このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

疾走

【著者】 重松 清      【装丁】 角川文庫 (上)400頁 (下)364頁
【価格】 (上)629円+税 (下)590円+税    【発行】 平成17年5月

広大な干拓地と水平線が広がる町に暮らす中学生のシュウジは、腕の良い大工の父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の4人家族だ。この地では、昔からある集落を「浜」といい、干拓地の集落を「沖」という。シュウジの住む「浜」と新開地の「沖」とはしっくりいっていない。それは、子どもの世界においても例外ではない。
シュウジは走ることが好きで、「沖」の干拓地まで足を伸ばす。そこに教会があるのに気づき顔を出したところ、同級生で沖に住むエリに行き会う。エリは感情の起伏のない娘で、クラスでもういた存在だ。
おりもおり、この町に一大リゾートの開発計画がもちあがる。「沖」は軒並み地上げされ、住民は散り散りになった。エリの家族も東京へ行くことになった。
この時期、「沖」で火事が相次ぐ。明らかに放火なのだが、その犯人がこともあろうにシュウジの兄、シュウイチだった。中学校時代、成績優秀でもてはやされていたシュウイチが、高レベルの進学校へ行ってみると並みの生徒になってしまった。その落差を埋めることができず、犯行に走ってしまったのだ。
ここでは放火犯のことを「赤犬」という。「赤犬」は本人のみならず家族全員が忌避される。
父親は職を失い家出をする。母親は化粧品のセールスに精をだすが、ギャンブルと酒におぼれてしまう。家族は崩壊した。
シュウジは、中学校卒業を目前にして東京へ行く決心をする。





2012.2.15

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