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金正日 隠された戦争

【著者】  萩原 遼    【装丁】 文春文庫 335頁
【価格】  571円+税  【発行】 2006年11月

1972年から1973年まで、「赤旗」特派員として平壌に滞在した筆者の北朝鮮実証研究である。筆者は1969年から1988年まで、記者として「赤旗」に在籍していたが、本書はそうした経歴をまったく感じさせない。鋭い筆致で事実を積み重ね、“真実”を読者に訴えかける。
テーマは副題にあるとおり、「金日成の死と大量飢餓の謎」である。
1994年6月、カーター元大統領が訪朝し、雪解け間近かと思われたその直後、金日成が亡くなる。そして、300万人ともいわれる大量餓死事件が始まった。
筆者はこの2つの事件をつなぐ鍵として、金正日の終始一貫した政治施策をあげる。
そこから導き出された結論は果たして仮説なのか、あるいは真実をえぐりだしたものなのか。判断は読者おのおのに委ねるほかないが、筆者の真実をつきとめようとする姿勢と労力に対しては、ただ感服するばかりである。
大マスコミのニュースを見ていただけでは、決して到達することのできない領域だ。
現在、この世界で進行中のことだけに、いやでも関心をもたざるをえない一冊である。


2010.5.26

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