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日本のいちばん長い日(決定版)
【著者】 半藤 一利 【装丁】 文春文庫 365頁
【価格】 590円+税 【発行】 2006年7月
1945年の8月14日正午から8月15日正午までの24時間を追ったドキュメントである。
1965年、大宅壮一編として刊行された書を、当時文藝春秋編集部次長で実際に執筆に当った著者が新事実などを加筆し、「決定版」として再刊行したものである。ひるがえって、前作は翌年東宝で映画化され、当時、世間の話題をさらった。
本書はプロローグで、7月27日のポツダム宣言受信、8月9日の御前会議などを経て14日朝までの政府・軍部の動きをなぞる。14日の御前会議の描写から本文になって、1時間ごとのドキュメント仕立てになる。
会議では陸軍の本土決戦論と政府・海軍の戦争終結論とが真っ向から対立し、ついには天皇の御聖断を仰ぐという異例の結末になった。日本は、遅きに失したとはいえ、最後の最後になってようやく正気の選択をしたといえるだろう。もちろんそこには、“国家元首”としての天皇の存在が大きかったことは言うまでもない。
こうして無条件降伏の結論がでたのだが、15日正午の玉音放送までには紆余曲折があって、気の抜けるときがない。一部若手将校によるクーデター計画、侍従による玉音録音盤死守など、振り返ってみれば、放送までには国民の見えないところで薄氷を踏むような終戦劇が繰り広げられていたのだ。
組織は、それぞれ目的をもってつくられるものであるが、肥大化し権力を手にするにつれて当初の目的を見失い、組織の存続自体が目的になりがちだ。あげくの果てには精神論と結びつき、正論が封殺される。様々な理屈がつけられ、現状追認と正当化が繰り替えされるに至っては最悪である。
65年前の終戦の記録からは、現在の社会においても学ぶことが多い。
2010.5.15
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