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女たちのジハード


【著者】 篠田 節子    【装丁】 集英社文庫 522頁
【価格】 705円+税   【発行】 2000年1月

1997年(平9)、浅田次郎の「鉄道員」とともに直木賞を受賞した。
読み始めたら止まらない一冊だ。
中堅保険会社に勤める5人のOLの物語である。
個性的なキャラクターの5人が、それぞれの道を旅立っていく。男女機会均等とはいいながら、実態が伴っていないのは周知の事実だが、それを現実の場面で明らかにする。
話の中心は、行き遅れの斉藤康子。30歳を過ぎてもとりたてて目標がない。漫然と日々を送っていたが、自分の城を持とうと思い立ち、暴力団の妨害を乗り越えて競売物件であるマンションを手に入れる。
美人のリサは、条件のよい結婚に策略を巡らす。広報室異動により会社の顔になったが、実際の仕事は、社会貢献事業として支援物資を送ること。なかなか楽ではない。
紀子は19歳。妊娠したため好条件の結婚をするが、なにしろ家事がまったくできない。呆れ果てた夫から暴力を受けるに及んで離婚することになる。
みどりは有能なOLだが、同じ会社に勤める夫が課長に昇任したのを機に子会社へ出される。転勤辞令により単身赴任もままならぬまま退職することになった。
5人のなかで最も積極的な生き方を選択しているのが沙織だ。得意の英語力を生かし、自立を目指す。しかし、英語で食っていくというのはなかなか簡単ではない。それでもなお、沙織の積極姿勢は変わらない。
さて、3年の間にこの5人がどう変わっていくか、それは本文に任せよう。
男性優位社会のなかで、踏まれても虐げられても逞しく人生を切り開いていこうとする女たちの姿が清々しい。
女性作家ならではの作品ということができるだろう。




2011.11.5

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