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龍は眠る


【著者】 宮部 みゆき   【装丁】 新潮文庫 537頁
【価格】 743円+税   【発行】 平成7年2月

語り手は新聞社系週刊誌の記者、高坂昭吾である。
物語は、嵐の夜に車で走っていた高坂が、稲村慎司という高校生に出会うところから始まる。慎司を車に乗せ走り始めて間もなく、高坂は路上のマンホールの蓋が開けられていて、雨水が激しく流れ込んでいるのに気づく。慎司は、子どものマンホールへの落下事故と蓋を開けた犯人像を言い当てる。慎司は通常の人には見えないものを読み取る力、すなわち超能力がある、という。
一方、高坂の職場へ慎司のいとこを名乗る織田直哉という青年がやってきて、慎司の超能力を否定する。
事件は、高坂のもとへ差出人不明の白紙の手紙が相次いで届き、脅迫めいた電話がかかってくるところから始まる。高坂のかつての婚約者で事情があって別れ、今は学校法人副理事長と結婚している小夜子の身の安全を警告する内容だ。
何ゆえ今頃になって、かつての婚約者の名が出てくるのか、高坂はまったく理解できない。
そして、事件が起きる。
さて、本書を読んで超能力を信じるか信じないかは読者の自由である。
ただ、私たちは、自身の五感でとらえられないものは信じない、という傾向が顕著だ。この世には、我々が感知できなくても存在するものはいくらでもある。
見えないから、聞こえないから“ない”、とは言い切れないかもしれない。





2011.11.1

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