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【著者】 荻原 浩 【装丁】 新潮文庫 492頁
【価格】 629円+税 【発行】 平成18年3月
新製品の香水ミリエルを売るために、企画会社がある噂を意図的に流す。渋谷の女子高生をモニターとして集め、作り上げたストーリーを彼女たちの頭にインプットする。
ニューヨークで悪名をはせたレインマンが日本へ来ている。レインマンは女の子の足を切り落とす悪魔のような男だが、なぜかミリエルの香水をつけていると襲われない。
高額のバイト料で雇われた彼女たちは、渋谷周辺でミリエルを配りながらこの噂を広めていく。ミリエルは企画会社の目論見どおり大ヒット商品になった。
ところが、レインマンの噂そのままに、都内目黒区で女子高生を殺害し、足を切り落とす事件が発生した。
警視庁捜査一課は、目黒署と合同で捜査本部を立ち上げ、事件の解明にあたるが、早期の犯人逮捕に結びつく有力な情報は得られない。
主人公である所轄の小暮は、本庁強行犯係の女性刑事、名島と組んで、殺された女子高生の交友関係を洗う敷き鑑捜査にあたることになった。
このコンビがなかなかいい。小暮はくたびれた中年刑事で所轄の巡査部長。名島は若い美人刑事で本庁の警部補。上下関係は見かけの逆だ。ただ二人は、伴侶に先立たれて子持ちという点が共通している。筆者の人物配置は絶妙である。
そこへ第二の事件が起きる。首を絞めるという殺害方法、足のないこと、その他あらゆる点で第一の事件と酷似している。同一犯の仕業とみて間違いない。
ところが、捜査の流れは、小暮と名島の考えとは違う方向へ向かいだす。進まない捜査に上層部は焦っている。しかし、二人は自分たちの信じるところを捨てることはない。
本書の面白さは、WOM(Word Of Mouth)すなわち口コミというテーマを話の基軸にとりあげたことだろう。現代の口コミは当然、携帯メールなども媒体として使われる。
本書では、口コミを通じて現代の女子高生の人間関係が垣間見れるのも興味深い。
2012.2.22
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