このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

金閣寺

【著者】 三島 由紀夫     【装丁】 新潮文庫 373頁
【価格】 552円+税       【発行】 昭和35年9月

1950年(昭30)7月1日、「国宝・金閣寺焼失、放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世間を驚かせた。
三島由紀夫の金閣寺は、この青年僧の心の軌跡を追った小説である。本来ならノンフィクションとして採り上げられるものであろうが、三島は「私」の告白という手法をとっている。
何ゆえ青年僧は放火に及んだのか。当時の報道によると、統合失調症といった精神鑑定もなされたようだが、三島は公開された動機にこだわることなく、「私」の心理に迫っていく。
「私」は舞鶴近く、成生岬の寺の子として生まれた。
父は金閣寺の住職と懇意で、私を金閣寺で修行させるつもりでいた。中学校在学中、父は亡くなったが、私は臨済学院中学校へ転向して金閣寺の徒弟になった。
私は強い吃りである。このため、他人となじむことが苦手なまま成長した。
それでも金閣寺では、鶴川という少年と親しくなった。東京近郊の裕福な寺の息子だ。闊達な人柄で気の置けるところがない。
寺では老師に目をかけられ、大谷大学へ行けることになった。大学では柏木という内飜足(ないほんそく)の青年と知り合う。身体的障害を逆手に取るような鬱屈した正確の持ち主だ。
私は金閣の美に圧倒されてきた。絶対的な“美”である金閣とどう対峙すべきか。
もちろんこうした部分は、犯人の名を借りた三島自身の思想そのものである。
難解な内容なのだが、流麗な文体はさすが、と思わせられ読み進んでしまう。





2011.8.7

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