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【著者】 中沢 けい 【装丁】 新潮文庫 340頁
【価格】 514円+税 【発行】 平成15年1月
中沢けいは、18歳、高校在学中に書いた「海を感じるとき」で群像新人賞を受賞した早熟の作家である。実のところ、その後この人の名前は忘れてはいないものの、意識の表面にはでてこなかった。「楽隊のうさぎ」は久し振りに手にとった彼女の作品だ。
物語は埼玉に住む奥田克久が中学校へ入学するところから始まる。花の木中学校では、生徒全員が部活をするきまりである。克久はブラスバンド部から熱心に声をかけられた。
同中のブラバンは、50人規模の編成で、全国大会出場の常連というレベルを保っている。悩みはご多分にもれず、部員の確保、とりわけ男子生徒の獲得だ。とくに今年は卒業生が多く、勧誘も必死である。
克久は、特に興味があるというわけではなかったが、ブラバンへ入部することにした。
担当は打楽器、ということになった。打楽器の練習は単調だが、しっかりとしたリズムを刻むのは傍でみているほど簡単ではない。
1年生から2年生へ。克久はブラバンの仲間とともに中学生活を送る。全国レベルを維持するためには、明けても暮れても練習だ。2年生になった克久はティンパニーを担当することになり、普門館の舞台(全国大会)に立つことができた。
取り立てて大きな事件が起きるわけではないが、過ぎ去った日々の郷愁を誘う、ひたすら懐かしい物語が心に浸みこんで時の経つのを忘れる一冊である。
2012.1.27
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