このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

葉桜の季節に君を想うということ

【著者】 歌野 晶午     【装丁】 文春文庫 477頁
【価格】 629円+税    【発行】 2007年5月

作者は2003年発表した本書により日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞を受賞した。
成瀬将虎は「何でもやってやろう屋」である。ガードマンが本業だが、パソコン教室の講師をはじめ依頼されたことは何でも引き受ける。
高校を出て2年ほど探偵事務所に勤めた経験があり、今回、探偵まがいの仕事を引き受けることになった。依頼人は久高愛子という白金台に住むセレブの娘である。成瀬と同じフィットネスクラブに通うキヨシに紹介されての仕事だ。愛子の祖父、久高隆一郎の死についての疑問を解明する。隆一郎は「蓬莱倶楽部」の霊感商法にのめり込んでいたが、何らかのトラブルに巻き込まれて殺されたのではないか、という疑いがある。
成瀬は蓬莱倶楽部の事務所を突き止めたものの、そこは倉庫で組織の実態がつかめない。しばらくしてようやく埼玉の知り合いから電話があり、蓬莱倶楽部の巡業先を知ることができた。会場には高齢者を中心に多くの客が集まり、巧みな話術と異様な雰囲気のなかで高額の商品を買っていく。
話は、探偵事務所時代の暴力団組織への潜入談を織りこみながら、自殺未遂の女性との出会いを軸に、若い時と70歳になってからの成瀬と成瀬を取り巻く面々を立体的に組み立てていく。
何とも不思議な時空間が作り出されている、この重層構造を理解するためには、もう一回読み返してみる必要があるかも知れない。






2012.2.26

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