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ボトルネック


【著者】 米澤 穂信    【装丁】 新潮文庫 312頁
【価格】 476円+税   【発行】 平成21年10月

ぼくは嵯峨野リョウ。金沢市に住む高校生だ。2年前に事故死した彼女を追悼するため東尋坊を訪れたが、そのとき何かに誘われるように断崖から墜落してしまった。
気がつくと、なぜか金沢の街中にいる。見慣れたはずの町だが、どこか違和感を感じるのはなぜだろう。
不可解な思いで自宅へ帰ってみると、ぼくを出迎えたのは見たこともない「姉」ではないか。嵯峨野サキというのだとか。ぼくの家庭は父母に兄の4人家族だが、サキの家庭も父母に兄の4人家族だという。これはいったいどういうことなのか。
サキと話していると、どうやらサキの家庭は、あらゆる面でぼくの家庭より恵まれているらしい。ぼくの家庭は父母にも兄にも相当問題がある。
これは果たして夢なのだろうか。あるいは、現実に二つの世界が存在しているのだろうか。読者の疑問をよそに、摩訶不思議なパラレルワールドが展開していく。
家族、恋人、友人といった狭い範囲ながら、自分のいない世界を外から垣間見ることができた。結果、自分の存在意義を見い出すことができたような気がする。
ありえない時間と空間の中で、なぜか現実感が迫ってくる。承知のうえで作者の手の内に弄ばれるのも悪くない。





2012.1.16

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