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青の炎


【著者】 貴志 裕介    【装丁】 角川文庫 495頁
【価格】 667円+税   【発行】 平成14年10月

「倒叙推理小説」である。犯人が完全犯罪を計画し、実行する。それが成功したかにみえた時点で名うての刑事が登場し、犯行を暴いて事件を解決するというパターンだ。
完璧と思われた犯罪にも、どこかに小さな穴があ。捜査の側は、その一穴を見逃さない。
しかし、本書が他の倒叙推理小説と若干趣を変えるのは、犯人が高校生で、逮捕すればよい、というものではないことだ。そのため、他にはみられない結末が用意されている。
櫛森秀一は、鎌倉の進学校に通う高校2年生。女手ひとつで家計を担う母と、素直で明るい妹との3人暮らしである。
その家庭に母親が離婚した相手、前夫の曽根が居ついてしまった。なぜか、母は曽根に対して強く出ることができない。秀一は曽根の振る舞いに我慢できず、殺害を決意する。
用意は周到だ。法医学の本を何冊も買い込み、殺害方法を研究する。電気ショックで心臓を停止させる方法は、ほとんど痕跡が残らないらしい。小道具づくりは自分の技術の範囲内だ。
アリバイづくりも何とかなる。あとは実行あるのみだ。
犯行は予定通り進行した。
しかし、思いもしなかったところから犯行が露見してしまう。
一度罪を犯した者は、それを糊塗するためにさらに犯罪を重ねなければならない。
少年の孤独な戦いは果てることがない。






2011.12.25

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