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神様からひと言


【著者】 荻原 浩      【装丁】 光文社文庫 449頁
【価格】 686円+税    【発行】 2005年3月

若手サラリーマンを主人公にしたエンターテイメントである。
建前と個人的欲望のからみあいが根底にありながら大真面目に振る舞う会社社会は、外から眺める分には滑稽だが、当事者にしてみればそんなことは言っていられない。
まっすぐな神経をもって生まれ者にとっては、何とも住みにくいところだが、それに耐え抜くのがここで生きていく唯一の方法だ。
本書の主役、佐倉凉平は27歳。業界最大手の広告代理店から、ワケあって中堅の食品メーカー、珠川食品へ転職した。所属は販売促進課。前職のキャリアが買われての配属である。
しかし入社早々、新商品開発会議の席上で率直に意見を述べたために古参の専務と対立し、「お客様相談室」へ追いやられてしまう。
ここは社内では「リストラ要員強制収容所」と呼ばれているが、日の当たらない場所での凉平の奮闘ぶりには清々しさすら感じる。スタッフはそれぞれの事情を抱えて集められた者ばかりだ。
「お客様相談室」とは名ばかり、要は苦情もみ消し係りである。「お客様」は正当な意見を言う人ばかりではない。ストレス解消が目的としか思えないクレーマー女もいれば、異物混入を捏造し、謝罪金を受け取ろうとする男もいる。
凉平は、ギャンブル狂ながら直接の上司である篠崎とともに、これらの問題解決に奔走する。
まるで劇画のようなストーリー展開で、作者のペースに引きずり込まれてしまうこと請け合いだ。






2011.11.30

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