このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

多摩都市モノレール運賃値上げに対する一考察

 皆さん今晩はTAKAです。私は仕事の関係上多摩地域や神奈川県内の鉄道を結構利用しますが、そのとき気になった事を書き込みます。

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 此の頃立川に仕事先が出来て、15日に用事があり本厚木から立川まで「小田急小田原線〜小田急多摩線〜多摩都市モノレール」と言う経路で移動しました。
小田急線沿線から立川の場合、横浜線・多摩都市モノレール・南武線の3ルートが有りますが、横浜線は八王子経由で迂回ですし、南武線は混んでいる上に12分毎で不便ですし、多摩モノレールは多摩線に乗り換えなければならないと言う感じで、どれを利用しても一長一短です。
私も場所と状況で使い分けますが、経堂〜新百合間では南武線を新百合以西からは多摩モノレールを使います。

 私は風景も良く、座れて多摩モノレール自体は好きなのですが、15日多摩センター駅でパスネットの残額が少なく切符を買おうと券売機の前に立ってみたらビックリしました。なんと運賃が値上がりされているではありませんか!!
今まで立川北まで360円だったのが400円になっています。此の頃”パスネット命”だったので、全然運賃は気にしなかったのですが、いざ切符を買うとなると”多摩モノレールの高運賃”と”値上げの少ない時代に値上げしなければならない状況”が気になってきました。
と言う事で運賃値上げについて調べてみようと思い、家に帰って多摩都市モノレールHPと国交省鉄道局HPを見てみたら、出ていました。

(多摩都市モノレール値上げ関係)
http://www.tama-monorail.co.jp/news/unnchinkaitei/jissi.html
http://www.tama-monorail.co.jp/news/unnchinkaitei/ninnka.pdf
http://www.tama-monorail.co.jp/news/unnchinkaitei/ninnka.pdf
(国交省鉄道局HP) http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/08/080729_.html

 確かに8月20日から運賃が値上げされていました。内訳を見てみれば値上げと据え置きの区間があり「立川(北・南)〜多摩センター間」は一番運賃の上がっている区間にヒットしてしまっています。
それでも”高い運賃”である事は間違いありません。多摩都市モノレールでは申請時に千葉都市モノレールや東京臨海高速鉄道と比べて”他のモノレール・新交通と比べて割高感が生じない”運賃設定に努めても、比較対象が高いのでは仕方ないでしょう。それは下記の比較を見ても明らかです。なんせ初乗り2回迂回ルートの多摩センター〜立川の稲田堤迂回ルートとモノレールが同額なのですから・・・。それが”絶妙”ともいえますが・・・。
(新百合ヶ丘〜立川間 JR470円・モノレール630円多摩センター〜立川間 JR+京王・モノレール共400円)

 でも、今までも決して利用客が少ない感じではなかったのに、(約10万人/日の利用客)経営的には14年度で約26億赤字であるというのも問題の話です。
ましてや”混雑緩和”にロングシート化をする位なのに値上げですから・・・。

(ロングシート車デビューの案内) http://www.tama-monorail.co.jp/news/longseat/longseat-debuet.html

確かに多摩センターや立川北では状況によっては座れるイメージはありましたが、実際には利用客がそんなに少ないのかな?と思い、仕事で利用するついでに実際に現地を見てみようと思い、9月22日と24日偶々利用する機会があったので、現地を見てきました。

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 「多摩都市モノレール乗車レポート」

 9月22日と24日の2日間仕事で立川と小田急線方面を移動するついでに、モノレールを利用して状況を見てきました。
先ず最初に参考資料とその時の写真の掲載先のサイトのアドレスを記しておきます。ご参考に御覧下さい。

(参考資料:多摩都市モノレールの各駅乗降人数) http://www.tama-monorail.co.jp/monorail/people14-15.html
(参考資料:多摩都市モノレール運行概要) http://www.tama-monorail.co.jp/monorail/operation.html
(参考資料:多摩都市モノレール1000系の概要) http://www.tama-monorail.co.jp/monorail/rollingstock.html

