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効率の良いインフラ構築例とは? −湘南モノレール−



TAKA  2005年12月04日




 


(湘南江の島駅に進入するモノレール車両)



 皆さん今晩はTAKAです。今回は関東鉄道めぐり第6弾として湘南モノレールを取り上げます。
 丁度先月何回か仕事で江ノ島に行く用が有りました。江ノ島へのアクセスを考えると小田急江ノ島線・江ノ島電鉄・湘南モノレールが有りますが、小田急江ノ島線が藤沢で実質的に系統分割してしまった現在では、東京や横浜からのアクセスを考えるとターミナルが京浜東北線(根岸線)・東海道線・横須賀線(含む湘南新宿ライン)と接続している大船から出ている湘南モノレールが一番便利です。
 湘南モノレールは日本でも此処と千葉にしかない「サフェージュ式モノレール」です。その形態は独特で有ると同時に色々なメリット・デメリットが有る交通機関です。その様な点を踏まえつつ「効率的なインフラ構築のあり方」と言う視点を絡めて湘南モノレールを見てみたいと思います。


 ●湘南モノレール概要

 元々湘南モノレールは京浜急行が持っていた「京浜急行有料道路」等のルートの上に作られた日本最初の懸垂式モノレールで、実際的にはサフェージュ式モノレールの実験線として建設された路線です。(大株主が普及を図った三菱グループで、試験線と言うのは湘南モノレールHPでも認めている)
 「 湘南モノレールHP
 又全線6.6kmの単線で大船・江ノ島両ターミナルは棒線での折り返し構造、富士見町・湘南深沢・西鎌倉・目白山下の各駅でのみ交換可能で、ツーマン運転だがターミナル駅以外は車掌が集札して中間駅は無人駅と、都市交通としては最低限の設備で運行されています。
 その様な簡素な設備でも最大限に活用して、3両編成モノレールで7分半毎・毎時8本運転が行われています。距離に比例しての交換駅の密度・配置の絶妙さがこれだけの輸送力をもたらしていると言えます。


 ●湘南モノレール試乗記

 湘南モノレールには11月17日・24日の朝8時台に下り(大船→湘南江ノ島)に乗車しました。
 湘南モノレールのターミナルは大船駅ですが、流石にターミナルなので大船駅の駅前にはかなりの人の流れが有ります。それで切符を買って(パスネットは使えない)ホームに入ってみるとビックリ、ホームから溢れるほどの乗客が待っています。かなりの逆方向の流動が有ると言えます。
 その最後尾に並んで待っていると大船行きが入線してきます。上り列車も東京通勤にはチョット遅めの時間帯(大船着8時過ぎ)でもかなりの乗客が居り乗車率にして120%程度です。

 ①湘南モノレール5000系            ②モノレール大船駅構内
    

 7分半毎運転で未だ待ち合わせ時間に余裕があったので、1列車落として座っていく事にします。列車が到着して降車するとすぐ乗客が乗車し発車です。ダイヤ的にはかなり苦しい折り返しです。1列車落としても又同じ状況になり朝の下りはかなりの乗客が有ります。
 大船を発車すると片側1車線の道路の上を右に左に曲がりながら進みます。サフェージュ式モノレールの特徴で、かなり左右に揺れると同時にかなりの速度(60km程度は出ている)で走る上にゴムタイヤ式の特徴で厳しい勾配も設定されて居るので、正しくジェットコースター状態で体感速度感は120%です。
 最初の駅富士見町で対向列車と交換です。原則的に一駅毎に交換駅が有るものの、片側1車線の道路の上に交換駅を作っているので、富士見町の場合道路上を完全に塞いだ形で駅が出来ています。

 ③富士見町駅                 ④富士見町駅での交換風景
    

写真にある混雑状況も車内も2つ目の湘南町屋で殆どの客が降りて、空席が半分位になってしまいます。湘南町屋には三菱電機の工場があり此処への通勤客が朝の下りの乗客のかなりの部分を占めています。(湘南深沢にはJR東日本大船工場が有るが、此方の利用客は少ないようだ)
 
