このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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しずかの朝
【著者】 小澤 征良 【装丁】 新潮文庫 333頁
【価格】 476円+税 【発行】 平成23年3月
しずかは25歳。妻のある男性との恋に破れ、勤めていた会社は倒産。短い人生の中でもボトム状態にある。
折りも折り、母親から見合いを勧められ、気が重いながらも会ってみることにした。小村さんは別れた剛さんと比べると少し物足りないが、悪い人ではなさそうだ。何回かあっていると、惹かれるところがないでもない。
ところが突然、この小村さんが不慮の事故で亡くなってしまう。
しずかは、かねて小村さんとも相談していた横浜の洋館(ロシアン・ハウス)での仕事に応募し、住み込みで働くことになった。
ターニャは、亡夫、ニコライの15年忌のために大勢の人を招待する。しずかの姉、恭子は夫が出張中とのことで、2日も前から泊まりこみで準備を手伝う。ターニャは月に2回、自宅でロシア料理を教えるほどの腕前である。
15年忌当日は、なんとしずかの母までやって来た。喫茶店のマスター、山田さんやターニャの生徒、日下部さん。そしてなんと、海外留学中の息子、瀬能府さんも帰ってきたし、音信の途絶えていたニコライの弟、ユーリまで現れた。
しずかは思う−−−。考えてみれば、小村さんと行き会わなければ、今日の自分はなかったかも知れない。小村さんは亡くなったけれども、まったくいなくなったとは思えない。生きている人も亡くなった人も、人はなにかの形でつながっている。だから今、会ったこともないニコライさんに親しみを覚えるのだろう。
人と人のつながりに思いを馳せながら、おいしい料理をいただいて、よい音楽を聴く。
生きることの幸せとは、こういうことを言うのであろう。
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