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【著者】 小松 左京 【装丁】 小学館文庫 (上)417頁(下)397頁
【価格】 (上)(下)とも 517円+税 【発行】 2006年1月
本年7月26日に亡くなった小松左京の代表作品。
1973年(昭48)3月に出版され、400万部を売り上げた世紀のベストセラーである。翌年の正月映画にもなり大ヒットした。
1973年は、前年から続いた浅間山噴火、西之島海底火山噴火(5月)、根室半島沖地震(6月)といった火山噴火や地震が相次ぎ、また近海では魚類の異常行動がみられるなど、日本全体が言い知れぬ不安に包まれた年であった。
年末には、高度経済成長の終焉を告げる石油ショックが襲い、経済的にも日本人の自信を喪失させるような環境にあった。
本書は、こうした背景の中で驚くべき売り上げを示したわけだが、単なる空想小説ではなく、科学的思考の深さ、そのリアリティーが多くの読者を惹きつけたと言えるであろう。
海底探査船の操縦を職とする小野寺は、田所博士と幸長助教授とともに日本周辺の海溝調査に向かう。太平洋沖の島が一夜のうちに水没してしまったための現地調査である。そこで3人は、かつて見たこともない地殻変動を目にすることになる。
地球の大地は堅固なものというイメージがあるが、実は極めて危ういものだ。地球を50cmの球体とした場合、マントルの外側を覆っている地殻(地球の外皮)は0.2mmに過ぎない。マントルの対流がいくらゆっくりだとしても、いつかはそのエネルギーが放出される日が来るだろう。それが日本列島を沈めるほどのものであったとしても、地球の規模と歴史から見れば、そうたいしたことではない。
さて、小説の中の日本列島は、噴火が相次ぎ、地震は日常だ。異常は東日本から西日本に及び、八丈島では全島避難の事態になっている。政府は1億1千万人の日本人を海外移住させるべく画策するが、簡単にはいかない。
国の方針はともかく、庶民にとってつらいのは、“日常”が奪われることである。当り前のように営まれる日々の生活の大切さが実感を伴って伝わってくる。
東日本大震災が現実のものとなった今、改めて自然というものの大きさを見直す機会になる傑作だ。
2011.12.10
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