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二十四の瞳


【著者】 壺井 栄      【装丁】 角川文庫 218頁
【価格】 262円+税    【発行】 昭和36年9月

昭和3年4月、瀬戸内海の小島の分教場へ一人の女教師が赴任してきた。岬分教場は入り江の突端に位置し、向かいの一本松地区は目の前にみえるものの、陸路は8キロメートルにもなる。新任の大石先生は、その一本松から自転車でやってきた。
岬分教場は、1年生から4年生までの約50人を、年配の男先生と新任の女先生の組み合わせで受け持つのが慣例である。5年生からは本校だ。
大石先生は女学校出の準教員ではなく、師範出の正規の教員だ。自転車でやってきて、しかも洋服を着ているということで、そのハイカラぶりがたちまち地域の噂になった。とにかく、なんでも話のタネになってしまう土地柄である。
さて、大石先生の担当する新1年生は12人。元気な子もいれば内気な子もいるが、家庭はおしなべて貧しい。
大石先生は赴任初年度の夏、怪我をして休職したが、5年生になったこの子らと本校で再会。さらに18年後、昭和21年に40歳にして教師に復職し、岬分校へ再赴任して当時の教え子に会う。
戦死した子もいれば、視力を失った子もいる。また、苦界に身を沈めた女の子もいる。総じて恵まれない子どもが多い。軍国主義教育のまっただ中で大きくなった子どもたちである。教育の持っている力 −ときとして恐ろしさ− がひしひしと伝わってくる。
著者の訴えんとしていることが、今日現在、必ずしも解決されていないのは、残念としか言いようがない。





2012.2.10

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