このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

黄色い目の魚

【著者】 佐藤 多佳子      【装丁】 新潮文庫 455頁
【価格】 629円+税       【発行】 平成17年11月

木島悟の父テッセーは、悟と妹の玲美が小さいときに家を出た。父に関する記憶はほとんどない。10歳のとき、その父と独りで会うことになった。二人で食事をし、父の部屋へ寄ってみると絵であふれていた。
村田みのりは二人姉妹の次女で、父母との4人家族だ。家の中ではなぜか疎外感を感じているが、通(とおる)ちゃんという叔父さんと仲がいい。通ちゃんはマンガ家兼イラストレーターで、結構有名だ。
物語は、二人の語り(おしゃべり)という形で進んでいく。口語に近いだけに読みやすい。
この二人が同級生として高校で知り合うことになる。木島はサッカー少年でGK。父の血を引いたのか、絵が好きだ。美術の授業で村田をデッサンして以来、気がつくと村田の表情を追っている。
村田はなかなか周囲になじめない。ただ、そうした自分を否定しようというわけでもない。自意識が確かと言うべきか。
木島には、こういう村田が気になってしかたがない。
高校生だけに、二人を取り巻く世界は広くない。通ちゃんのほかは、せいぜい「ハーフタイム」というカフェの似鳥ちゃんという女性バーテンダーが主要登場人物のすべてである。
それでも、こうした日常の中に少しずつ変化がある。
友情とも恋愛とも違う、名づけようのない感情にも次第に形が見えてくる。
誰でも通り過ぎた16歳とは、なんともどかしい季節であろう。





2011.9.3

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