 ●9月22日 14時26分発 多摩センター→立川北
 9月22日仕事で立川へ移動の為、小田急多摩センター駅で下車し多摩都市モノレールに乗り換えました。駅前広場の人工地盤を多摩センター駅へ歩くが、人工地盤上にはかなりの人出があります。ホテル・大型店・ベネッセや朝日生命のオフィスビル等かなりの集積があり多摩NTの中心としてかなり成熟してきています。
又モノレール多摩センター駅への通路にも両方向へかなりの人の通行があります。それが全てモノレール利用客ではないにしても、京王と小田急の中間位の人出があります。
駅に入り自動改札を通りホームへ上がります。ホーム上は数十人の人が列車を待っています。

「9月22日 14時半 多摩センター駅状況」


10分毎の運行間隔である事を考えてもモノレールにそれなりの利用客があるのは状況を見て明らかです。
少々待ち着た列車に乗り込みました。来た列車は改造されたばかりのロングシート車両です。多摩センター発車時点では先頭は空席が多いものの、最後尾には立ち客が居て平均すれば座席がさらりと埋まる位多分100名強程度の人が乗っていた感じです。

「9月22日 14時半 多摩センター発車時点車内」


 そのまま数名〜20名強の乗降客が各駅であるだけで進みますが、中央大学・明星大学駅では降車は少数ですが、ホームには事業が終わる時間だったのか400名以上の人が待っています。
中央大学・明星大学発車時点では、最前部から写真を撮るのも憚れる位の乗車率で、”ラッシュ”と評しても過言ではない100%をかなり超える乗車率になりました。多摩モノレール第3位の乗降客数は伊達ではない感じです。
その後も各駅で数名の乗降があり京王線連絡の高幡不動に着きました、高幡不動では3割ぐらいの降車がありましたが、降車の半分ぐらいの乗車があり、多少空いただけで立川へ向かいます。

 その後又各駅で数名〜20名強の乗降客があり、全体的にはそんなに混雑率が変わらずに立川南に着きます。立川南ではかなりの人数(見た目では150〜200名位)の降車があります。
やはり中央線乗換を含めて立川の求心力は多摩都市モノレール沿線で強い物がある事を実感させます。
立川南でかなりの降車があった後、座席が埋まる+若干の立ち客で立川北へ向かいます。

「9月22日 15時 立川南〜立川北間車内」


立川北では私を含めて50名強程度の降車があり、その降車より若干多い程度の乗車があり列車は上北台へ向かい発車していきました。立川南の降車客は中央線乗換客も多く居たでしょうが、立川北の降車客50名強は明らかに目的地が立川の客でしょう。
しかし高島屋・伊勢丹の2つの百貨店とファーレ立川という業務地域がある割には、降車客が少ないな〜と言うのは感じました。

 立川北駅を降りて仕事の目的地に向かう為、高島屋の前を通りファーレ立川を通り抜けていきましたが、駅も2つの百貨店と直結している割には人も少ないですし、高島屋の中ものぞいた感じでは「閑古鳥」程ではありませんが、そんなに人が入っている感じではありませんでした。
又ファーレ立川もビルは立派ですが人通りはまばらな感じで、モノレールの駅周辺だけを比べたら下手したら多摩センターの方が人出がある感じです。只いつも中央線で立川に入るときには立川駅の自由通路や駅前広場には学生等の乗降客で何時の時間もあふれています。

 その様な状況から考えると、やはり東京の動脈中央線の威力は大きく、多摩の南北交通を担う多摩都市モノレールもまだまだ中央線の足元にも及ばないと言う事は感じました。やはり多摩では南北交通や南北交流は弱いし、成長しづらいのではないかと言う事を痛感しました。

