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【著者】 有川 浩 【装丁】 文春文庫 443頁
【価格】 695円+税 【発行】 2012年3月
60歳といえば、若い人から見ればおじいさんだが、本人たちにその自覚はない。
還暦ぐらいでジジイの箱に入れられてたまるか。かつての悪ガキどもが自警団を結成してご町内の悪を切る、アラ還活劇小説である。
題名通り、主人公が三人いる。
一匹目は定年退職後に近所のゲームセンターへ再就職した剣道の達人、清田清一、通称キヨ。二匹目は柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」を息子に譲って半隠居の立花重雄、通称シゲ。そして三匹目は、機械をいじらせたら類ない頭脳派、工場経営者の有村則夫、通称ノリ。
この三匹に加わるのが、キヨの孫の祐希とノリの愛娘、早苗ちゃんの高校1年生コンビだ。
作者のすごいところは、こうした世代間の話が見事に描かれていることだろう。高校生の台詞は現代調で、今の若者たちの間でどんな会話が交わされているのか生き生きと伝わってくる。
六話がそれぞれ独立したオムニバス形式で、それぞれ面白くまとまっている。たとえば第三話は、初恋詐欺の話である。シゲの奥さんに初恋の想いを抱いていたという男が登場する。奥さんは記憶にないのだが、それも自信がない。言われるままに騙されそうになる。高齢化社会に向けて詐欺も多彩である。
読書家としても一流だった、故・児玉清氏絶賛の一冊である。
2012.3.28
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