このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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恐怖の2時間18分
【著者】 柳田 邦男 【装丁】 文春文庫 295頁
【価格】 552円+税 【発行】 1986年5月
1979年3月28日午前4時、米国、ペンシルバニアにあるスリーマイル島原子力発電所2号炉が警報音とともに突然停止した。これが事故の始まりである。実は、この発電所では以前からしばしば小さな事故が起きていた。しかし、そうした事故は日常的なものとして処理され、原子炉は“だましだまし”運転されてきた。
先端技術の集積である巨大システムの事故は、単純な要因で発生することはない。黙過してきたいくつかの原因が、あたかも予定されていたかのように収斂して起きるのだ。“そんな馬鹿なことが”の重なり合いである。もちろん、システムの欠陥もあればヒューマンエラーもある。
本書は第1部では、この事故が起きた必然性を解き明かす。
第2部は、知識不足と誤報による社会の混乱がテーマである。冷却塔直上の放射線量が地表のものと誤って伝わったり、責任者不明のまま情報が飛び交ったりと、原発周辺は混乱を極める。
アメリカ原子力規制委員会(NRC)ですら、明確な判断が下せなかった。
それが原発事故というものであろう。
本書は1983年に単行本で刊行されたが、社会の安全性を担保する考え方は、まったく今と変わらない。どんな機械も故障するし、どんな優秀な人でも間違いをおかす。
原発とて例外ではない。絶対安全な原発などないのだ。
まこと、本書で述べられている次の一文には背筋が寒くなる。
<「水素ガスの爆発」、「炉心溶融」−−−それは最悪の事態であると同時に、最後の事態である>
まさか、福島の事故を予測したわけでもあるまいに・・・。
28年前の警告が生かされず、今回の事故を招いてしまったことは、無念としか言いようがない。
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