● 9月24日 12時28分発 立川南→多摩センター
 9月24日立川での打合せの後、立川中華街で”陳健一の麻婆豆腐”を食べた後(これが結構上手い)13時半の新百合ヶ丘での打合せの為、見学方々多摩都市モノレール→小田急多摩線で移動しました。
JR立川駅の自由通路は相変わらずの人出です。グランデュオを出て南口広場の人工地盤を立川南へ向かいます。広場の人で自体もやはり南口は北口に比べて人出が少なく(特に場外競馬が無い日なので)広場の人出は、多摩都市モノレールへの乗換客とおぼしき人が半分、それ以外が半分と言う感じです。
やはり駅に入り自動改札を通りホームへ上がります。ホーム上は20人位の人が列車を待っています。

「9月24日 12時半 立川南駅状況」


昼間の12時半と言う時間を考えるとそれなりに居る感じでは有りますが、それなりしか居ないともいえる程度の人数です。列車を待っている間北行きの列車も来ましたが、其方は立ち客が1両15名程度居る感じで到着し、座席の半分強の乗車率で出発していきました。
此方の南行きの列車も立川南に入って来た時には座席が3分の2埋まる程度で、立川南での乗客のかなりは私を含めて立ち客になり1両10名強程度の立ち客を出して出発しました。
(そう言う訳なので、私も何時もは立川南でなく立川北で乗車します。只今日は飯を食べた都合もあったので・・・。何時も立川南で座れるのは50%位の確率です)

「9月24日 12時半 立川南発車時点車内」


立川南を出発後は22日と同じように各駅で乗降同数位の数名〜20名程度の乗降のまま高幡不動へ到着します。高幡不動のホームを見たらなんと学生らしき人でいっぱいです。高幡不動では降車は少数でしたが、乗車は1両数十名いて、クロスシート車であるので、あっという間に出入口周辺は人で混雑し、ラッシュ時の状況になってしまいました。

「9月24日 13時前 高幡不動発車時点車内」


確かにこれだけの乗客が昼間でもある場所が有るのであれば、2ドアと言う車両の特性から考えてロングシート化は必要でしょう。前々日のロングシート車両に乗車して、この日のクロスシート車の混雑状況を見ればその必要性は分かります。展望のよさを生かせるクロスシートも一部残す方針を含めて賢明な決断だと思います。でもあの車両でどれだけの輸送量を想定していたのかも疑問です。
未だ計画輸送量に遠く及ばない今のこれ位の混雑で、改造を迫られる車両を設計した了見も又問題が有るのでは?とは感じました。
程久保・多摩動物公園では多少の乗降しかなく、中央大学・明星大学に着きます。中央大学・明星大学では100名程度の乗車客がホームで待っています。又中央大学・明星大学では立川南・高幡不動で乗車してきた乗客の殆どが降車してしまいました。そのためホームは乗降客が入り乱れかなりの混雑です。

「9月24日 13時頃 中央大学・明星大学駅状況」


又今回は大塚・帝京大学でも20名程度降車があり(帝京の学生かは不明)多摩センター到着時点では立ち客と空席を平均すると座席がさらりと埋まる程度の150名程度の乗客が居る感じで、多摩センター終点に到着しました。

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 〜多摩都市モノレール沿線の状況〜 「立川の拠点性と立川開発促進が多摩モノレールの乗客数に影響する?」

 今回仕事での移動を兼ねて5回位多摩モノレールを利用し、立川周辺を1回車で移動して観察しましたが、そのとき感じたのは「やはり立川の求心力は極めて強い」と言う事です。
又「利用客増大には開発促進が重要だがその余地も以外に乏しい」「開発余地が大規模にあるのは立川隣接の高松・立飛の周辺にしかない?」と言う事も感じました。
そう考えると多摩都市モノレールにとり「立川の地域としての存在」は拠点性・開発余地共々重要と言う事になると思います。


