このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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日本人とユダヤ人
【著者】 イザヤ・ベンダサン 【装丁】 角川文庫 264頁
【価格】 470円+税 【発行】 昭和46年9月
神戸市生まれのユダヤ人を自称するイザヤ・ベンダサンの著書で、70年代に300万冊の売り上げを記録したという大ベストセラーである。
その後、内容について、あまりにもユダヤ人の認識とかけ離れているとして、専門家から疑問の声があがった。今では実際の執筆は、出版元である山本書店の店主ではないか、と言われている。
当時の日本は、高度経済成長の只中にあり、ようやく庶民の目が国際社会に向けられ始めたころである。ベビーブーム世代の結婚ラッシュで、海外への新婚旅行が一般的になりつつあった。
こうしたなかにあって、著者は、日本人の常識がいかに世界では通用しないかということを説いている。著者に言わせると、日本人は極東という、世界の中心から見れば別荘のようなところに住んでいる呑気な青年だという。
日本人は、「安全と自由と水は無料」が当り前の、世界ではまったく通用しないなかで生活している。ヨーロッパの都市で下水道が発達しているのは、一概に文化度の高さのーを証明するものではない。ヨーロッパの都市国家がもっとも恐れていたのは、ペストやコレラといった伝染病であり、これを防ぐためにはべ水道の整備が不可欠だったという。必要に迫られての下水道整備である。日本は水に恵まれ、その必要がなかっただけのことだ。
なにごとにつけ、現象面を見ただけでは物事の本質を理解することはできない。
ユダヤ人から見れば、数時間で終わってしまった関ヶ原の合戦などは、戦争のうちにはいらない。戦争とは、下手をすれば100年続くものである。
また、人災であれ天才であれ、災害は2000年単位で対処するものだ。一方、日本人は、災害は一過性のものだと考える。国土を失った経験がない日本人は、復興へ手をつけるのも早い。
こういう日本人を、著者は日本人共通の思考、日本教の信者だという。
40年を経て、いまだ多くの人に読まれているのは、当時の日本人と現在の日本人が大きく変わっていないことの証かも知れない。
団塊世代の希望的観測である。
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