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ブルー・ハネムーン

【著者】 篠田 節子     【装丁】 光文社文庫 341頁
【価格】 552円+税    【発行】 1997年6月

美貌と抜群のプロポーションを武器にした結婚詐欺師の物語である。
主人公は姉小路久美子、29歳。スポーツ新聞の営業部に勤めていたが、女性差別に憤慨し退社する。そのとき思いついた事業が、長身でスタイルがよく野性的な美人という自分を遺憾なく利用した結婚詐欺だった。再会した元同僚で作家志望の葛西修をブレインにして、青年実業家からマンションの頭金をせしめ、大蔵省のキャリアに借りた300万円は返さず、成城のお坊ちゃまとはカルティエの時計やダイヤのブレスレットをプレゼントされたのちに別離と、順調に実績を重ねた。
今も、いかにも知的なキャリア・ウーマンといういでたちの女性弁護士・横山敬子として、大手証券会社に勤める大橋一郎と交際し、その一方で次のターゲットに接近するため、24歳のアルバイト嬢に変身してデータサービス会社に潜り込んでいる。大橋を狙った仕事もいよいよクライマックスを迎えた。保険金のトラブルを持ち出して400万円を手に入れた瞬間に、横山敬子弁護士はこの世から消えたのである。
久美子は新たな標的の職場へもぐりこみ、恋人となるべきSEの籠絡に集中するが、なかなか相手が乗ってこない。そこに新人として配属されたのが関畑だった。美男子の彼は、福井の市議会議員の息子で、資産も十分にあるらしい。これはいい相手と、急遽作戦を変更して関畑に接近する。
しかし、物事は単純にはいかない。騙したつもりが騙されて、気が付いたら相手の掌で踊っていた、というような反転劇が待っている。
ところで、結婚詐欺は犯罪だろうか?刑法には“結婚詐欺”という条項はない。結婚詐欺は、刑法上の詐欺罪の犯罪類型の一つである。相手に結婚できるものと誤信させ、金品等を詐取することで詐欺罪が成立する。お互いの認識の違いがあるので、なかなか犯罪までもっていくのは難しいかも知れない。
自らを省みて、不相応な美人が近づいてきたら十分注意した方がよい、という教訓である。




2012.6.9

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