  ●立川の拠点性について
 確かに立川は多摩地域の中心都市ですし、多くの百貨店・商業ビル・ファーレ立川等のビジネス地域がある多摩都市モノレール沿線で最大の拠点都市です。又立川駅はモノレールを始めJR中央・南武・青梅線や多数のバス路線が集まる多摩最大の交通ジャンクションです。
その中で確かに人出の軸は立川駅にあり、その中心は中央線の存在です。立川は交通のジャンクションであり中央線で都心と直結しているからこそ、多摩地域で頭一つ飛びぬけた拠点都市となっています。事実立川駅〜ファーレ立川の間にある再開発地域にある高島屋・伊勢丹の二つの3万㎡を超える大型百貨店があれども、人出は立川駅とその直近周辺に比べたら少ないです
。 又立川は多摩都市モノレールが出来てから、南北両方とも”革命的”と言える位変わりました。私の大学時代には今の北口のモノレールの桁の所に高島屋の前の店舗と駅ビルが有る位で、八王子の方が栄えていて、何時も立川はパスする状況でした。
それが多摩都市モノレールと再開発で状況は一変しました。北口では再開発で一変しましたし、南口もグランデュオ等のビルが出来かなり開発が進んでいます。

 そういう点からも立川は今では比較的大きな拠点性を持っていますし、其処へ直通するルートを選んだ多摩都市モノレールは少なくともルート選択では成功であったと思います。ありえない話でも立川を外れるルートだと、モノレールはもっと燦々たる状況だったでしょう。又立川が此処まで発展しなければモノレールの利用客が此処まで行かなかった可能性も有ります。
その点から考えても、現況では立川は多摩都市モノレールの死命を制する主要拠点都市と言う事になると言えます。

 その中で都市の活性化をもたらす都市の回遊性ということから考えると百貨店2つとファーレ立川に隣接した地域に立川北駅があり、開発進行中で乗換もしやすい場所に立川南駅が有ると言うモノレールの両立川駅の立地は回遊性向上には十分寄与していると言えます。
多摩都市モノレールは、玉川上水は比較的乗換しやすい位置に駅が設定されていますが、多摩センター・立川はコンコースを出て多少歩かないと乗換出来ない位置に有ります。(高幡不動は降りたこと無いので分かりませんが)
この駅設置は乗換利便性の点では色々批判を受けていますが、立川のように「其処が目的地or一時中継地」と言う立地の場合には、都市内の回遊性を演出するという点ではプラスであると思います。モノレール乗換客でJR駅構内の自由通路と立川通り沿いの一部だけの賑わいが南口広場や両百貨店方面にまで広がり、それがより開発を促進しています。

 そういう意味では立川の再開発による拠点性向上と多摩都市モノレールは切っても切れない不可分の関係にあり、その相乗効果と開発余地の存在で立川は八王子等を追い越し、多摩で頭一つ出る拠点としになりえたのではないかと考えます。
そう考えると立川と多摩都市モノレールの関係は地域拠点構成の一つのモデルたり得る例と言っても過言ではないと思います。後はこれが多摩都市モノレールの経営にもう少し寄与してくれればいいのですが・・・。


●「多摩モノレールの乗客増は立川の開発促進が肝要?」

 此処10日間程度、時間は色々ですが仕事がらみで多摩モノレールの玉川上水〜多摩センター間で5回ほど乗車しました。その時周囲の状況を車窓から見て居ましたが、意外に開発が進んでいて乗客増をもたらしてくれる様な開発余地のある地域は意外に乏しいと言う事は感じました。
具体的に家並みが切れる地域と言えば、「多摩丘陵の山越え」の中央大学・明星大学〜多摩動物公園間と、「立飛企業・新立川航空機・立川基地跡の中を通る」立川北〜泉体育館の間位です。

 昔は万願寺周辺や上北台もそんなに家が密集して居ない感じでしたが、万願寺も区画整理が終わり見違える状況ですし(多少開発余地が有るが)、上北台も新青梅街道沿いに多数のローサイド店舗等が立ち並び私の知る10年前とは見違える状況です。

 この様な状況から、沿線内需要を創造する様な開発余地がある地域は限られていると言えます。(中央大学・明星大学〜多摩動物公園間は丘陵の山越えで大学が2つもある状況だからこれ以上の開発は難しいでしょう。作るとしたらもう一つ大学を作って貰うか?)
そうなると、多摩モノレール沿線で需要を創造できるような開発余地があるのは実質的には「立飛企業・新立川航空機・立川基地跡の中を通る」立川北〜泉体育館だけになります。

