このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
【著者】 小野 不由美 【装丁】 新潮文庫 437頁
【価格】 590円+税 【発行】 平成3年9月
ホラー小説というのだろう。登場する超常現象については、信じるとか信じないといったレベルの話しではなく、こうした小説を読む場合は自明のこととして受け入れることが前提だ。
教育実習のため母校の高校に戻った広瀬は、教室で不思議な雰囲気をもって孤立している生徒、高里に出会う。
高里は小学生のころ忽然と行方不明になったことがある。1年後、祖母の葬儀の日にどこからともなく帰ってきたのだが、世間では「神隠し」にあったと噂された。本人、その間の記憶はまったくない。
そういう彼をいじめた者は、すべからく報復ともいうべき不慮の事故に遭う。そこから“高里は祟る”と恐れられるようになった。
広瀬は高里をかばおうとするが、学校では次々と凄惨な事件が起こり止めようがない。同級生は彼に取り入ってみたり反発してみたりするのだが、死人の数は増える一方だ。
ただ、いじめを受けたとしても、高里自身は相手に強い恨みをもつような人間ではない。考えられることは、神隠しにあって彼我の世界から現世へ戻ってくるとき、彼を守護したいとする何者かを連れてきてしまったことだろう。そうした魑魅魍魎が高里の意思とは関係なく、高里を守るつもりで働いているのだ。
彼の周りに現れる白い手や奇態な動物の正体を突きとめようなどとは考えないこと。
なにしろ本書はホラー小説なのだから。
2011.10.23
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |