このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
|
新版 チェルノブイリ診療記
【著者】 菅谷 昭 【装丁】 新潮文庫 245頁
【価格】 400円+税 【発行】 平成23年7月
本書は1998年8月、晶文社から刊行されたものを福島原発事故を機に文庫として発刊したものである。
著者は2004年から松本市長の要職にあるが、もともとは外科医で1996年1月から5年半、ベラルーシの首都ミンスクにある甲状腺ガンセンターとゴメリ市の州立ガンセンターで甲状腺ガンにかかった子どもたちの治療に当たった。
信州大学助教授の職を辞しての国際ボランティア活動である。
本書の要点は二つある。
ひとつは、ベラルーシという国の経済的脆弱さと、それに起因する医療の劣悪さである。医療従事者は安い賃金で、古い設備と器具により手術に当たらなければならない。手術の数によって病院の収入(国からの交付金)が決まる仕組みになっているため、時間に追われた中途半端な施術が多く、何回も手術を受ける子どもが珍しくない。
そしてもうひとつの要点は、−言うまでもなく− 内部被曝の怖さである。被曝後5年ほど経ったころから小児甲状腺ガンが急増し、汚染地域では発症率が通常の100倍にも達するという。通常1万人に1人程度の新規患者数が100人ほどに膨らむのだ。
悲惨な現場で活動してきた著者は、新版のあとがきで、原発に依存しない社会の実現を強く訴えている。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
|