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【著者】 椎名 誠 【装丁】 集英社文庫 269頁
【価格】 429円+税 【発行】 1989年9月
椎名誠と息子、岳との物語である。物語とはいえ、おそらく実話と言ってよいものであろう。
保育園に通っているころ、両親が山好きなので“岳”という名前にした、とおしえたという。
椎名氏は作家であるばかりでなく、旅行家としても知られている。とくに、僻地、未開の地へ好んで足を踏み入れる冒険野郎だ。熱帯地帯から帰ってきたと思えば、数日後には北極圏にいるといった有様で、いきおい息子と接する時間は少ない。
しかし、子どもはそうした環境の中でも、確実に自立心を養いながら成長していく。小学生の岳はイガグリ頭で、ケンカをするとめっぽう強い。ひと昔前にはどこにでもいたガキ大将タイプだ。
その岳が最も関心を示したのは釣りである。それは小学校に入り、学年が進むにしたがって本格的になっていく。5年生になるころには、完全に父を追い越した。父は少ない時間を、できる限り息子と付き合うように努める。
本書の話は、その付近で終わっている。その後、少年はさらに成長し、おそらく父を見向きもしなくなるのだろう。美しい父子の物語は、永遠に続くというものでもない。
2012.2.10
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