 前にも「立川は多摩都市モノレールの死命を制する主要拠点都市」と言う事は、今の現況では間違いありません。
しかし立川も駅前やファーレ立川は「多摩にある副都心」と言っても過言ではありません。しかし立川基地跡地は自治大学校や国立災害医療センター等の国の施設が有りますが、以外に低利用地や空き地が多くもっと開発余地が有ります。
今では立川基地跡は国等の災害関係施設の拠点ですが、街的には賑やかさも無く「多摩の副都心に隣接する公共施設の拠点」地域としては内容が偏りすぎています。

 又立飛企業・新立川航空機の保有する約100万㎡の土地が多摩モノレールの立川北〜泉体育館に広がっています。しかしこの地域は貸工場・貸倉庫・ゴルフ練習場・大型自動車販売店・新立川航空機工場等が有る物の開発は進んでいません。

(立飛・新立川航空機保有地域の状況)



※上記に付きましては航空写真に関しましての著作権は立飛企業株式会社様( http://www.tachihi.co.jp/group/index.html )に帰属致します。
 又航空写真から矢印で引き出したキャプションは現地調査等で私が付記した物です。

今の現状では、立川近接の素晴らしい立地の土地が生かされていない状況です。又せっかくこの地域内に「高松・立飛」の2駅ができた物のそれらが全く生かされていません。それは多摩都市モノレールで有数の乗客の少なさを見れば明らかです。
(因みに1日の乗客数は高松→1045名、立飛→750名 乗客数表は前を参照)

 これだけ纏まった土地は、多摩都市モノレール沿線には残っていません。又立地を考えても多摩都市モノレールが地域内に2駅もあり、その上立川の市街地にも隣接と言う比較的恵まれた環境です。
この地域を開発し、其処に定住したり利用する住民や用務客が多摩モノレールを使えば、ある程度の増収効果を望めるでしょう。

 立川の街中で見れば、「立飛企業・新立川航空機・立川基地跡」の3点セットは、より立川の拠点としての開発を促進する為の重要地点であると言えるでしょう。
その中で(1)立川基地跡内残存地域に関しては、災害関連施設に関しては一連の整備がほぼ完了しているので、残余の地域は公共施設でも集客性の有る施設や住宅整備等に廻し開発を促進するのも必要と思います。
又(2)新立川航空機本社工場に関しては、移転を促進しその跡を、「立川から近くなんとか歩ける」と言う立地を考慮し、ビジネス地域的な物のにしても十分の需要が有ると思います。
又(3)立飛企業の本社・立川製造所地域は立川市街地とも多少離れているので、マンション等に開発するのも一つの方策であると思います。又芋窪街道にも面しているので、駐車場等を整備の上アウトレットモールのような商業施設を作るのも一策です。

 立川が多摩地域の中央線沿線都市の八王子等に比べ拠点としての将来性に優れている理由の一つに、「立飛企業・新立川航空機・立川基地跡」の存在が有ります。これだけの敷地が「開発余地」として存在している地域は多摩でも他には殆どありません。
立川はこの地域の開発が成就すると開発が完了するとも言える状況です。只今まで近隣でファーレ等の開発が進めど自社敷地の開発には消極的だった立飛企業・新立川航空機が開発に乗り出すかが問題でしょう。

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 〜多摩モノレールが高運賃であるのは正しいのか?〜 「多摩都市モノレールの運賃と経営」

 最後に結論として「多摩都市モノレールの運賃と経営」について考えてみたいと思います。これは不可分な関係にありますし、今回の値上げも経営状況改善の為です。
しかし必ずしも「経営が厳しいから高運賃で増収」という考えも正しいとは限らないと考えます。以下では結論に変わりそのことについて考えたいと思います。


