども、この路線のメイン利用客は池袋線から有楽町線への直通通過客です。唯一の中間駅である新桜台も、昼間で新木場行き4本・新線池袋行き2本と言う本数が有る物の駅勢圏が池袋線桜台・江古田と有楽町線氷川台に囲まれており、自駅の乗降客は多く有りません。
 練馬から僅か2.6km4分で終点小竹向原に着いてしまいます。正しく通過路線です。小竹向原では向かいに和光市(もしくは志木)発の新線池袋行きが着き、乗客が此方に乗り換えてきます。新線池袋は池袋西口の外れに有るので利用するには不便で、わざわざ新線池袋行きを利用する乗客は殆ど居ません。

●これらの「西武の盲腸線とお荷物線」は一体どうなるのか?

 この様に我が家の近くに有る路線ですが、どちらの路線もパッとしない路線です。ローカル線と言うには語弊が有ると言えますが、活躍している路線とはいえません。果たしてこれらの路線は今後どうなるのでしょうか?

 ☆豊島線はもう要らない?

 先ずは豊島線ですが、割り切って考えた場合「もう要らない」この一言でお仕舞いでしょう。本来なら廃止されていても可笑しくない路線でした。池袋線の立体工事時にはずっと線内折り返し運転で行われていて、一時期は池袋線〜豊島線間が分離されていた時期も有りました。「 練馬駅高架化工事の流れ (情報交通ホットライン)」
 噂ですが、この時期に「平行線の都営大江戸線も開業している」と言う事も有り、工事に伴い「豊島線を廃止したい」と言う旨を西武鉄道が練馬区に申し出たと言う話を聞いた事が有ります。しかし現実には接続工事が行われ池袋線との直通運転が復活しています。
 しかし西武は豊島線の存在価値を「有楽町線直通列車と池袋を結ぶ列車の折り返し点」と言う点に見出しているようです。確かに今の段階では練馬高野台までしか複々線が完成していない為に、輸送形態的には中途半端な存在になっています。けれどもそんな事だけでこの路線を残しておく意味は有るのでしょうか?
 実質的には西武有楽町線完成で池袋〜練馬高野台間で複々線が完成しているのですから、途中の練馬で輸送力を脇にそらす必要は有りません。西武の立場で強いて強引に言えば今や練馬は大江戸線への乗客逸走ポイントであり、多くの優等を止めたくは無い場所です。そこを接続ポイントにする豊島線を活用するのはチョット疑問です。それならば今の豊島園行きは練馬高野台に振って、今折り返している新線池袋行きをもっと遠距離まで運転して、同時に有楽町線直通列車を準急か快速にすれば、有楽町線直通の速達化を図れるのでダイヤ的にも好ましいのではないかと考えます。(その時には準急以外は通過させても良い)

 同時に豊島園遊園地の存在意義も問われています。今西武は経営危機の中にあり、外資を受け入れての経営再建を行おうとしています。( 西武グループ再編及び資本増強について )その中で「遊休資産の売却」と言う内容も謳っていますが、採算性の低い資産を売る必要性に迫られるのは当然と言えます。その中で経営が低迷していて1939年取得と言う時期を考えれば、きわめて簿価が低いであろう(=含み益が多いであろう)豊島園の閉鎖と売却が視野に入っていても可笑しくは有りません。
 果たしてその時には豊島線を存続させておく意義が有るのでしょうか?極めて難しい問題で有るといえます。只豊島園に有る2駅を比べると西武10,769人/日:都営8,691人/日と西武の方が利用客が多い状況です。この状況では確かに廃止するのは難しいと言えます。又もし豊島園を売却する場合その後に入る施設次第では、豊島線を今より活性化する可能性も有ります。
 その様な点から考えると豊島線と言う盲腸線は、極めて位置付けが難しい路線で有ると言えます。もし石神井公園への複々線が完成した場合、今の豊島線直通列車を石神井公園に振り、豊島線は区間運転主体にならならない状況が発生する可能性が有ります。その時に豊島園の状況を含めて、豊島線の存在意義が問われる可能性が高いと言えます。

 ☆西武有楽町線は都心直通として機能しない?

