このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

青い閃光

【著者】 読売新聞社    【装丁】 中公文庫 348頁
【価格】 705円+税    【発行】 2012年1月

1999年9月、茨城県東海村にあるJCO東海事業所で臨界事故が発生した。ウラン濃縮作業中にチェレンコフの「青い閃光」が発し、作業員3人が被曝、うち2人が死亡した。作業に使っていた沈殿槽が原子炉になったのだ。
当時の作業の様子を見ると、危険極まりないウラン濃縮が、あまりにも杜撰な方法で行われていたことに驚きを覚えざるをえない。ウラン燃料の濃縮度は、通常3〜5パーセントだが、今回の作業は18パーセント近くに濃縮する特殊なものだった。年に数回の作業のため専用の設備がなく既存の設備を流用していたが、使い勝手が悪く、「裏マニュアル」を作成して対処した。ところが、それでも非効率なため、現場ではさらに簡略な方法がとられていたという。
臨界を防ぐためには「容器の形状管理」と「溶液の質量管理」が絶対だが、そのいずれも無視されていた。丸型の容器へ多量の溶解液をバケツで流し込むという信じがたいやり方だ。
作業員への教育もできておらず、現場では危険性に対する認識が浅かった。事故は起きるべくして起きたと言ってもよい。
直径数十センチの容器内で起きた異常のため、周辺住民が避難を強いられた。屋内退避に至っては30万人以上だ。
わが国では身をもって原発の恐ろしさを体験することになったのだが、福島第一原発の事故をみると、果たしてJCO事故の教訓が生かされたかどうか。原発そのものの事故ではなかっただけに「原発本体は安全」という理屈にすり替えられることはなかったか。
今こそ、私たちは目を見開いて真実を突き止めなければならない。





2012.3.5

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