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根津権現裏


【著者】 藤澤 清造     【装丁】 新潮文庫 377頁
【価格】 514円+税    【発行】 平成23年7月

芥川賞受賞作「苦役列車」の著者、西村賢太氏の人生を変えたという作品である。
根津権現近くに下宿する私は、ついぞ金に縁がなく、加えて長年にわたり骨髄炎に悩まされている。自らの不遇に恨みを募らす毎日だ。
そこへ同郷の友人、岡田徳次郎急死の報がもたらされる。
岡田は仕事をもらっている宮部に精神病院に送り込まれ、そこで首を吊って死んだという。岡田は念願かなって女中との交際を始めたばかりだったのだが、一体何があったのか。
岡田は亡くなる数日前から頻繁に私を訪ねてきた。
世話になった宮部の不正を知人の白井に告げたことで、宮部を裏切ったとの自責の念に駆られての相談だ。死ぬほどに責任を感じているという。私が説得を試みると、その場は説得に応じたようにみえるのだが、気持ちは安定しないようだ。私は二転三転する岡田の気持ちについていけず、冷淡な対応をとるようになる。
亡くなってみれば、反省点はいくつもある。しかし、逃れようのない貧しさがある限り、根本の解決はないのではないか?
頭の中は、堂々巡りを繰り返す。





2011.11.26

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