このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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黒い家
【著者】 貴志 祐介 【装丁】 角川ホラー文庫 392頁
【価格】 680円+税 【発行】 平成10年12月
1997年、第4回日本ホラー小説大賞で大賞を受賞した作品である。
若槻慎二は昭和生命京都支社の査定主任である。保険金の支払いなど金の動きに直結しているだけに、トラブルや犯罪に巻き込まれることも多い。
なかには意図的に保険会社へクレームをつける客もいる。苦情は日常業務のうち、と言ってもよさそうだ。
その若槻へ指名で呼び出しがあった。菰田重徳という男だが、若槻にはその名前に心当たりがない。それでも無視するわけにいかず、嵐電で嵯峨まで出かけて行った。目指す家は、敷地は広いものの荒れ果てている。呼んでみたが返事がない。そこへ菰田が帰ってきて一緒に家へ入ったところが、菰田の息子・和也が首を吊って死んでいるのを発見する。
警察は、首に残った紐の痕から自殺と結論づけた。絞殺してから吊るした場合と首を吊って死んだ場合とでは首にできる傷痕がまったく違うらしい。
和也は500万円の死亡保険に加盟していた。
若槻は死体を発見したときの様子から、菰田による保険金殺人を疑う。保険金の支払いは本社扱いとなり、査定に時間がかかる。菰田は毎日支社に現れ、早期の支払いを請求する。
ようやく、保険金が支払われることになり、若槻は納得しがたい気持ちと同時に安堵感を取り戻すことができた。
ところが、これは事件の始まりで、これから戦慄のドラマが展開する。
さて、本書で興味をそそるのは、何と言っても保険業界の内幕である。保険金殺人はときとしてニュースになることがあるが、実際は詐取の目的が達成されてニュースにならないものもかなりあるのではないか、と思わせる。
生命保険は、業界の人に言わせれば安心を売っているということにもなろうが、その対象は“命”である。
してみれば、奇麗ごとだけでは済まされない。ましてや、モラルが崩壊していると言われている現代である。
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