●多摩モノレールの運賃設定について

 確かに多摩モノレールは「1駅100円」の特別割引を導入し部分的値下げを行っています。このワンコイン運賃は私は恩恵を受けたことは無いですが、確かに和寒様のような「立川から柴崎体育館までちょっと利用しよう」と言う様な人々をモノレールに引き寄せるには有効な方策です。
只効果は限定的です。多摩都市モノレールには鉄道では平行路線がありませんが、立川以北では立川バスとの競争にさらされています。この区間は万願寺・大塚周辺と並ぶ近距離客獲得に有望な区間です。
しかし「モノレールによる芋窪街道整備等でバスの定時性は上がっている」「モノレールは泉体育館まで裏道を走り泉体育館以南の表道の芋窪街道は立川バス独占状態」「運賃はそんなに変わらないがバスの方が本数が多く、駅に登らなくても良い」「バスは路線が家の近くまで来るがモノレールは駅まで歩く」と言うよな状況にあり、近距離客を取り込むまで行っていません。実際立川バスは開通前は戦々恐々としていましたが、今はモノレールが”1駅100円”を打ち出しても脅威に感じていません。
そう考えるとこれらの区間は運賃値上げされていないので値上げの影響は無いにしても、競争力と言う側面からすると今の運賃ですら厳しいと思います。(現状維持で良いという考えも有りますが・・・)

又今回の値上げでは、巧妙に考えているのは間違いありません。主要客の中央・明星の大学生に対しては主要利用区間の多摩センターや高幡不動までは普通運賃は据え置いていますが、通学定期は値上げしています。又競争力の有り逸走の可能性の少ない多摩センター〜立川北・南の様な主要目的地立川と比較的遠い区間で値上げをする等の方策を採り、値上げしても乗客が逸走しないように努力はしています。

 しかし立川〜玉川上水・高幡不動・多摩センター間が値上げされると、沿線住民は直行できるため値上げしても逸走しませんが、それらの駅で乗り換えして多摩都市モノレールを利用して立川に向かう客は、高運賃を嫌い逸走する可能性が有ります。(私が例示したような立川〜多摩センター間等)

 その様に考えると100円区間を除く今の初乗り区間運賃(200円)と立川からの遠方主要駅への運賃は、モノレールの乗客増を目指すにはマイナスと言う側面も有ります。やっと増えてきた乗客が減る可能性も有ります。
 しかし現況のままでは収入増が望めない事から考えると、値上げは致し方ないと言えます。そのジレンマの中で、練られた運賃値上げであるとは思いますが、グロスの収入を増やすには冒険ですが、バス競合区間ではバス運賃まで下げる等の”競合区間値下げして乗客を集める”と言う方策も有ります。
例えばJR以外の接続民鉄(京王・西武・小田急)は多摩都市モノレールの大株主で出向等の人的繋がりも有ります。それらを有効的に活用して、民鉄〜モノレールの乗り換え切符を売り出し、それらには乗り継ぎ割引をつけて南武線・横浜線等に流れている乗客をモノレールに誘導する等の方策を考えるのも方策も有ると思います。

 値下げした上で増収を図るにはかなりの乗客増を望まなければなりませんが、値上げ&乗り継ぎ割引切符等の方策も有ります。そう考えれば「高運賃である事が正しい」とは一概に言い切れませんし、「高運賃以外にも多摩都市モノレールの経営を救う方策はある」ともいえると思います。それらを実現性や運賃と旅客数の関係等を慎重かつ総合的に一度考えるのも、多摩都市モノレールの経営とその有効活用に必要であると思います。


●多摩都市モノレールの経営状況

  では何故多摩モノレールはこんなに経営状況が悪いのでしょうか?新交通システムでは「千葉都市モノレール」等の経営悪化が指摘されていますが、多摩都市モノレールは千葉都市モノレールに似たような状況が有るといえます。
又どちらも経営状況は深刻で、所管自治体等で検討委員会等が作られ経営の検討もされています。

(多摩都市モノレールの決算) http://www.tama-monorail.co.jp/outline/settlement(18).html
(千葉都市モノレールの決算) http://www.chiba-monorail.co.jp/kessan/kessan-h15.htm
(多摩都市モノレール「機能するバランスシート −新交通システムとバランスシートの役割−」)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2003/06/DATA/70d6c101.pdf
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2003/06/DATA/70d6c103.pdf
(千葉都市モノレール)
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/j_gaimono/kentoucyousa/
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/j_gaimono/kentoucyousa/tsuika/hyouka/houkoku/houkoku2.pdf