 有る意味豊島線以上にもっと問題なのは西武有楽町線です。西武有楽町線は巨額の建設費を掛けて建設した都心乗り入れ連絡線ですが現実は上手く機能していません。
 現在では練馬〜中村橋間通過人員493,093人/日の内練馬〜新桜台間42,759人/日・練馬〜桜台間459,224人/日と言う様に約1:9の比率でしか流れていません。これではなんで巨額の費用をかけて連絡線を建設したのでしょうか?はっきり言って「お荷物路線」といわれても可笑しく有りません。
 実際練馬で観察してみると、池袋線池袋行きは、豊島園発以外はどの列車もどの時間帯もそれなりに乗車していますが、有楽町線直通列車は朝ラッシュ時の一部時間以外は何時でも練馬で各日に座れるほどしか乗車していません。その点から見ても上記の数字は実態からも裏付されていると言えます。
 この様な路線を如何にするべきなのでしょうか?起死回生の策として「13号線が開業すれば新宿・渋谷・横浜へ直通運転」と言う事も有りますが、実態として新宿へ急ぐ人であれば、2丁目・3丁目に行く人意外は間違いなく練馬で大江戸線に乗り換えるはずですし、渋谷・横浜へは池袋で埼京線・湘南新宿ラインに乗り換えるという強力な選択肢もあります。この中で13号線を選択してくれる西武池袋線沿線の人がどれ位居るか?と考えると疑問です。
 有楽町線の場合、都心のルートもイマイチと言う点も有りますが、それ以上に直通の接続ポイントが山手線から遠い和光市・練馬であるにも関わらず通過運転が出来ないので、所要時間が掛かるという大きな欠点が有ります。未だ東上線は有楽町線の方がショートカットしているので、所要時間の点で多少カバーできる点も有りますが、西武の場合所要時間・本数共に不利の為に、地下鉄直通が利用されないと言う事も有ります。それと並んで、今までにも指摘されている「ターミナルが同一の場合、選択乗車が出来ないと地下鉄直通運転は敬遠される」と言う事が、西武有楽町線の場合はモロに影響しているとも言えます。

 ではどうすれば良いのか?13号線直通が起死回生策にならないとなると、私には「お荷物線活性化」の方策は無いと言えます。そう手間が掛からずにできる方策は「池袋〜練馬間の選択乗車の制度化」しかないでしょう。あとはメトロに掛け合って「地下鉄線内急行運転」を行うしかないと思います。上手くダイヤ設定をしてあげれば、新桜台・千川・要町の3駅を通過する列車を多少ならば設定する事が可能でしょう。
 しかしこの方策がどれくらいの効果が有るかは、正直言って疑問です。ここで述べて置いて何ですが、それでどれ位の乗客が転移するかといえば多分池袋線利用客の10%未満でしょう。それでも小さくない数字ですが、それで巨額の建設費を掛けて作った路線が上手く活用されているかといえばNOです。
 もし西武有楽町線にもっと乗客が転移していれば、池袋線の利用客が減り池袋駅の1番線10両化のような輸送力増強的設備投資をしなくて済んだ筈です。西武に取り西武有楽町線への乗客転移は減収要因です。その点から言えば巨額の投資をした西武有楽町線は利用されても困るし、有効に活用できなければ投資が無駄になると言う「お荷物路線」と言う状況はなかなか解消されないでしょう。「解消する妙策は無い」と言うのが正しいかも知れません・・・。


 今回ネタを探しに出かけられないので、家の近くの馴染みの有る路線を取り上げましたが、その路線を「要らない」「お荷物」と酷評しなければならない状況には忸怩たるものが有ります。
 しかし残念ながらそれが現実です。近年練馬区の交通は有楽町線・大江戸線の2本の地下鉄開業と西武線の地下鉄乗入で対都心交通は格段に便利になりました。しかし練馬区民の中で比較的人口の多い西武池袋線沿線住民は、池袋→西武線で直行・新宿→池袋経由か練馬で大江戸線乗換・都心→池袋で乗換と言うルートを変えないで居ます。この事が豊島線を中途半端な位置に置き(池袋直通が有るので微妙に利用する)西武有楽町線を「お荷物路線」としているのです。
 そのパターンを変えさせる事は極めて難しいといえます。その中で今の輸送形態を如何するか?豊島線(豊島園)と西武有楽町線を如何にするか?と言う問題は、新生西武にとっても重い問題であると言えます。





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