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闇の子供たち

【著者】 梁 石日    【装丁】 幻冬舎文庫 478頁
【価格】  686円+税  【発行】 平成16年4月

果たしてこの本はフィクションなのか、ノンフィクションなのか。あまりにもインパクトの強い内容だけに、素直に受け入れがたいというのが本音である。
タイという実在の国が舞台であるだけに、真実であると認識せざるをえないのだが、それにしても目を背けたくなるような場面が次から次へと現れる。
山岳地帯で育ったセンラーは、わずか8歳のとき実父により「人買い」に売られる。行き着いた先はバンコクの幼児売春宿だ。この宿へは、世界中の幼児性欲者がやってくる。もちろん富裕層で、なかにはヨーロッパから夫婦でやって来る者もいる。センラーたちはこの宿の一室に閉じ込められ、来る日も来る日もこうした性欲者の群れの玩具にさせられる。
こうした情景の描写はあまりにもストレートで醜悪そのものだが、それだけに自分の務めを果たそうとする子供たちの一途な姿が痛ましく、読む者の胸を打つ。
エイズに感染し、幼くして命を絶たれる子供も多い。また、売春だけでなく、臓器売買も日常茶飯事だ。
もちろん、根底には貧困の問題があり、経済格差がある。
ここでは、人間の尊厳とかモラルとか、あるいは憐憫の情など何の意味もなさない。人間の欲望の際限のなさと持てる者の無神経さ、傲慢さには、我々の個人的嫌悪感など無力に等しい。
何ともやりきれない一冊である。


2010.5.6

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