 確かに多摩モノレールはインフラ部1163億円は東京都が事業者であり、多摩都市モノレールはインフラ外部1258億円の部分のみ投資負担をしています。その点では半分は都持ちの”手厚い補助”を受けています。

 それに多摩都市モノレールは(ゆりかもめ等もですが)軌道法上の軌道に関する道路占有料の徴収に関する法が無い為、道路占有料も払ってい無い等でも、”法の隙間”であるにしても優遇はされています。

 又合理化もかなり進んでいるのは明らかで、当初事業計画時の職員数より19%少ない人数で運営していますし、人件費も12年度〜14年度の間で1割減らしています。

 その点では”補助は多く””合理化は進んでいる”状況で15年度でも営業損失が529百万円・純損失が1915百万円であり、13年度の当期純損失2979百万円より改善されていると言えども、悪い経営状況であることは否定できません。

 では何故こんなに優遇されているのに経営状況は悪いのでしょうか?確かに問題です。これが全ての回答ではないと思いますが、東京都が過去に専門委員に付託して「機能するバランスシート −新交通システムとバランスシートの役割−」という分析をした事が有ります。

 上記報告書を読むと、何故赤字なのかの分析がされています。その分析の要旨は下記の通りです。

1)乗客1人当たりの営業収入(169円)はほぼ計画通りだが利用人員が計画に比べ30%減った為、その分計画より収入が減収になっている。
2)インフラ外部投資が616億→1258億に倍増しているので、減価償却費が計画から倍増している。

つまり「需要予測の過大な見積」と「追加工事等による投資金額の増加がコスト増を招く」が多摩都市モノレールの赤字体質の原因であると言う事を、上記報告書では指摘しています。

  又その「需要予測の過大な見積」と言う点は正しく千葉都市モノレールと同じ現象です。只千葉都市モノレールの場合総投資額はインフラで2080億円インフラ外部で480億円です。
どちらも総投資額は2400〜2500億円ですが、運営主体のインフラ外投資負担額は480億円と1258億円ですから千葉都市モノレールの15.2㎞と多摩都市モノレールの16㎞の開業距離を考えても多摩都市モノレールの負担の重さは明白です。
多摩都市モノレールの場合”半分負担の手厚い補助”と言えども千葉都市モノレールと比較すると負担は重いと言えます。この負担差が多摩都市モノレール約34.5億円の減価償却費&約14.5億円の支払利息と千葉都市モノレール約20億円の減価償却費&3.7億円の支払利息の差になって現れていると言えます。
これだけでも多摩都市モノレールの収益はかなり圧迫されていると言えます。「減価償却費&支払利息」を如何にするかが多摩都市モノレールの経営改善に必要ではないでしょうか?

 只徐々にでは有りますが、輸送人員も増加してきています。又前にも述べたように収支状況も均等までは程遠い物の改善はされてきています。それには多摩都市モノレールの会社単体では致し方ない理由が原因のものも有り、最終的には収支均等までは難しくても、せめて営業費用を賄える所までは、今回の運賃改正が”吉”と出れば改善される可能性は有ります。(少なくとも改善はされるでしょう)

 その様な経営努力の上で、その先は”如何にして根本的対策を考えるか”運営者・都・沿線自治体を含めて考える必要が有ると思います。もう今回以降の運賃上げには頼れないでしょうし、急激に劇的な利用客増加も期待できないでしょう。と言って”多摩都市モノレールが無い交通状況”と言うのも、いまや沿線多摩地域で想定する事もできません。そういう点では”地域に貢献する利便性”が有るのですから、それを踏まえ総合的に考える必要が有るでしょう。


