このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
【著者】 柴田 よしき 【装丁】 角川文庫 396頁
【価格】 600円+税 【発行】 平成9年10月
性愛小説の名を借りた警察小説というよりも、警察小説の名を借りた性愛小説というべきだろう。ここに登場するような警察官に性犯罪など取り締まってほしくない、というのが偽らざる心情だ。村上緑子(りこ)は、男性絶対優位の警察組織のなかにあって女であることを主張し、奔放に生きる女性刑事である。
本庁勤務時代、上司の安藤警部と不倫の関係にあり、その妻との諍いが原因で新宿署へ異動になった。当時、同僚の高須警部補とも関係があった、というのだから団塊世代の人間には理解しがたい人物である。
さらに新宿署に来てからは、年下の鮎川と関係をもち、さらに同僚で交通課の陶山麻里と同性愛の仲になったというのだから開いた口がふさがらない。
新宿署は日本一の繁華街を管轄しているだけに、犯罪の種類も多種多様である。
しかし、今回明らかになった犯罪は、今まで経験したことのないものであった。
ビデオ店から押収したテープの中に、少年が暴行を受けているものが見つかったのだ。いわゆる“やらせ”ではなく、実際の犯行場面である。その後、その被害者の少年たちが次々と殺されていく。
果たして犯罪の目的は何か、そして犯人は?
最後に意外な展開が待ち受けているのは、推理小説の常道である。
ところで、本書の意図は何だろう。
まさか“警察内部はこんなに乱れている”ということを暴露したかったわけでもなかろうに。
あるいは、“性の奴隷”のごとき女性はどこにでもいる、女は見かけでは分からない、という教訓なのか。
表現の自由は当然のこととして、作者の意図がもうひとつ理解できない作品である。
2011.10.22
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |