このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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閃光
【著者】 永瀬 隼介 【装丁】 角川文庫 612頁
【価格】 819円+税 【発行】 平成18年5月
小金井公園近くの上水路で中年男の他殺死体が発見された。被害者は、頭部を鈍器で殴られ扼殺された後に、橋の上から川へ投げ落とされたのだ。身元は所持品から、発見現場にほど近い駅前でラーメン屋を営む葛木勝、53歳と判明した。
警視庁捜査1課で事件の一報を受けた滝口政利は、被害者の名前を聞いたとたんに血相を変え、捜査本部が置かれた小金井中央署へ駆けつけた。定年まであと2か月、眠ったような日々を送っていた滝口だが、こと本件に関しては異常な執着ぶりで、被害者の身辺捜査を受け持つ「敷鑑」に名乗りをあげた。
組んだ相手は所轄の若手刑事、片桐慎次郎である。片桐は、滝口からありふれたように見える殺人事件の裏に潜む秘密を聞かされる。
昭和43年、新人刑事だった滝口は、3億円事件の捜査本部に配属されていた。やがて滝口は、犯人につながる有力な手がかりをつかむ。地元の不良グループ5人が容疑者として浮かんできたのだ。滝口は先輩刑事とともに、グループのヘッドである19歳の少年の家を訪ねる。だが、母親に居留守を使われた二人は、少年に会うことができなかった。
そして、あろうことか、少年はその夜「青酸カリ」を飲んで自殺してしまうのだ。実は少年、緒方純の父親は警察官だった。滝口は警察上層部よる事実隠蔽を疑うが、組織の決定に逆らうことはできない。
そして、それから34年たった今日、忘れることのできない名前を耳にした。葛木勝こそそのグループの仲間だった。
滝口は、目の前の殺人事件を足がかりに封印された3億円事件の謎をこじ開けようとするが、依然大きな力が立ちはだかって思うように動けない。
そのうち、不良仲間が次々と殺されていく。なかには、真山恭子という、当時名前のあがらなかった美貌の女性も容疑者グループにいたことが分かる。
果たして連続殺人の犯人は誰か。
長年の怨念のなかから、独りの人物が浮かび上がってくる。
本書は、現金輸送車を襲撃した場所や銀行名、企業名などの固有名詞は変更されているものの、ほとんどが現実の3億円事件を踏襲している。それだけに大いに興味をそそられる。
事件の真相は闇の中ながら、過去と現在を行き来させて緊張感を高める作者の手法は見事の一言につき、時の経つのを忘れて惹きこまれてしまう。
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