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うそうそ

【著者】 畠中 恵          【装丁】 新潮文庫 348頁
【価格】 514円+税       【発行】 平成20年12月

一太郎は江戸一番の繁華街、通町にある廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の若だんなである。生まれつき体が弱く、すぐに熱を出す。
長崎屋には多くの妖(あやかし)が住みついている。一太郎の面倒を見ている兄やの仁吉と佐助もこうした妖である。
さて、この若だんなが湯治のため、この二人と手代の松之助(継兄で庶子)を伴い箱根へ出かけることになった。若だんなにとっては生まれてはじめての遠出である。
一行には、このほか鳴家(やなり)3匹も加わった。体が弱い若だんなのこと、小田原までは船で渡り、小田原から塔ノ沢までは駕籠で行こうという算段だ。
ところが、途中で仁吉と佐助にはぐれてしまい、宿では真夜中、侍にさらわれてしまう。しかも山中では天狗に襲われるといった始末で、とても湯治どころではない。
本書ではさまざまな人物が登場するが、それぞれ見かけだけでは分からない過去や心の傷をもつ。勘定高いだけに見える雲助の新龍もつらい経験の持ち主だ。
それは神や妖とて例外ではない。
人と神と妖とにかかわらず、また時代にかかわらず通じるものがある。
体が弱いだけにあたたかい、一太郎の優しさが伝わってくる。
ベストセラーもむべなるかなといったシリーズだ。





2011.8.20

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