●最後に私の私見を・・・

 今回何時も時々ですが利用している多摩都市モノレールを「運賃値上げ」と言う事件を奇禍として改めて観察してみましたが、思ったより乗客が乗っている感じでした。
只2日間の限定的時間帯だけで特徴的なことも有ります。それは各連絡駅間及び連絡駅と中央大学・明星大学駅との間の乗客が、立川北〜多摩センター間でかなりのウエイトを占めているということです。
これは乗降客数からも証明されています。乗降客数の順位は首位から立川北→多摩センター→中央大学・明星大学→立川南→高幡不動でこの5駅が乗降客1万人/日を超えています。
いまや多摩都市モノレールの主要顧客は各乗換駅間の客+中央大学と明星大学の学生と言う事になります。

 これは通学定期の乗客(中央・明星両大学の学生)が多い事を示していますし、通学定期の乗客が多いと言う事は定期の割引率から乗客の割合に比べて収入が伸びない事を示しています。
その上乗客数が漸増しているにも関わらず、当初計画数より現状の利用客数が40%少ないと言う現状では当然収支計画は狂い、赤字になってしまうと言う事になります。
実際に多摩都市モノレールの経営状況は単体でも単年度で30億の赤字で累積赤字が164億円と言う状況で正しく危機的状況です。

 上記の資料も多摩都市モノレールの危機的状況を示しているのですが、但し実際に「多摩都市モノレールは不要だったか?」と言えばNOになります。
南北交通が弱い東京多摩地域にとって多摩都市モノレールは非常に地域の利便性向上に貢献している事は明らかですし、「高いけど以外に速く便利」と言う意見があるのも事実です。又大塚・帝京大学周辺や万願寺〜甲州街道間等では多摩都市モノレールが開業してからかなり開発が進んでいて、建物等も立ってきています。そういう点からも多摩都市モノレールの建設意義は十分あったといえます。

 問題は「甘かった計画」にあることは明らかです。今の利用状況は一概に言えないにしても、前に述べたような状況で局所的にはかなりの混雑が有るのは事実です。どの区間の利用客が狂って利用予想40%減の状況になったかは分かりませんが、今より3割〜4割多い乗客が乗っているのなら今の4両編成では輸送力が不足する感じはします。
そういう点からも、「建設の意義はあったが大本の計画に問題が有った」と言う事は明らかです。

 しかし現状で過去を振り返って愚だ愚だ言ってもなにも解決しません。その計画のミスのツケが多摩都市モノレールの高運賃と今回の値上げに現れているともいえます。今回の値上げの申請理由にも「経営状況」が理由として上がっています。
少なくとも確かに投資金額から考えれば、インフラ外の軌道事業での収支均衡を目指せば高運賃にならざる得ません。確かに他の新交通・モノレールと比較すればそんなに高くない運賃でも、一番最初の比較の通り決して安くはありません。
少なくとも多摩都市モノレール1本でいける地域であれば、多摩都市モノレールを選択したほうが有利ですが、沿線以外から沿線への需要を引き込むには、運賃が高いと言えます。新百合ヶ丘〜立川間で160円運賃が違えば多摩都市モノレールを選択する人は少なくなります。

 そういう点では「何故高運賃か?」は明らかですが、高運賃が経営にプラスであるかは明らかではありません。今回の運賃は有る意味高値のギリギリまできていると思います。特に一番値上げの弊害を受けた多摩センター〜立川南・北間は、多摩センターで乗り換えて求心力の強い立川に向かう沿線からの需要等が逸走する可能性は有ります。
又只ですら利用客の少ない立川以北では、直接・間接競合の立川バスも道路環境の改善で運行の定時性が高まっていますから、値上げを機に立川バスへ逸走する可能性も有ります。そういう点では、この高運賃と今回の値上げが経営にとってマイナスになる可能性も有ります。

 只同時に多摩都市モノレールの経営も改善しなければなりません。現行でも自治体から貸付金や固定資産税1/2免除等の補助は受けていますが、それだけでは改善されません。又値上げ申請でも、この値上げで赤字が解消される見通しも示されていません。その中で如何にして経営を改善するか?を色々な方法で考えるべきでしょう。そのときに高運賃の是非等を含め総合的に考えるべきだと思います。

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