⑤湘南町屋駅                 ⑥朝下り車内(大船〜富士見町)
   
 湘南町屋の先は朝の下り列車と言う感じで空いて運転されています。流石に8時半近くになると上りの列車も立ち客がチラホラの状況になります。只車掌だけは前に行ったり後ろに行ったり走り回っています。ドア扱いと集札の両方を担当するのはかなり忙しいことも有るのかもしれません。
 
⑦朝下り車内(目白山下〜湘南江ノ島)


 大船から僅か14分で湘南江ノ島です。目白山下〜湘南江ノ島間にはモノレールには珍しいトンネルもあり(他は東京モノレール位?)トンネルを出るとすぐ湘南江ノ島です。
 湘南江ノ島は江ノ島から見ると国道463号線と江ノ電江ノ島駅の先にあり、歩くとかなりの距離が有ります。多分江ノ電が自分の駅位置の有利さを確保する為に湘南モノレールの交差協議に抵抗したのかもしれません。(後は住宅密集地での用地問題が有るだろうが)


 ●湘南モノレールのインフラとしての素晴しさ −極めて効率の良いインフラ形態−

 湘南モノレールは日本でも珍しい「単線のモノレール」ですが、かなりの輸送量を運んでいます。
 「 湘南モノレール輸送量
 実際モノレールに限らず「都市の新交通システムは複線運転」と言うイメージは有りますが、その必要が有る場合が全てとは限らず、投資のコストと効率から考えれば最低限のインフラで効果が発揮できれば最高です。その点は私の知人KAZ様が自分のサイトのコンテンツで述べられている通りです。
 「 IDOstyle 湘南乗り物散歩
 KAZ様の先に話された内容と被るので書こうか迷ったのですが、正しくKAZ様が述べられた通り湘南モノレールは都市インフラの効率の良い構築と言う視点では極めて模範的例だと言えます。
 単線3両編成のモノレールで毎時8本の高頻度運転を行い、年間1028万人の人員を運ぶ事が出来るインフラと言うのは極めて効率が良いといえます。
 私も前に他のサイトで同じサフェージュ式の「千葉都市モノレール」について述べた事が有ります。
 「 千葉モノレール訪問記 (交通総合フォーラム)」
 この記事の中で述べていますが、千葉都市モノレールは同じサフェージュ式モノレールで輸送人員は良いとこ勝負と言う状況です。しかし距離は千葉都市モノレールの方が長い物の湘南モノレールほど効率の良い輸送をしていません。当然湘南モノレールは黒字ですが千葉都市モノレールは赤字です。
 では何故こうなるか?と言う疑問が出てきますが、これは比較すれば明らかで「千葉都市モノレールの過剰なインフラ」が原因で有る事は間違い有りません。千葉都市モノレールは導入のために導入街路を整備しわざわざ複線でつくり、その上短距離で効率の悪い路線までご丁寧に作っています。この様な重いインフラ投資をして利用客が同じぐらいであれば、贅肉デブ(千葉都市モノレール)が苦戦して、筋肉質の男(湘南モノレール)が善戦するのは当然の話です。
 つまりは「都市交通だから複線で大規模のインフラを作らなければならない」と言う事は有りません。湘南モノレールは全線片側1車線の車道の上か専用地の上に作られていますし、モノレール導入のために極端な街路整備もしていません。又最低限の単線に最低限の駅舎で済ませています。別に極めて大規模な需要が望める地域でなければ、このインフラで十分です。
 しかしインフラは後から追加する(例えば単線→複線化・交換駅増加)等は大変難しくなります。後からの街路拡幅は困難さが増しますし、モノレールの桁を動かしたり変える工事は普通鉄道と、比べ物にならないほど難しいです。この点は十二分に認識して、長期的視野に立ち綿密な計画を立てていかなければなりません。「効率のいいインフラ」「無駄な規模のインフラ」「安物買いの銭失いのインフラ」の差は正しく紙一重です。
 要は投資金額と需要量を良く考えながら、表題のように「効率の良いインフラ構築」をする事が重要で有るのです。湘南モノレールはその効率の良い運営形態と言う点で大きな見本を示していると言えます。






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