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自白

【著者】 和久 俊三    【装丁】 角川文庫 (上)301頁 (下) 33471頁
【価格】 (上)(下) 380円+税    【発行】 昭和59年9月

弁護士作家による法廷ミステリーである。
第一部の裁判編と第二部の復讐編で構成されている。
第一部では、刑事裁判の実態を、その進行にあわせて記述している。
事件は、病院長、出雲路綱雄の愛娘で大学生の晶子が誘拐され、暴行されたうえで殺害されたというものである。被疑者は花谷徹三と国松滋という晶子と同じ大学に通う男子学生だが、逮捕時期が異なり、また供述に食い違いがあるため分離して裁判が進められている。本書は京都地裁刑事第二部、岡田良輔裁判長による花谷の裁判について述べられている。
この裁判の難しいところは、被害者、晶子の死体が発見されていないこと、また凶器も発見されておらず証拠は被告人の供述のみ、という点にある。しかし、裁判になると被告人は従来からの供述を翻し、一転無罪を主張しはじめた。
若手弁護士の豊田慶治は、警察での違法な取り調べを問題にし、無罪を勝ち取ることができた。
素人目から見れば、被告が罪を犯したかどうかということが問題なのであって、取り調べ方法に多少の疑問があってもよいのではないか、と思うのだがそうはいかないものらしい。
さて、それではこの二人が犯人ではないかというと〜まことに納得できないことながら〜これは裁判結果とは別問題である。
そこで、出雲路の復讐がはじまる。
第二部は、いわばハードボイルド小説の展開になる。
結末は誠に破天荒なもので、第一部の堅さとは好対照である。一冊のなかに硬軟両方の要素を備えていて飽きることがない。エンターテイメントとしても十分な内容を備えている。





2012.3.26

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