このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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不夜城
【著者】 馳 星周 【装丁】 角川文庫 533頁
【価格】 667円+税 【発行】 平成10年4月
著者のデビュー作である。本書は96年度、ミステリー関連の様々なランキングでベストワンに選出され、第18回吉川英治文学新人賞を受賞した。
新宿歌舞伎町を舞台に、中国人同士の戦いを活写している。
主人公の“おれ”は、台湾人の父親と日本人の母親の間に生まれた30代の男、劉健一で仕事は故買屋。中古品なら何でも扱う。陰謀うずめく黒社会のなかで器用に生きてきた。
とにかくこの世界では、自分以外に信用すべきでなく、他人と対峙するときには逡巡すべきでない。
事態が一変したのは、かつての相棒・呉富春が新宿へ帰ってきたためだ。富春は1年前、上海マフィアのボス、元成貴の手下を殺害し逃走していたからだ。健一はそれを知った元に呼び出され、3日以内に富春を見つけてつれて来いと脅される。
同じころ、健一のところへ夏美と名乗る女から電話がかかってきた。果たして彼女は何者か、そして何のために健一に近づこうとするのか。
要は中国人の内紛の話であるが、中国人社会といっても、北京マフィアに上海マフィア、香港グループに台湾勢力といった連中が複雑にからみあっていて話はややこしい。
生き残るためには、お互いに保険を掛け合って、それでも裏切りは当り前といった中を泳いでいく。
いま進んでいる方角が安全なのか、危険なのかも分からない。
共感できる人物がまったく見当たらないという、未知の世界の物語である。
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